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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第2章 魔力は世界を変える

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【配信】ミカミカデビュー配信 Ⅰ




 傑による記者会見の直後から、世界各地にいる高レベル探索者による〝独自魔法〟の成果が一斉に動画配信サイト上に出回った。


 その内の何人かはバリエーションも豊富で、どう見ても使い慣れているのが見て取れる。

 おそらく前から〝独自魔法〟を使っていたのだろうが、そこについては無駄に突っ込んで訊ねる者もそうはおらず、暗黙の了解とでも言うべきか、それとなく察せられる者は多かった。


 極論を言えば、魔力を動かすことさえでき、かつ魔力を操れるようにさえなれば、〝独自魔法〟には行き着くのだ。

 それがたとえ『魔力水の水差し』ではなくとも、似たように魔力に干渉して発動するようなアーティファクトならば、同様のことはできていたのだろう。 


 だから、雅にとって〝独自魔法〟というのは〝ダンジョン攻略の初歩の初歩、始まり〟であるようにすら思えていた。


 だが、そんなことを知らない者たちから見れば、これは革新的な情報だ。

 そんなものを秘匿するでもなく、堂々と世界に向けて発信してみせた『明鏡止水』の決断には、世界各地から称賛の声が上がっていた。


 アーティファクトは凄まじい金額で取引されるため、必然、そうしたところに投資できる者であるか、或いは自力で手に入れられなければ手に入らない。

 金がなければ売り払うだろうし、いちいち研究し、知識や技術を培う者もおらず、よしんばそれらが発見できたとしても発表する義務もないのだ。


 だというのに、惜しげもなく研究成果を発表してみせた傑は、貧困に喘ぐような地域でダンジョンに挑む者たちからも感謝されているのだとか。


 一方で苦い顔をしているのは、そうした知識や技術を使って稼ぎや力を独占していた者たちである。

 彼らにとってみれば、傑がやったことは無駄に自分たちの競争相手を増やすことと同義であり、自分たちの商売を潰されかねないのだ。


 しかし、相手は『明鏡止水』。

 日本有数の実力者クランは現役探索者は250名程と少なく聞こえるが、『明鏡止水』の看板を背負えるのは、厳しい審査に合格した者たちのみ。

 比較的緩いのが傘下のクランや、育成専門の下部組織であるが、それらを含めればかなりの人数に上る。

 商売を潰される可能性が出てきたからと言って、喧嘩を売ってどうこうできる相手ではないのだ。




 そんな大人たちのやり取りが水面下で蠢いているのだが、〝がちけん〟の面々にそんなことは関係がなかった。

 彼女たちは今日も今日とて、自分たちの進む道を邁進し続けようとしていた。



「ミカミカだいじょぶそ?」


「だ、だだ、だいじょぶ……」


「ダメそーじゃん」


『はじまた!』

『お、新メンバーきちゃ!』

『カナっちときひ子ちゃんのとこ、新人もギャルかw』

『ワンサイドアップ眼鏡ギャルいいね!』

『きひ子ちゃんだけ俺たちっぽいの草』

『まあきひ子ちゃんは見た目だけなら俺たちっぽさはないけどな』

『それはそうw』


「あ、配信始まった」


「っ!? ちょっ!?」


『草』

『裏方さんwwww』

『ギャルの涙目からしか得られない成分がry』

『かわいいw』


「やぽやぽー。今日はサムネと題名通り、今までは裏方だったメンバーがダンジョン探索デビューすっから、その付き添い配信ねー」



 困惑する美佳里を他所に、奏星が慣れた様子でドローンに挨拶をして、ドローンが顔の向きを変えれば流霞が「あ、ドモ……す」と小さな声で呟きながら会釈をして、コメント欄に草が生い茂る。

 相変わらず流霞は開幕からハイテンションだとか、そういった対応はできず、どうしてもコミュ障を拗らせたような対応であった。


 そんな相変わらずのやり取りではある。

 だが、こうして見てみると奏星はもちろん、流霞も大して緊張まではしていないことに、密かに美佳里は戦慄した。


 流霞ならば今でも緊張であわあわしてくれるかと思っていたのだ。

 そうして流霞が慌ててくれれば自分は落ち着くかも、とか思っていた数分前の自分はなんだったのか、と。


 しかし残念ながら、流霞というオタク少女は、魔物を狩ることに集中しているし、配信は自分とは関係のないものという謎の理論で割り切っているのである。

 人、それを現実逃避とも言う。


 ともあれ、そんな現実逃避によって放置された美佳里の感情を他所に、ドローンが無慈悲に美佳里に向けられた。



『おっ』

『この子もカナっちときひ子ちゃん仕様装備か?』

『軍服いいね!』

『衣装担当のセンス、嫌いじゃないよ!』

『あわよくばこの子にはキリッとしていてほしい』



 コメントが注目したのは、美佳里の見た目。

 元々美佳里は明るいミルクティーベージュカラーの髪を、頭の右側でワンサイドアップにして肩口に流していて、メイクもばっちりである。

 そんな彼女の見た目が整っていることに言及する視聴者もいるが、それ以上にその装備というか衣装というか、雪乃の趣味が全開で作られたであろう軍服に対するものが多かった。


 美佳里の装備は軍人少女をモチーフにしているらしく、膝まである黒いベルト型皮ブーツ――なお、靴はもともと足首から下の部分は市販のブーツを買っているのだが、今回は皮はカーイーター、つまりは蛇革で雪乃がどうしても作りたくなり、急遽作成した代物である。

 その下は黒いタイツを履いて、スカートは暗めのカーキカラーのプリーツスカート。

 上着はナポレオンジャケットタイプの黒いものであり、なかなかに様になっている。一流のコスプレイヤーとも言える。



「今回は初配信登場ってことで、あーしみたいにARレンズもつけてないからコメントは見れないからねー。で、この子はミカミカ。基本は裏方メンバーだけど、〝金銀花(カプリフォリオ)〟の準レギュラー的な感じでこれから組むときとかあるから」


「え、あ、ど、どもー……! ミカミカ、です……!」


『かわいい』

『っぱ軍服よ』

『恥じらうギャルからしか得られない成分ry』

『成分オタク引っ込んでもろてw』

『緊張してるのかw』

『まあ、ダンジョンで緊張プラス配信で同時視聴1300人は緊張するわなw』


「あー、やべー、緊張のせいか太ももの横んとこぞわぞわする……きもちわりー……」


「緊張し過ぎで草」


「草」


「るかちーまで草生やすなし!?」


『仲良さそうww』

『てぇてぇわw』

『これは仲良しw』

『っていうかミカミカちゃんの魔装は?』

『因子もやっぱカナっちとかきひ子ちゃんみたいに特殊なんかな?』



 さすがに流霞にまで草を生やされては緊張している場合じゃなくなったのか、美佳里がツッコミを入れるために声をあげる。

 そのおかげかかなり気持ちも解れてきたようで、深呼吸をして表情を切り替えた。



「今日はミカミカの初探検だから、最上層をぶらぶらして、時間あったら上層の予定なんよ」


『お、平和だ』

『金銀花の配信はなんか色々あるからな……』

『ちょっとほっこりとした気分で観れそうで安心』

『今日は平和な感じかぁ』

『ま、たまにはね』



 奏星からの説明が終わり、奏星が美佳里に向かって頷いてみせると、美佳里はこくりと頷くと、ポケットから四角く真っ黒な、掌サイズの石板のようなものを右手に取り出した。

 そうしてぐっと握り締めて、配信には載らないようにぽつりと呟いた。



「――『魔力物質化(マテリアライズ)』」



 右手を通して魔力を流し込んでいけば、美佳里の身体から魔力が抜け、空中にホログラムのようなものが浮かび上がる。

 その見た目は少々機械仕掛けなテイストの強い拳銃のような映像であり、それが徐々に光を放ちながら実体化していく。


 白基調に明るい茶色のパーツたち。

 片手持ちのフリントロックピストルを思わせるような見た目をした銃は、一部がスケルトンカバーで覆われているのだが、その内部で歯車がゆっくりと回り続けているようだ。

 いかにも現実に存在しているものとは全く異なっていた。


 そんな謎の銃が突如として浮かび上がり、それを美佳里が手に取った。



「準備おっけー」


「よーし、しゅっぱーつ」


「おー」


『ねえ待って、ねえ!』

『その男心擽るアイテム見せて!』

『なんなのそれ!?』

『銃!? めっちゃ見たい!』

『てかそれ魔装? なんか出現方法おかしかったよね!?』

『またこれだよ!』

『これだから金銀花の配信は……!』



 コメント欄の阿鼻叫喚な様相は、奏星だけにしか見えていない。

 ただ、その奏星が反応しない以上、そこには何もないのと同義であった。



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