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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第1章 〝金銀花〟結成!

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〝始動〟




《やっぽー、一週間ぶりー》


『始まった!』

『カナっちだいじょぶ!?』

『元気そうで良かった』

『でもちょっと頬まだ少し青っぽい?』

『痛そう』

『無理しない方がいいんじゃ』


《あー、ね。さすがに完璧に痕が消えるにはもうちょいかかるっぽい。けど、もう痛くないしだいじょぶだって。あはは、心配ありがと。ま、だいじょぶって言ってんのにまだごちゃごちゃ言われたらウザってなるけどね。無理とかしてねーし》


『草』

『辛辣ぅw』

『くどいのはさすがになw』

『なんかご機嫌?』

『いいことあった?』

『いつもより口数多いし、嬉しそうっていうか楽しそう』


《おー、分かる? うん、ちょっと嬉しいお知らせがあるんよね。ほいほい、こっちこっち。あ、こら、隠れんなし。ちょっ、え、力つよ!?》


《ああああぁぁぁああのあのあの、ちょ、ちょっとその強引なのは困るっていうかその、心の準備的なアレがつい口から飛び出してきちゃって大惨事っていうかその》


《さすがに飛び出すはおもろいわ。じゃなくて、ほら、こっち》


《ひぃ》


『え?』

『え』

『ちょ』

『きひ子ちゃん!?!?!?』

『はああああ!?』

『えっ、マジ!?』

『だれ?』

『きひ子ちゃん知らんのかw』



 ドローンカメラの前に引きずり出されるようにして姿を現した少女、流霞の登場に、凄まじい勢いでコメントが流れていく。


 その様子をARレンズで確認しているのは、映像越しにその場に立っている奏星と、そして今、部室内の映写機越しにその配信映像を観ている雅、それにARレンズをつけてモデレーター――いわゆるコメント管理の対応をしている美佳里と、同じく広報担当をしている雪乃の二人であった。



「あはは、るかちの登場はやっぱ盛り上がるー」


「そりゃそうっしょ。あん時、〝ECHO(エコー)〟でもトレンド入りしてたしさ」


「お、トレンド急上昇してきた。いやぁー、やっぱみんな探してたっぽいねー」



 雅、美佳里、雪乃が順々にそんなことを会話しながら配信を見つめているのは、今日が奏星の復帰となる配信であり、しかも今日までずっと流霞の存在を隠し続け、お披露目を兼ねた配信という、ちょっとしたサプライズ演出であることも関係していた。



「ゆっきー、どんな感じ?」


「ん、この前のイレギュラー騒動でチャンネル登録者数はもうすぐ1万人超えるかもってとこで停滞中。今回も視聴者数は最初は89人でストップしてたけど、今は170超え。るかちインパクト様々っしょ」


「まだそんなもん? 少なくね?」


「んー、しょうがなくね? この前まで登録者数1000人届かないぐらいで5パーセント以上もライブ視聴者がいたけど、今回のチャンネル登録者急増って、嫌な言い方するけどやっぱあのアクシデントのおかげだしさ。そういうので増えた登録者数ってアテにならんとこあるんよね」



 雪乃の答えはもっともだ。

 実際のところ、ライブ配信の同時視聴者数というものは、登録者数が増えてもなかなか増えにくい。それこそ、だいたい登録者数の1%も同時視聴者がいれば上々といったところに落ち着く。

 それ以上の視聴者がつくというのは、それだけ話題になり得る何かが起こって注目度が高まっているなどでもない限りは難しい。



「あ、もう230人いった。やっぱきひ子ちゃんのネームバリューヤベーわ」


「それなー」



 今回これだけの視聴者が集まっているのは、きひ子ちゃんこと流霞が配信に登場し、〝ECHO〟というSNSで一気に拡散されたおかげだ。


 この一週間近く、SNSでは流霞のことがたまに話題になっていた。

 某掲示板サイトでも少しずつライブ配信のアーカイブと流霞の話が出ていたり、実は密かに某大手探索者クランが探しているというような、嘘か本当かも分からない噂まで出回った。


 それも偏に、流霞のあの「きひっ」という異常な笑い方と、イレギュラーであり、強化個体となっていたグレーホブゴブリンと打ち合い、勝利したという劇的な映像。

 それだけの力を持つのであれば、レアな因子持ちであると推測されたことなどが大きいだろう。


 まだまだ世間の一部、それも狭い範囲に知れ渡っただけに過ぎない。

 決して大人気になったとも、世界中に名が知られるということもない。


 だが、それでもきひ子ちゃんと呼ばれた少女の再登場、それもイレギュラーに遭遇し、助けられた奏星と共に配信するとなると注目度が高まるのも自然の流れとも言えた。



「ふんふん。ここまではウチらの読み通り(・・・・)ってこったね」


「それな。お、250! 収益化申請ライン超えた!」


「おっけ、すぐこっちでやる」



 得意げな雅を他所に雪乃が声をあげれば、美佳里がすぐに手続き画面の操作を始める。


 ダンジョン探索者アカウントによる配信者の収益化申請は、チャンネル登録者が5000人以上、一ヶ月あたりの投稿動画及びアーカイブの総再生時間が300時間以上、そしてライブ配信の同時視聴者数が250人以上を記録するという、この3つをクリアすることで、初めて可能になるのだ。


 本来ならば夏までに、というところを目処に目標を立てていたのだが、このタイミングでそれをクリアできたというのは雅たちにとってもかなり大きい。



「言い方アレだけど、るかち入ってくれたのはやっぱデカいわ」


「それな。ホント、協力してくれてマジ感謝しかない」



 あの日、奏星が助けられた翌日、流霞はこの『ガチ攻略女子のダンジョン研究部』、略して〝がちけん〟に誘われ、加入することを決定した。

 その後、早速とばかりに美佳里が奏星の動画を編集して切り抜き動画を複数アップし、ショート動画も含めて『本人の許可を得て作成しています』というテロップ付きで公開し、総再生時間を一気に稼いだ。


 ちなみに、このショート動画は全て流霞のものという訳ではなく、奏星が覚悟を決めて立ち向かうシーンなどもあり、そちらも人気となっていた。

 レベル1で、しかも不幸な事故のせいでイレギュラーと戦うことになり、しかも最後には声をあげた探索者を責めないという声明文もつけてのものであったのだが、もともと奏星は()える人材であることもあって、こちらもかなりの人気を博している。


 ともあれ、ネット上では流霞本人の許可を得て作成したという切り抜き動画のことや、そもそも奏星と知り合いだったと言われていたこともあり、一緒に組むことになるのではとも囁かれており、満を持して本日の配信を迎えた、という状況であった。



「あっ、ミカミカ! 収益化申請と同時に、チャンネル登録名変更申請もよろ!」


「忘れてないっつーの。探索者アカウントは個人名かパーティ名、所属してるクラン名じゃなきゃダメだかんね。〝がちけん〟の名前が出ないのは残念だけど」


「ま、それはしゃーなしじゃね。ウチらは裏方だし。んで、雅。そっちなんかやるって言ってたけど、それはどうなん?」


「そろそろなんだけどー……お? ヤバ、連絡きてたの今気付いたし」



 雪乃に話を振られて雅が自分のスマホを操作する。

 ほぼそれと同時に、配信画面の方でも、ついに奏星が宣言した。



《――っつーことで、きひ子ちゃんことルカとあーしで、〝金銀花(カプリフォリオ)〟ってパーティで活動しまー! いえーい!》


《い、いえーい……》


『パーティ結成おめでとー!』

『ってことはきひ子ちゃんが今後も定期的に見れる!?』

『カナっちおめでとー! きひ子ちゃん程々にー!』

『なんかオシャレな名前でいいね!』

『スイカズラか』

『きひ子ちゃんww ギャルのノリについていくの無理そうww』

『マジかー!』

『どっかの有名クランに入ったりするんかな?』



 盛り上がる映像とコメントを見つめながら、雅がスマホをいじり、奏星の宣言と同時に二人のARグラスにとある画像を表示させた。

 そこに映し出されたのは、まさに本日発行されたらしい、まさかの探索者事務所――つまりはクランの登記簿謄本である。



「え……?」


「……っ、はぁ!?」


「へっへっへー、収益化申請したこのタイミングで登記完了までいくとは思わんかったけど、やっぱ探索者事務所は登録早いってホントっぽいね。しかもお父さんが頑張ってくれたおかげで間に合ったわー。収入管理とかもしてくれるし、マジ助かるわー」


「え、ちょ、雅、待った待った」


「……雅の名前あるし。え、マジ?」


「あ、代表は一応ウチの姉貴だけど、あーしが卒業したらあーしがやるから! んで、二人はウチのサポーター、まあスポットアルバイトっつー形ね」


「は?」


「え、ちょ、まって? 探索者事務所を設立したって、こと?」


「そだよ。ほら、これからあの二人の収穫とか広告費とかの収益を、ウチらの研究兼試作用に魔物素材の購入って形で処理しながらお金結構動かすじゃん? でも、個人でそんなんすると贈与税だかなんか漁夫の利かますよく分かんねー税金とかかかっちゃったりするらしいし、そうなると色々面倒だしっつーわけで! 『ガチ攻略女子のダンジョン研究部』改め、新米探索者事務所『ガチ攻略女子のダンジョン研究所』〝がちけん〟としてクランになりまーす! ガンガン探索者業界に殴り込みいくぜぃ!」


「……マ?」


「え、ガチ?」


「ガチだよ! お金はしっかり使って回していくからね! 目指せ、JK中に一流探索者事務所! あっ、収益で学生の間はバイト代出せそうだったら出すかんね。あと、高校卒業したら取締役になってもらうから、そこんとこよろしくー」


「……いや、まあ嬉しいけど……つか雅の行動力ヤバすぎない?」


「ほんとそれな」



 配信を追っている者たちがそれに気がつくのは、もっと後のことになるだろう。


 流霞と奏星が探索者パーティ〝金銀花(カプリフォリオ)〟の結成を発表したこの日、その舞台裏でひっそりと。

 後に探索者業界を揺るがす若き女性たちによって構成された、一つの探索者事務所が、正式に産声をあげたのであった。


お読みくださりありがとうございます。

本日はここまでになります。


カクヨムにて先行投稿している作品になりますが、こちらにも投稿は続けていく予定ですので、気に入っていただけましたらお気に入り登録や評価など、よろしくお願いいたします!


なお、明日からは13時から投稿開始、1時間に1話ずつ投稿いたしますー(๑•̀ㅂ•́)و✧

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