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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第1章 〝金銀花〟結成!

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【配信】上層攻略中 Ⅱ




「――るかちー!」



 後方から聞こえてきた奏星の声に反応して、流霞が魔物の身体をロッドで殴りつけて押し返し、その場でべちゃりと崩れるように地面に倒れ込む。

 直後、ゴオッ、と音を立てながら奏星の細剣が炎を纏って横薙ぎ一閃、流霞が相手していたホブゴブリン(・・・・・・)の身体を斬り裂いた。



『連携うっまw』

『この二人、ホントお互いの動きを邪魔しないのが凄い』

『ホブゴブ相手にならんだろうとは思ってたけど、ここまでかよ』

『6階層もやっぱ相手になってないな』

『いや、まだ二人のレベル上がってないんでしょ? おかしくない?』

『普通、6階層に行く頃には上がるんだけどな』

『普通かどうかで言ったら探索者になって二ヶ月そこらで上層5階層は超えれないんだよww』

『それはそう』

『てかカナっちの魔装、強すぎなんじゃよ……』



 コメントが次々と打ち込まれ、流れていく。

 そこにあるのは素直な称賛よりも、どちらかと言えば困惑に近いものが多い。


 ダンジョン上層5階層を超えるというのは、レベル1――つまりは常人の身体能力ではかなり厳しいと言われている。

 というのも、先のコメントにもあった通り、相手が人に比べれば小さいものの、殺傷能力の高い武器を用いて襲ってくる武装ゴブリンであることや、中型犬と大型犬の中間ほどのサイズはあるレッドハウンドの戦闘能力が、常人では運良く一度は無傷で乗り越えられても、そういった相手との戦いを連続して行う形となるためだ。


 通常、そういった環境での戦いは精神的な疲労が凄まじく蓄積し、それによって強張った身体を動かすせいか、通常よりも無駄に力が入り、身体的な面でも疲労の度合いもまた異常に増えるからだ。

 そういう常識があるからこそ、レベル1だというのにあっさりと上層5階層を突破するという流霞と奏星の二人の存在は、その特異性が際立っていた。



「あーしの場合は、この魔装が育ってくれたおかげだよ。力とか速さじゃ勝てない相手だけど、攻撃力なら突破できっから」


『それなー』

『魔装が強化というか進化して姿を変えるってすごいよな』

『改めて調べたけれどやっぱないんだよな、そういう前例』

『ないね』

『もしどの魔装も強化段階によって見た目の派手さが増えていくとか、能力の幅が今のカナっちみたいに広がるんだとしたら……』

『あ、俺ちょっとダンジョン行かなきゃだったわ』

『俺も用事があるんだわ』

『本当に行くならゴチャゴチャ言わんでさっさと行け』

『草』


「コメントでコントせんでもろて。まあ、魔装にだいぶ助けられてるのは事実だね」



 ――でもま、あーしの炎は〝魔装が強化されたからできることじゃない〟けどさ。


 そんなことを思いつつ、胸の内で奏星は小さく舌を出した。


 何せこれは、厳密に言えば二つの新事実が関与した現象だ。


 まず一つは、〝魔力を操作し、放出することで使用者の因子特性が働く〟ということ。

 それに加えて、〝魔装は所有者の力の発現を強化し、所有者の因子に適した力の方向へ魔力を進化させる〟ということだ。


 まだ誰も知らない、世界で公になっていない真実。

 しかしこれらは、〝がちけん〟の雅や美佳里、雪乃、そして雅の家族たちとの協力によって、アーティファクトを利用した魔力研究によって発見され、検証されて発覚した内の一つだ。


 これらが公にされれば、それだけで探索者業界は、世界は、新たな一歩を踏み出すことになるだろう。


 けれど、まだそれを発表するのは時期尚早というものだ。


 発表していく事実を含め、どこからどこまでを基礎として公表するのかは、雅や美佳里、雪乃といった、いわゆる不明因子持ちの成果を待ち、かつ、『明鏡止水』のクラン入りを願った不明因子持ちが力を発現できるかを確認し、仮説を実証してからの話にするつもりである。


 そういった背景もあって、今はこの力が魔装の強化によるものだと誤認しておいてもらった方が、色々と都合がいいのは事実である。


 故に、奏星はコメントを否定もせずに肯定もしようとはしなかった。



『そういえば、きひ子ちゃんもカナっちみたいなの手に入ったの?』



 ふとそんなコメントが奏星の視界に入り、そういえば、と奏星は改めて流霞のロッドを見やる。

 流霞のロッドは奏星の細剣のような大々的な変化には至っておらず、せいぜいが蔦の模様が少々大きくなった程度だ。


 そこで奏星は、一つの妙案を思いついた。


 もしもここで敢えて流霞の魔装に触れることになれば、万が一魔装を強化できた人間が出たとしても、奏星の炎などのように分かりやすい強化だけではないと言えるかもしれない。

 要するに、奏星の魔装は特殊なものでもあるという言い訳の材料になるのではないだろうか、と。


 だから、奏星はそのコメントに触れることにした。



「あー、るかちー。コメであったんだけどー、るかちーの魔装の方ってあーしみたいに強くなってないよね? その蔦の模様が伸びただけっしょ?」


「うん。ちょっと重さが増したぐらいだよ?」


「えっ?」


『え?』

『待って?』

『なんかそれ元々バカ重い鈍器疑惑あったよね?』

『それがさらにどーん、ってこと?』


「なんかね、殴り飛ばすの簡単になったよ」


「あーしそれ、にこやかに言うことじゃないと思うんだけど?」


「あっ、持ってみる?」


「潰れそうだからやめとく」


「なんで!?」


『めっちゃ笑顔なの草』

『カナっちのツッコミが冴え渡るw』

『割と本気できひ子ちゃん怖いのよ、たまにw』

『でも地味ではある』

『カナっちみたいにめっちゃ強くなるのは特殊なパターンなのかなぁ』

『もっと魔装強化した人とか出てくれないかな……』

『前に自分にとっては重くないって言ってたけど、きひ子ちゃんゴリマッチョ説濃厚?』



 思っていた回答とは違うものが来たな、と思いつつも、けれどそういう小さな変化も有り得るのだと思ってもらえるのであれば、それはそれで都合も良いかと奏星は意識を切り替えた。


 上層6層の魔物は、最上層を突破するためのボスであったホブゴブリンと武装ゴブリンの団体が多い。

 ホブゴブリンの武器が棍棒であるのは、まだダンジョン側が手心を加えてくれていると言うべきか、それとも刃物よりも厄介だと受け取るべきかは怪しいところではある。


 とは言え、奏星と流霞の二人にとってはそこまで苦戦するような環境ではなかった。

 そもそも奏星の炎は斬った魔物を焼いてくれる。

 浅い入りであっても、炎がそこから燃え広がってくれるのだから、攻撃力という意味では流霞とほぼ同等か、あるいはそれを上回っているとも言えるだろう。


 故に余裕はあるのだ。




 ――――しかしダンジョンは、悪意を凝縮させたような牙を剥く時がある。





「――あれ……?」



 不意に、ダンジョン内を進む流霞の足が止まり、きょろきょろと周囲を見回した。

 そんな行動に出た流霞に気が付き、奏星も足を止めて周囲を気にしてみるものの、しかし魔物が襲ってくるような気配も何もなく、首を傾げる。



「るかちー、何かあった?」


「ん……、気のせい、かな……? でも今さっき、誰かが助けてって叫んでる声が聞こえたような……」


「んん? ガチ? あーしなんも聞こえんかったけど」


『何も聞こえなかったぞ?』

『幻聴?』

『なんだ?』

『気のせいじゃね?』

『あー、これ見つけたら救援入んなきゃか?』

『数秒前の場所の音を拡大して調べた。何か声が入ってるのは確か』

『救援は余裕があればでいい。シビアだけど、だからこそ撮影とか配信が推奨されてる』

『天才おった』

『マ?』



 コメント欄も俄に盛り上がり始めた、そんな中。

 再び流霞が何かの声を聞いたかのように再びはっと目を見開き、ぐるりと声の方向へと顔を向けた。



「るかちー?」


「カナっち、やっぱ呼んでる。いこ」


「……おけ。でも、無理だったら逃げるよ。それだけは約束して」


「うん、分かってる」



 二人はそのまま、声の聞こえる方へと駆け出した。

 ドローンも奏星を追いかけるように飛んで行っており、その場には静寂だけが残される。


 そこに数拍遅れてカツカツと踵を踏み鳴らすような音が近づいてきた。

 黒いドレスを身に纏った長い黒髪の少女がゆらりと姿を現して、歌うように口を開いた。



「――ふふ、素敵ね。さすがは月と太陽を冠する二人。相性はバッチリだわ。さあ、もっと魅せてちょうだい。私と同じ、『運命に導かれし者(アルカナホルダー)』の実力を」


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