表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
比翼の乙女たち~見えぬ呪いを斬り裂き、因果を断つ女子高生異能剣士と祈りの幼女巫女の現代怪異譚~  作者: GOM


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/95

第8話(累計 第81話) 未完の刃にて、未来を切り拓く

「これ、何ぃ!?」


 陰陽道宗家、元当主にして現在でも最強格。

 ひなの曾祖母キヨとの、ひなと一緒のタッグ模擬決闘中。

 わたしの時間稼ぎによって、ひなの「策」がわたしの目の前に実体として現れた。


「ひなや、お前は何を……」

「ひな。アンタって子は……」

「ひなお嬢、カッコイイ!?」


 キヨと警視正は、あんぐりと驚きの表情。

 和也は、オモチャを見た時の少年。


「なんだ、あれは!?」

「バケモノか!?」

「人が乗る守護鬼神だと!?」


 観客の皆も驚きの声を上げ、誰も動かない。


「お姉さま。驚いている暇はないのじゃ。早く、これに乗るのじゃ。あ、此方をコクピットに持ち上げてくれると助かるのじゃ」

「う、うん。分かったわ」


 ひなに促されたわたし。

 一旦、木刀を地面に置き、ひなの両脇に手を通す。

 そして、目の前に出現した膝をついて鎮座している「巨人」の腹部へと持ち上げた。


「随分と、変なものを呼出したんだね、ひな」


「お姉さま、ひいお婆さまに勝つのには、普通ではダメなのじゃ。だから、色々考えた末の結果がコレなのじゃ!」


 どうやら、戦う準備が出来るまで待ってくれるらしいキヨ。

 ひなが呼び出した「巨人」を見上げながら、呆れている。


「お姉さまも、こっちにあがるのじゃ。まだ未完成の術じゃが、短時間なら戦えるのじゃ」


「わ、分かったわ。で、操縦系はどうするの? わたし、ロボの操縦方法なんて知らないよ」


 そう、わたしの目の前にあるのは、骨組みだけのロボ。

 ひなが地面に書いた術式と呪符の固まりから組みあがった巨人。


 沢山の呪符が巻き付いた骨格と、それを動かすだけの筋肉っぽい筒。

 胴体は空っぽで、二人前後に座れるコクピットらしきもの。

 手足バランスは、異形っぽく人間よりも長め。

 頭部には鬼の骸骨らしきものが座り、血の様に紅い目だけがランランと輝いていた。


「そこは大丈夫なのじゃ。基本は思考制御。レバーとかペダルは雰囲気なのじゃ」


「ふ、雰囲気??」


 むき出しのコクピットに座り、とりあえずレバーを握ってみる。

 雰囲気というので、右手を前に出す様にして思ってレバーを前に押すと、地面に降ろしていた機体の右腕が前に伸びた。


「で、でもいきなりの実戦は無茶じゃない?」


「じゃが、此方にはこれくらいしか……。これしか、ひいお婆さまに勝てる手が思いつかなかったのじゃ」


 テンパるわたしは無茶というが、ひなは泣きそうな声で、これしかないという。


 ……なら、しょうがないか。ひなちゃんを泣かせるわけにはいかないし。


「分かったわ。キヨさま、これを使って良いですよね。ひなが術で呼び出したモノですし?」


「ああ、いいさ。二人の力、アタシに見せてごらん!」


 一気に吹き上がるキヨの殺気。

 でも、ひなと一緒なら怖くない。

 わたしは、機体を立ち上がらせる。


「この子の名前は? それと武器は?」

「まだ装甲も無い試作段階の守護鬼神で名前は無い。というか、名前を付けるのを忘れておったのじゃ。武器は、腰に差した刀じゃ!」


 まだ名前の無い「鬼」。

 その腰から刀を抜き、構える。


 ……まるで『無銘』の刀みたい。思った通り動くわ。これなら!


「守護鬼神<無銘(ネームレス)>、参ります!」


 わたしは、ふと思いついた名前を叫ぶ。

 人なら十数歩もある間合いも、身長四メートルほどの巨人なら二歩程度。

 振り上げた刀、というか長めの鉈をキヨに振り下ろした。


「おぉ、怖いねぇぇ。なら、これでどうだい!?」


 地面に大きく穴を開ける斬撃を横ステップで軽く交わし、爆風に和服を揺らすキヨ。

 扇子を踊る様に大きく動かした。


「あれは、ひいお婆さまの守護鬼神を呼ぶ踊りなのじゃ!」

「分かったわ。呼ばせない!」


 キヨの踊りを邪魔するように鉈を振り回すが、どうしても動きがおおざっぱになり、技が荒い。


 ……間違ってキヨさまを潰しちゃったら不味いってのもあるのよねぇ。


「あらま。手加減してくれる余裕があるのかい? じゃあ、顕現せよ、我が守護鬼神<シュラ>!」


 わたしが攻めあぐねている間に、キヨの術が完成。

 キヨの前に三目八臂。

 顔が三つ、腕が八本で青い肌の巨人鬼が旋風と共に実体化した。


「うわぁ!」


 シュラと名付けられた鬼神が振り下ろす剣を、なんとか回避。

 バックダッシュで距離を取る。


「ふはは! アタシの守護鬼神を見て引かぬのは上等。そうさのぉ……。こやつを倒せたら、アタシの負けを認めてやるのじゃ。ひな、綾香。かかってこい!」


 キヨを直接殴らなくてもよくなったのは幸い。

 だが、目の前の巨人は楽に倒せる相手では決してない。


「お姉さま。アヤツは術で姿を成しただけ。此方の鬼神同様に生きておる者じゃ無いのじゃ。なれば、手加減は要らぬのじゃ」


「分かったわ、ひな。じゃあ、術の本体。コアを斬れば!?」


 ぶんぶんと八本の腕を振り回し、棍棒(メイス)や剣、手槍で攻撃を繰り出すシュラ。

 こちらは装甲を持たず、骨格だけの機体なので、攻撃を受けたら最後。

 鉈でまともに受け止めたら刀身が折られそうなので、峰部分で弾くのがやっと。


 ……で、でも、攻撃が見えてきたわ。腕が多すぎる。でも、そこに死角が生まれる!


 八本の腕で攻撃してくるとは言え、お互いの腕が干渉しないように左右交互に振るわれる。

 上下も同じく最上段の腕の次は一番下か、下から二番めの腕。

 意外と単調な攻めだ。


 ……ここで勝負!


 微妙な時間差で腕が迫るのを見、上段に構えた鉈をぶつけて攻撃軌道を逸らす。


「むぅぅ!! そう来たかい!?」


 キヨが驚きの声を上げる。

 右上と左下の手が持つ棍棒と剣がぶつかり、絡む瞬間。

 キヨの鬼神の動きが止まった。


「そこぉぉぉ!」


 もう一歩前。

 鉈の間合いから、拳の間合いまで踏み込む。

 振り下ろしていた鉈の刃を上に返す。


「とったぁぁ!」


 そして三つある真ん中の頭部目がけて、一気に振り上げた。


「キシャァァ!」


 顔を真っ二つに斬られ、残る二つの顔から奇声を上げる三面鬼神の胸。

 ペンダント状の宝珠めがけ、今度は抜き手にした左手を突き出す。


 ……あれが、術のコア!


 わたしの眼に見えた術式、魔力の絡み。

 それは宝珠に集まっていた。


「トドメぇぇぇ!」


 「切断」のスキルを乗せた抜き手は宝珠を砕き、そのまま胸を貫いた。


 一瞬の無音。

 それまで轟音が響いていた闘技場と化した屋敷庭。

 そこに静寂が訪れる。


「ふはははは! お見事。アタシの負けじゃ、ひな、綾香」


 静けさの中、キヨの宣言が大きく響く。

 そして周囲から、どよめきが響き渡った。


「はぁはぁはぁ」


 わたしは、止めていた呼吸を戻し、大きく息を切らす。

 ビクンと一瞬痙攣したキヨの守護鬼神。

 それは姿をあやふやにし、あっという間に砂となって崩れ去った。


「お、お姉さま! す、凄いのじゃ。ひいお婆さまの鬼神を倒したのじゃ!」


「あ、ありがと、ひな。多分、キヨさまが手加減してくれてたからだと思うんだけどね」


 なおも、周囲から驚きの声と賞賛の声が同じくらい響く。

 わたしは、額から流れる汗をスカートのポケットから出したハンカチで拭いながら、満足げな笑みを浮かべるキヨを見る。


 ……むき出しコクピットなんだから、術で攻撃して来たら良かったし、鬼神の攻撃もワンパターン。自分を攻撃できないからって、身代わりを差し出しなのね。


「キヨさま。では約束通り、好きにさせて頂きます。わたしの望みは……」


 わたしは、曾孫可愛さで案外と甘いキヨに希望を告げた。

お読み頂き、ありがとうございます。


面白い、続きが読みたいと思って頂けたなら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけたら、とっても嬉しいです^^


皆様の声援が、作品を書き続ける原動力となります。


なにとぞ、今後とも応援を宜しくお願い致します。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ