第23話(累計 第96話) 孤独を断つ刃
「二人とも、危ない事に巻き込んで、ごめんなさい!」
「此方も一緒に謝るのじゃ。今回は、お姉さま方を危険に晒してしもうたのじゃ!」
結衣の家で行われている、夏季休暇学習会。
<無銘>と敵鬼神との戦闘後。
初の学習会において、わたしとひなは最初に結衣と葵に謝罪をした。
「いえいえ。綾香さんやひなちゃんが、悪かったわけではありません。全ては裏で暗躍していた邪神の仕業。あの小林と言われる方も、薬物汚染から邪神に復讐心を強化されての事でしょうし」
「そーだって。あやっち、ひなっち。悪いのは、ぜーんぶ邪神。次に会った時に、倒しちゃえばいいだけだって」
だが、二人とも宿題から目を離さず、悪いのは邪神と言い放つ。
「でも、わたしがもっと上手く戦っていたら。誰も殺さずに事件を解決できていたら……。こんなことには……」
しかし、わたしは二人に対し謝罪する事しかできない。
小林には謝ったが、許されるとも思っていない。
友人を危険に晒したことも、簡単に許されるとは思えない。
「もう過去は変えられません。綾香さんが手を血で濡らしてしまったのも事実。ですが、綾香さんは前に進むことを選びました。ひなちゃんも一緒に進むのでしょ?」
「もういいって。これからでしょ、あやっち、ひなっち。アタシらも一緒にいるからね」
結衣も葵も、宿題から目を離し、わたしに笑いかけてくれる。
そして、厳しくも優しい言葉を返してくれた。
「綾香お姉さま。言った通りであったじゃろ? 結衣お姉さまも葵お姉さまも、綾香お姉さまが大事なのじゃから、嫌うことないのじゃ!」
何故か、ドヤ顔のひな。
わたしの友達のことを、自分も分かっているのだと言いたいのだろう。
「……ありがと、二人とも。わたし、これからも頑張って、皆を守るわ」
「泣いちゃダメなのじゃ、お姉さま。あれ、此方も……」
わたしは、嬉しくて笑い泣きしてしまうが、ひなも涙をこぼしていた。
「さあ、お二人とも涙を拭って、宿題の続きをしましょうか。もう少し頑張ってから、休憩にします。美味しいお菓子を準備していますので、ご期待を」
「アタシも期待していいかな、ゆいっち?」
「ふふふ」
「此方、頑張るのじゃ!」
わたしたち四人は、笑いながら宿題を片付けた。
◆ ◇ ◆ ◇
「此方、このアイスが大好きなのじゃ!」
「とっても上品だよね、ひな」
ラムレーズン入りのアイスクリームを食べながら、しばし休憩。
大人の味、上品な甘さがとても美味しい。
「で、あやっち。あのオジサン、助かったんだよね」
「うん、葵ちゃん。あの後、警視正経由で霊的治療にも詳しい病院に収容されたの。今は違法薬物を抜く治療中って聞いているわ」
葵に聞かれたので、わたしはこの場で小林の現状を説明する。
結衣らも事件の当事者だし、警視正からも話して構わないと言われている。
……警視正にも、結衣ちゃんたちには今後も全部話しても良いと許可は貰っているの。隠し事しなくても良いのは、気持ちも楽でいいわ。
「これでオジサンから、薬物の出どころとかが聞けたらいいよね。確か、和也お兄さんとか、学校の先輩くらいしか、あの薬を飲んで生きている人いないんだよね?」
……和也さん、時々ひなちゃんの護衛役で来るから、葵ちゃん達とも顔見知りなの。
「そうなのじゃ。お姉さまの先輩は、予備校経由で薬物を入手したそうじゃが、そこで繋がりが途切れてしもうたのじゃ。和也お兄さまは、ブラックバイトの延長線上だったから、繋がりはよう分からん。そういう意味では、生け捕ったお姉さまのお手柄なのじゃ」
「そうですわね、ひなちゃん。綾香さんが頑張って、泣きながらも命を救ったのが良かったですわ」
小林が生き残った事で、薬物の入手ルートがもう一個分かる可能性がある。
おそらく学生たちとは別のルート。
もしかすれば、魔神兵を作っていた際のルートに近づけるかもしれない。
「で、オジサンから証言は聞けそう、あやっち?」
「今度、警視正と一緒に小林さんには会いに行くつもりなの。その時に、直接聞くつもり」
「此方も同行するのじゃ!」
「無事、事件の筋書きが見えると良いですわね。わたくしの家でも、もう少し調べてみますわ」
この後も予定の休憩時間を過ぎて、わたしたちはこれまでの事や、これからの事を沢山話し合った。
それは、わたしにとっても、ひなにとっても良い時間であった。
「ありがと、みんな」
葵とひながオタク趣味の話をしだす中、わたしがぼそりと呟いた言葉。
「どういたしまして」
結衣が、そっとわたしに手を添え、受け入れてくれた。
「あー! そういえば、綾香お姉さまが最後に使った剣術技を聞いていなかったのじゃ! あれはもしや、薩摩は示現流の流れかや?」
突然、ひなの話題がこちらに向かう。
顔を乗り出して、目をキラキラさせながら聞いてくるので、びっくりした。
「え、えっとね。大体はその通りかな? お爺ちゃんに他の流派の技も沢山教えてもらっていたからね」
「やっぱりなのじゃ。あの技、ゲームで大剣使いな兄ちゃんのモノ。なるほど、此方もお姉様の剣術に合わせて、あのゲームの機体みたいに剣の形を変えてみるのじゃ!」
「ちょ、剣の形を急に変えるのは辞めてよ。間合いとか重心が変わると、慣れるのに困るから」
「あやっち、アタシはひなっちの意見に賛成! やっぱり、でっかい剣は見栄えが良いよ」
「葵さん。実戦とフィクションでは大きく違いうのですよ。はぁ、綾香さんも大変ですわね」
わたしは笑いながら、思う。
この平穏、日常をずっと守りたい。
その為なら何度でも、刀を振るう。
一人で全部背負うでなく、みんなと一緒に。
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