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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第1章 〝金銀花〟結成!

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【プラベ配信】上層探索 Ⅱ




 ダンジョン因子を受け、使えるようになるスキル。

 このスキルは因子によって大きく異なるが、使用の度に蓄積していく疲労感が存在しているというのは事実だ。

 ただし、同じ因子持ちであっても3回使えばその日はもう一日使えないという人もいれば、逆に10回使ってもまだまだ元気というようなケースもある。


 これは便宜上魔力と呼ばれた謎の力の総量などが、人によって異なる可能性が高いと言われているものの、未だに真偽は不明なままである。


 そもそも魔力というものに関してはまだまだ未知な部分が多い。

 ただ、因子の中に魔法という単語があるため、それを使う力は魔力だろう、として定められているという状況だ。

 今はどこの企業も魔力を可視化、あるいは量の定義を決めて数値化することを目標としているが、なかなか上手くはいっていない。


 それにしても、である。



「――【朧帳】……」



 すぅっと気配が薄くなったように見える流霞――の残像が動きを止め、その間に流霞自身は駆け出していて、武装ゴブリンの背後を取り、「きひっ」と笑いながら殴打した。



「――【灼火斬】!」



 振り下ろされた細剣が炎を纏い、地面に炎を叩きつける。

 どぱん、と音を立てて周囲を巻き込むようにくるくると周りながら炎が空中で小さくなり、消えた先では、レッドハウンド3匹が焼け焦げて横たわっていた。



「きひっ! まだまだいるぅっ!」


「ルカ! もいっちょスキルいくよ!」


「はーい!」



 奏星の【灼火斬】と流霞の【朧帳】。

 正面から突っ込んでくる流霞が突然動きを止めたように見える【朧帳】は、発動した瞬間の流霞の体勢をそのまま維持する。

 そのため、流霞は発動の瞬間に身構えるように動きを止め、緩急をつけるようにその場を飛び出している。


 そのせいで、魔物たちも身構え、足が止まる。

 それが狙いだと気付かずに。


 奏星の【灼火斬】は巨大な炎の剣となって振るわれ、魔物たちを一網打尽に焼き払う。

 弓持ちが後方から反撃に動こうにも、その時にはすでに流霞がロッドを振り被っているというのだから、まさしくホラーな様相を呈している。


 場所が悪かったのか、続いた複数のグループとの戦闘。

 それらが終わり、ようやく一段落ついたところで、奏星が己の手を見つめて開いては閉じてと繰り返し、ぽつりと呟いた。



「……なんか、疲れなくね?」


「うん。どれだけ使っても、減らない……ううん、ちょっと違うような……」


「違う?」


「うん。減った感じはあるんだけど、元に戻るのが早い、ような」


「あーね。それ、ある。すぐ戻る感じっしょ?」


「そう、それ!」



 流霞と奏星の感覚は、どちらも「多少は減った感じはある、が、すぐに回復している」というものに落ち着いているようであった。

 そんな二人のやり取りをプラベ配信越しに聞いていた雅がチャットを書き込んだ。



《スキルによる魔力現象って、その規模と威力が大きい程、比例するように消費量が膨れ上がるんよね。奏星とるかちーのスキルは第1スキルとしては規格外クラスに強力だし、連発できなくても不思議じゃないんよ。なのにそんな風になるってことは、回復量が尋常じゃないのかも》


「ルカー、ウチら普通じゃねーって言われてるわ」


「えっ!?」


《その略し方悪意ない????》



 そこだけを切り取って伝えたら語弊が生まれるであろうポイントを、わざわざ的確に切り抜いて伝える奏星に、これがネット社会の悪意か、と密かに戦慄しつつツッコミを入れれば、奏星がからからと笑った。



「ウソウソ、冗談じゃん。でもさ、なんでだろ?」


「うーん。魔力数値とか、見れたらいいのに」


「それなー。っと、回収回収っと。あの辺の水っぽいのも回収すんでしょ?」


《そそ、手間かけてホントごめんね。でも、気になることがあってさー》


「雅が気になるなら調べよーよ。ウチらもどうせ今日はただのスキルお試しみたいなとこあるし、早めに戻るのも全然アリだし。ただ、これだとあんま持ち帰れなくね? だいじょぶ?」


《うん! それぞれ少量ずつでおけ!》


「りょー」



 奏星が雅とやり取りしているのを耳にしながら、流霞は思う。


 上層4階層は、すでに自分たちにとっては大した脅威ではない。

 この調子ならもっと先まで進んだってどうにかなるだろう、とも。


 けれど、防具もないままこの先を進んで、結果として後悔するぐらいならば、準備は万全にしてから挑みたいところではある。

 しかし、高い。

 何しろ防具を買い揃えようと思うと、お金がかかるのだ。


 ――あぁーー、なーんかもう、お金降ってきたりしないかなぁ……。

 そんな有り得もしない妄想を脳内で浮かべつつ、天を仰ぐように流霞は天井へと目を向けて、そして、固まった。



「か、かな、カナ、ち……?」


「んー? ちょいまちー。おけ、こっち採取終わりー。どしたん、ルカ?」


「あ、ああ、あれ! あれ見て、あれ!」


「あれ……?」



 言われるがままに奏星が流霞の視線を追いかけて天井を見上げ、そして思わず目を見開いた。


 上層の石造りの遺跡を思わせるダンジョン上層の天井は、高さにして5メートル程度と、実に縦に長い地形をしている。さらにその通路は光が僅かにしか届いておらず薄暗い。

 それこそ、普通に歩いているだけでは天井を見上げるようなこともないだろうし、たまたま天井を見たからと言って、何かを発見する可能性というのは、限りなく低いに違いない。


 さらに言えば、この場所は武装ゴブリンとレッドハウンドが行き交う場所だ。

 のんびりと天井を見上げ、ちょっと間の抜けたことを考えていられるような神経の図太さを持つ者もそうそういない。


 だからこそ、だろう。


 流霞に言われるがままに天井を見た奏星は。

 そして、ドローンを遠隔操作させた雅が、美佳里が、雪乃が、同時に叫んだ。



「――宝箱ぉぉぉぉっ!?」



 一斉に、ダンジョン内で、部室で響いた叫び声。

 そんな彼女たちの視線の先には、天井の一部が窪み、その隙間に蜘蛛の巣のような半透明な何かで無理やり天井に貼り付けたような宝箱が倒れて、こちらを見下ろすような形で確かに存在していたのである。



「ちょっ、マジで!? ルカすげー! 上層で宝箱とか、絶対見つかんないかと思ってた!」


《マジるかちヤバ! すご! 中層ならともかく、上層で宝箱なんてもうずっと見つかってねーし! え、ヤバ! チョーお手柄過ぎて鳥肌!》


「え、あ、ど、ども……――」



 悲しいオタクでしかない流霞は周りから持ち上げられ慣れていなかった。

 すん、とした感じで苦笑しつつ意味の分からない冷静さを見せつけ、しかし次の瞬間、はっと我に返った。



「――じゃなくて、どどど、どうしよう、カナっち! 届かないよ!?」


「いや、届くとか届かないとかじゃなくて、落とせば良くね? あーしの炎でさ」


「あっ、そっか! でも宝箱燃えない!? だいじょぶ!?」


《ダンジョンの宝箱は壊れない! 中身を出したら消えるけど、そうしない限りは無事!》


「っし! だいじょぶ、ルカ! 壊れないって!」


「おぉ……!」


「――【灼火斬】!」



 魔装の細剣を抜き取り、奏星が天井に向けて【灼火斬】を発動。

 みるみる炎の剣身が伸びていき、やがて宝箱を天井に貼り付けている半透明の何かに届き、ジリジリと焼け焦がすような音が聞こえてきた。


 そうして数秒、ついに一部が切れたことによって宝箱の自重を支えきれなくなったのか、ブチブチと音を立てながら宝箱が落下し、慌てて流霞が横に避けた。

 危うくオタク少女のひき肉が出来上がるところだった、などと思っているあたり、このオタク、地味に冷静である。


 ズン、と音を立てて落ちた宝箱を見て、奏星がスキルを解く。

 流霞と奏星の目が合った。



「ルカ、発見者なんだから開けて」


「え゛っ、むむむ、無理無理無理ぃぃ! こ、こんなクソ雑魚ナメクジオタク陰キャな私が開けたら、せっかくの宝箱が台無しになるぅぅ!」


「ならんから。ほら、早く」



 急かされるものの、ぶるぶると顔を横に振っている流霞。

 そんな流霞の姿に苦笑を浮かべて、奏星がつかつかと流霞のところへ歩み寄り、流霞の手を握った。



「しゃーないなー。んじゃ、発見者のルカと宝箱を落としたあーしの共同作業、ね」


「ひぅっ!? え、ぁ、はぃ……」


《るかちウケる》


「それな。んじゃ、いくよー」


「はい!」



 奏星に引っ張られるようにして、流霞もまた宝箱の蓋に手をかけた。

 そうして二人で押し上げるように宝箱を開けると、そこには――――。



《――二人とも、マジで急いで帰ってきて! それ! 絶対誰にも見せないで!?》



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