第55話 躊躇ごと斬り払って
十階までエレベータで上がったわたし達、制圧部隊。
そのまま最上階、二十階まで同じ作戦で順調に上へと進めるかと思っていたが、敵もまんざら馬鹿ではない。
自らエレベーターの電源を破壊。
上に昇るには、敵が待ち構える階段を使用するしかなくなった。
「ひ、2号ちゃん。わたしから離れないで!」
「はいなのじゃ!」
他の攻略チーム同様に各自別れて、わたし達のグループはフロアー内にある部屋の攻略中。
レーダーに反応無かった敵が突然現れて、銃撃戦になる。
「二人とも、遮蔽物に隠れて!」
「おらおら!」
敵の弾丸が、ひなと共に隠れる柱をいくつも穿つ。
警視正と道明も、別の柱の影から激しく応射。
無言で襲ってくる魔神化兵を撃ち倒していく。
幸い、敵装備が分かっているので、敵の防弾着の能力を上回る銃弾を使う。
更に倒れた敵に対し、動かなくなるまで銃弾を叩き込んで確実に無力化。
撃ち倒された敵は装備だけ残して、チリになった。
「<歓喜天・大鬼王極冷波>を喰らうのじゃ!」
ひなも、凍結呪術で支援。
青白い光弾を受け、凍り付いた兵士が消滅するのが、わたしの眼にも飛び込んだ。
全ての敵兵が倒れ、しばしの静寂が訪れる。
まだ硝煙の煙が消えず、沢山の埃が空間を舞う中。
ヘルメットの中にも、煙の匂いが入り込む。
「ふぅ。とりあえずは大丈夫かしら? 皆、怪我とかしていない?」
「俺は、問題無い。しいて言えば、銃弾の残りが気になるかな?」
「わたしも大丈夫です」
「此方、元気なのじゃ!」
皆、警視正の呼びかけに対し元気な声をあげるのだが、警視正や道明の銃口は酷く震えているし、ひなの息もかなり上がっている。
そしてわたしの刀の柄を握る手にも、妙に力が入ってしまう。
……みんな、無理しているなぁ。
「これは、まだ使えそうね。わたしも、ちょっと撃ちすぎたわ。一旦、中間指揮所に戻って補給を受けましょう」
警視正、倒した敵装備から拳銃と自動小銃の弾倉を回収。
拳銃を道明に渡しつつ、自分は手に持つ自動小銃から弾倉を抜き、残弾を確認している。
道明も、緊張気味に散弾銃を弄っている。
「なら、それまでは、わたしが頑張りますね。わたしには、弾切れは無いですから」
わたしは、自慢げに刀を見せつけるのだが、つい鞘を握る手に力がこもってしまう。
「お姉さま、頼りにしているのじゃ!」
「うん」
嬉し気に抱きつきに来るひな。
その暖かさを感じ、絶対に負けられないと思った。
「うふん、うふん」
これまで探索してきた廊下を戻る。
敵も殲滅済みなので、ひなは鼻歌を歌いながら、わたしと手を繋いで楽しそうに歩く。
緊張感が無いのだが、怖い銃撃戦の後だからか、警視正も苦笑するが何も言わない。
「ひなちゃん、楽しい?」
「お姉さまと一緒なら、何処でも楽しいのじゃ!」
わたしも荒んだ心が癒される気がして、ヘルメットの中で笑みを浮かべていた。
……え!?
しかし、戦場で平穏は続かない。
背中に凄まじい悪寒。
強い殺気を感じたわたし。
「……! ひなちゃん、避けて!」
「きゃ!」
勢いよく、ひなを突き飛ばした。
「……」
すると、吹き抜け天井から大型ナイフを握った敵兵が、無言のまま飛び降りてきた。
しかし、ひなを大きく突き飛ばした反動で、反対側に飛んだおかげで、わたしもひなも無事。
「え?」
「おい!?」
警視正、道明とも虚を突かれて、銃を敵に向けるのが遅れる。
そして突き飛ばしたひなが、尻もちをついている。
脳内が加速して、全部がゆっくりに見えた。
……わたしが斬る!
顔を黒い目だし帽で隠した敵兵。
金色で縦割れの瞳孔を輝かし、動けないひなへと向き変えて再び狙う。
「お、お姉さま!」
怯えるひなの声を聴きながら、刀を居合抜き。
敵の背後から延髄を狙って右上方向への斬撃。
硬直した兵の心臓目がけて、肋骨の隙間に背中側から渾身の平突き。
「……!」
敵に声を発せる合間も与えず防弾着ごと胸を貫き、表側まで刀が飛び出す。
ひなとわたし、双方に激しく鮮血が飛ぶ。
そして、痙攣をしばしした死体はチリと化し、衣装だけが抜け殻の様に残った。
「……ふぅ」
しばし残心をしてから、血払いをした刀を納める。
「う、うわぁぁぁ!」
すると、今までしるもち状態で動かなったひなが飛びあがる様に起きだし、わたしに泣きながら抱きつく。
二人、血濡れたまま、しばし抱き合った。
「油断していたわ。敵兵は、いつ襲ってくるか分からないのね」
「すまん。また、お前に人を切らせてしまった」
戦場には、まだ慣れぬ大人二人。
わたしに再び謝るが、今更。
泣き止んだひなの頭を撫で、そっと離れる。
そして、警視正にわたしは答える。
「ここは戦場ですから、しょうがないです」
戦う覚悟をしてきたのだから、当たり前。
これ以上、悲しむ人を増やさないよう。
敵首魁を撃ち倒すまで、わたしは止まれない。
「さあ、補給に帰りましょう。今度は警戒しながら」
返答を待たずに、二人に背を向けるわたし。
そのまま周囲を警戒しながら、パーティの先頭を前に進んだ。
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