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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第2章 魔力は世界を変える

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【配信】ミカミカデビュー配信 Ⅱ




「――【雷撃弾】いく!」



 平仮名で言えば「へ」の字にも似た形をしている、片手持ちながらに少々大きめのサイズをした、フリントロックピストル型。

 魔法銃とでも呼ぶべきそれは、撃鉄の代わりに突起のついたレバーのようなものを押し込みながら美佳里が魔力を込めれば、銃身を中心とした黄色い円形の魔法陣が浮かび上がり、バヂリ、と耳障りな放電音が響いた。

 この工程によって、2発の魔法が魔法銃内に装填されるのだ。


 そして直後、美佳里がその魔法銃を向けて引き金を引くと、銃の先端に魔法陣が浮かび上がる。

 雷撃弾の名に相応しく銃口から一筋の雷撃が放たれ、レッサースライムに直撃し、さらにもう一匹へと美佳里が迷わず放った。



「次、【炎撃弾】!」



 再び美佳里が撃鉄代わりのレバーを押し込めば、今度は赤い円形の魔法陣が浮かび上がった。

 放たれた炎の弾丸は容易くレッサースライムを撃ち抜いて、ダンジョンの壁にぶつかって広がって消えていった。

 連続使用による反動なのか、魔法銃の内側に覗いている歯車の回転が速くなり、時間が経つにつれて速度を戻していく姿がちらりと見えていた。



『かっけえええw』

『その魔法銃ください!』

『いや、ちょっと待てって、複数属性使ってることにツッコミ入れようぜ????』

『威力は弱いけど、これは魔法銃のスペックのせい? それともレベルとか?』

『いや、そもそも魔法銃なんて初めて見たが!?』

『魔法銃はそもそも魔装なのか? 作ったとかも有り得るし、この前の天秤トラップ部屋の報酬の可能性もあるな』



 コメント欄は常識的な反応と、やたらとスペックを気にする者たちのコメントで溢れ返っている。

 やはり魔法銃という見たこともない代物であり、かつ銃という浪漫の詰まった代物は視聴者たちの心をがしっと掴んだようである。

 対して、そんなコメントの熱がよく分かっていない奏星は淡々と視聴者に告げる。



「ミカミカの因子は【魔弾の射手】っつって、魔力で弾丸を作って魔法銃でぶっ放せるって感じ。あの魔法銃は魔装(・・)だねー」


『魔弾!?』

『ガンアクション大好き勢わい、推します』

『魔法銃見せて……! アップにして!』

『ちょと待って、つまりあの魔装解析したら魔法銃作れるんじゃね?』

『物理的な弾丸装填がないのに作ってどうすんだ?? 弾は??』

『現実突きつけるのやめてね??』


 美佳里の魔法銃を魔装であると偽って、奏星は何喰わぬ顔をして盛り上がるコメントを一瞥する。


 ――ぶっちゃけあの黒石板のアーティファクト(・・・・・・・・)があって、しかも因子が【魔弾の射手】じゃないと魔法銃は手に入らないけどねー。


 そんな現実を思うと、コメント欄の盛り上がりはなんだか気の毒にも思えなくもない。

 ただ、これはこれで魔法銃好きな因子持ちなどが奮起し、開発が進むのであれば美佳里にとってもプラスになる。

 そんなことをひっそりと考え、敢えて黙っておくことにした奏星であった。


 今回美佳里が使った黒い石板こそが、あの〝天秤トラップ〟の踏破報酬として手に入れたアーティファクト、『創造の石板』。ちなみに命名は奏星と雅だ。

 奏星が『マジック3Dプリンター』と名付けようとしたため、それよりはと雅が名前を直してくれた。


 そんな『創造の石板』だが、これが実は美佳里だけではなく雪乃にとっても非常に有用性の高い代物であった。

 というのもこの『創造の石板』は、魔力を注ぎ込んだ者のダンジョン因子に反応し、ダンジョン因子に関係のあるものであり、かつその者が強く念じたものを具現化するという、凄まじい代物である。


 それだけ聞けば非常に便利なアイテムなのだが、しかし欠点もあった。


 まず、そもそもこの『創造の石板』で作れるものは制限時間があること。

 先程、わざわざ美佳里がこの場所で『創造の石板』を使って魔法銃を作ってみせたのは、この『創造の石板』から作り出されるものはせいぜい3時間程度で消失してしまうという点を考慮したためだ。


 さらに、流霞や奏星のように魔装として武器が存在している場合に、『創造の石板』を使って武器を出そうとすると失敗したりと、具現化できるものにも何かと制限がかかっているらしいことは分かっている。


 とは言え、そんな短時間限定のものであっても、美佳里であれば魔法銃作成のために利用できる。

 そして恩恵を受けるもう一人のメンバーである雪乃は、装備を制作する際のこまかな調整のためのトルソーや等身大模型、足形を作って利用しまくっている。


 しかし、さらにもう一つの制限があった。

 作成したものは常に作成者の魔力を使って存在を維持するようで、使用していようがいなかろうが、存在させているだけで魔力の消耗が激しいのだ。


 ただでさえそうした条件があり、さらに美佳里の場合、魔法銃に魔法を詰めるためにも魔力を消費する。

 結果、美佳里の燃費はお世辞にも良いとは言い難かった。



「はぁ……っ、たんま……! 魔力が……」



 魔力の枯渇障害は、強烈な目眩と眠気となって襲いかかる。

 たった4発の魔法銃の発射で、美佳里の魔力残量は一気に枯渇寸前まで追いやられてしまった。


 そんな美佳里を咄嗟に支えて、流霞がポケットから取り出した小さな小瓶を手渡した。



「はい、ミカミカ」


「さんきゅ、るか、ち……」


『は?』

『え、何それ?』

『見間違いじゃないかな……?』

『なんか魔法回復薬特有の淡い発光液体が見えた、ような』

『しかも何そのアンプル型……?』


「……ふぅ。あー、きくわー……」


「ふはっ、ちょ、ミカミカおっさんっぽいからやめてね、それ」


「ごめんて」


『え? え?』

『そーれ、もしかして魔法回復薬では……?』

『いや、魔法回復薬は同じ容器で出てくるだろ。あんなの見たことないぞ』

『だいたい250ミリリットルぐらいあるからな、あれ。飲むの結構キツいし』

『今の20ミリリットルぐらい?』

『新種?』

『またですかぁ!?』

『ちょっと女子ぃー、コメントくん泣いてんじゃーん』

『くっそww』



 コメントで騒がれる話題が、さらに増えてしまった。

 今日の魔法銃のお披露目と同時に予定していた、雅の因子である【魔法薬調合】によって生み出された魔法回復薬である。


 流霞が見つけた『魔力水の水差し』は、〝独自魔法〟以上に雅の持つ【魔法薬調合】に対して非常に有効だったのだ。


 これまで薬草と言われてきた、ダンジョン最上層で採れる草。

 これは一般的に『通常の薬と一緒に服用すると薬の効果が上昇する』というような効果は認められたものの、『磨り潰して傷口に塗っておくと傷の治りが早くなる、ような気がする』というような程度の効果しかなかった。


 当然、これらを水に浸けたりすることで、ダンジョンでドロップする魔法回復薬と同じようなものが作れないかと試行錯誤してきたが、その手の実験は尽く失敗に終わり、今でも魔法回復薬はダンジョンでドロップしなくては手に入らないのが通説である。


 そんな中、雅は『魔力水の水差し』を使って作った魔力水に浸けた状態、魔力水を90度ほどまで温めてお湯に浸けた状態、煮立たせた状態などでそれぞれに何か効果があるのかを、薬草と呼ばれる草とそれ以外、様々なもので試した。


 それは一見すれば手当たり次第の実験にも見えたが、そうではない。

 何故か雅は、自分の中の直感のようなものが働いていて、これらの実験が自分のこれからの足がかりになると感じていたのだと言う。


 そうして蓋を開けてみれば、その直感は正しかった。

 魔力水に薬草を浸けたものに雅が導かれるまま魔力を注いでみた瞬間、一瞬で魔法回復薬へと生まれ変わったのだ。


 そこからは実験の繰り返しだ。

 より効果が高くなる組み合わせはどれか、どれにどのような反応が見られるのかなどを実験しつつ、時折雅の直感が「これが正解だ」と囁くのを繰り返す。


 そうして出来上がったのが今の状況なのだが、傑が「お願いだから発表しないでね……?」と雅に懇願したようなので、一旦は公表を見送っている。


 その理由として、奏星が視聴者に納得させる理由を簡単に説明した。



「いやー、見ての通り燃費えぐいから。今日はクラン提供の魔法回復薬でどうにかすっけど、早々ダンジョンには連れて来れないんよね」


『あー』

『やっぱあれ魔法回復薬か……』

『さすがに燃費きっついよな』

『魔力回復の魔法回復薬って一本数万したよね?』

『割に合わないわ、それは』



 ――配信では、だけど。


 そんな心の声を、奏星は自分の中だけで付け加えていた、ちょうどその時。

 ぐらり、とダンジョンが揺れた。


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