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比翼の乙女たち~見えぬ呪いを斬り裂き、因果を断つ女子高生異能剣士と祈りの幼女巫女の現代怪異譚~  作者: GOM


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第4話(累計 第77話) 拒む門を斬り開く

「この生意気娘! 後悔しろぉぉ!」


 神代院家の玄関口、招待されていたわたしと警視正に対し、横暴な態度の警備な男。

 彼、小林は言い返したわたしに、手を挙げた。


「綾香ちゃん、危ない!」

「……正当防衛! 公務執行妨害として、制圧します」


 悲鳴を上げる警視正。

 しかし、わたしは殴ってくる男の拳を睨みつける。


 ……ただのテレフォンパンチ、何も怖くないわ。


「はぁぁ!」


 一歩前に左足を踏み出す。

 迫る拳に対し、前に伸ばした左手の甲を当てて、後ろに流す。

 そして、もう一歩。

 右足を前に進めた。


「お?」


 一瞬、不思議そうな顔を見せる小林。

 その顎に対し、伸ばした右手の掌底をフック気味に叩き込んだ。


「……う!?」


 一瞬棒立ちになる巨漢、小林。

 わたしは、大きく後ろに飛び距離を置く。

 私の動きに一瞬遅れ、ひざ上丈の制服スカートが動くのを感じた。


「ふぅぅ」


 しばし残心の意味を兼ねて、小林の動きを観察しながら、止めていた呼吸を再開する。

 小林が殴り始めてから、今まで周囲は無音だった。


「……」


 虚ろな眼をしていた小林。

 どすんと舗装された地面に膝を付き、そのまま倒れ込んだ。


「あちゃー。綾香ちゃん、正当防衛とは言え、少しやり過ぎよ?」


「そうですか、警視正? 公務執行妨害と宣言しても殴ってきたバカに対しては優しい反応です。脳震盪だけで許してあげたんですもの」


 いくら身体を鍛えようとも、脳までは鍛えられない。

 脳を揺らす様な攻撃を、効果的なタイミングで行えば、大の大人でも倒せる。


「お、お前! 神代院家のモノに手出しして、許されるとでも思って居るのか!?」


 気絶状態の小林に歩み寄り介護している黒服。

 わたしに対し、文句を言ってくる。


「警官の業務を妨害。更には未成年の女の子に対し、大の大人が暴力を振るった時点で、許されるとでもお思いですか? ね、警視正」


「もう、綾香ちゃん。話を難しくさせないで。わたくしとひなの為に怒ってくれたのは理解しますが、やりすぎです」


 敵であろう黒服たちから眼を離さず、警視正に意見を聞く。

 しかし、苦笑気味だが、叱責してくれる警視正。

 彼女の立場からすれば、複雑な心境ではあろうが、わたしはこんな状況が許せない。


 古い家の「しきたり」に縛られ、親子の情愛を否定。

 子どもに対して暴力すら肯定する。

 そんな理不尽があって、たまるか!


「ふん。小娘風情が偉そうに。お前の存在くらい、親方さまの一言で消す事すら簡単……。ひぃぃ!」


「警視正。今、はっきりと殺人を宣言しましたよ。呪殺なら証拠が残らないと思って居るんでしょうが、逆に言えばわたしがスキルで返り討ちにしても、良いですよね?」


 なんと、わたしを殺すと宣言したので、殺気を返して言い返す。

 今までも、呪殺などを行ってきたのかもしれないが、逆に言えばここでわたしが全員を「能力(スキル)」で斬り殺しても、科学捜査では証拠は見つけられない。


「全員、斬殺死体になっていいのなら、掛かっておいで」


「嬢ちゃん、そんときは俺も加勢するぜ。流石に女の子に手出しするのは黙っていられねぇ」


 ようやく抜かした腰を戻した魔神の和也。

 わたしの横まで進んでくれ、いつでも変身できるように構えてくれた。


「綾香ちゃん、和也くん、やめなさい! 警備の人達も、手を引きなさい。さもないと、この子達が……」


 一触触発。

 黒服の男達は、懐に手を伸ばそうとする。

 この日本において、拳銃を所持とは恐れ入る。

 それも警官の前でとは、バカでしかない。


「警視正。銃刀法違反も追加ですね。全員、痛い目見てもらいましょうか」


 わたしが、懐から特殊警棒を引き抜こうとした瞬間。


「お前ら、止まれ! 暴れん坊どもが、庭先で何してるんだい!!」


 老婆の声が凛と響く。

 その声で、誰もが動きを止めた。


「まったく、男どもはいくつになってもガキだねぇ。女の子に煽られたくらいで、殴りかかるかい? お嬢ちゃんもケンカ早すぎ。アタシの曾孫と孫娘の事で怒ってくれたのは、嬉しかったけどね」


 大きな門がゆっくり開き、そこから小さな女性。

 白髪で小柄、しかし背筋がピンと伸びた和装の老婆が、ゆっくり歩いて出てきた。


「キヨお婆さま!」


 老婆を見て驚いた警視正の叫びより、彼女の正体が分かる。

 小さな身体から立ち上がる魔力は、わたしにもはっきり分かった。


「すいません、キヨさま。ご招待いただきましたのに、わたし暴れてしまいました」


 無言の圧力、しかしその包み込むような力に嫌な感じはしない。

 わたしに向かって小さく笑みを浮かべてくれた様子に、素直に謝罪した


「お嬢ちゃんは、可愛くて素直だねぇ。しかし、小林よ。女の子相手に殴ったのもダメだが、簡単にノックアウトされるのもダメだよ。相手の力量を見抜けないとはねぇ」


 頭を振りながら起きだしてきた大男、小林に対し厳しい意見を言う老婆。

 わたしに対する様子と全く逆なのは、身内に厳しいからというのもあるかもしれない。


「さて、客人は中においで。今後、アタシの客人を通さなかったら、許さないよ」


 後ろ手を組みながらニヤリと怖い笑みを浮かべる老婆。

 わたしは、この人を敵に回せないなと思った。

お読み頂き、ありがとうございます。


面白い、続きが読みたいと思って頂けたなら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけたら、とっても嬉しいです^^


皆様の声援が、作品を書き続ける原動力となります。


なにとぞ、今後とも応援を宜しくお願い致します。 

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