第52話 縁切れぬ遠方からの救援者
「で、結界は、どうなさるんですか? 警視正」
突撃部隊が揃って、敵ビル前に集う。
警視正や道明も、防弾ヘルメットに大型ゴーグルを装備し、わたしとひなを挟むようにして待機中。
しかし、ビルの周囲には魔法結界が張られており、魔法が使えない人が突入する事は出来ない。
誰もが銃を構えて、結界を開くのを待ち構えている。
「また、私が切りましょうか?」
「いえ。今回は四国から助っ人が来ているの。あ、こっちです!」
まごまごしている間に敵が逃げたりするかと思い、わたしが結界破壊を提案すると、別の策が既に準備されていた様だ。
手を挙げた警視正の視線の先を見ると、三人ほどの若い男女が規制線を越えてやってきた。
「おまたせしましたぁ、倉橋さん。うちのマスターが、四国から出ると短時間しか戦えないって文句言うので遅くなっちゃいましたぁ」
ぱっちりとしたこげ茶い色の目が印象的な童顔で小柄の女性。
「そーなんよねぇ。ハジュンはん、ウチら美少女二人でようやく説得できたんやし」
そして、今度は長い茶色の髪をロングポニーテールにして長身でスリムボディ、やや釣り目気味の美少女。
「私にも色々と都合や準備というものがあるのですが……。まあ、今はそれどころではないですね。倉橋警視正どの」
「確かります、佐伯さん」
そして唯一の男性。
これもまた見たことがないくらいの美男子。
長身で細身、まるで絹のような黒い長髪を流す高級スーツを着こなす優男。
……一体、この美形三人組はどういう存在? 警視正とは、お知り合いみたいだけど? 妙にお気楽な感じだけど、本当に大丈夫?
正体不明の三人に、わたしが少し不信感を感じた時。
「では。時間も無いので、先に結界を壊します、倉橋さん。あと、ビルの前に隠れている魔神共は、私が片付けます。残念ですが、ビル内部の制圧は、警察の方でお願いしますね」
そう、警視正に話しかけたスーツ姿の美青年は、懐に手を差し入れる。
そして、絶対懐に入らない長さの金色な長剣を取り出した。
「え!?」
「弘法大師が守護鬼神、佐伯 波旬。参る!」
私が混乱している間に、名乗り上げた美丈夫が金色の剣を振り下ろす。
すると、ビルの周囲を覆っていた透明な壁が一瞬歪んで形を見せる。
が、パリンと割れる音を立てて、一気に崩れ落ちた。
「キシャー」
結界が崩壊すると同時に、ビル前の植樹の裏からいくつもの巨大な影が飛び出す。
「バフォメット。あ、グレーターも!? 早く助けに行かなきゃ」
わたしは、一人たたずむ美青年が魔神に襲われるのを見、援護に向かおうとするも、ひなに制止される。
「1号お姉さま、ハジュンお兄さまなら大丈夫なのじゃ。この世界では、誰も鬼神たるお兄さまに敵わないのじゃ。ほれ!」
「ほいほいっと。もっと強敵を出してもらえないと、時間がもったいないですよ」
金色の剣を軽々と振るう美丈夫、ハジュン。
……剣先の動きが見えない!
次の瞬間、ビルの入り口や植樹の影から飛び出してきた魔神の姿が消えていた。
「す、すごい……」
……わたしの能力とは全然違う。
「あれ、斬っているんじゃなくて、消滅させているの?」
「ねえ、すごいでしょ、1号さん。ウチのマスター。あれでも、平安の世からいらっしゃるの」
「え!? は、はいです」
ぼうっとして呟いてしまったわたしに、小柄な童顔女性が話しかけてくれる。
「千代お姉さま、柚葉お姉さま。お久しぶりなのじゃ!」
「ひさしぶり。顔を隠しているけど、マスコミ対策なんだよね、2号さん」
「ひーちゃんの可愛いお顔が見えんのは、勿体ないのー」
ひなが女性お二人に声をかけると、ひなの側に歩み寄り抱きついてくる。
「ひなちゃん、皆さんとお知り合いなの?」
イチャイチャしているひなに、ひそひそ小声で聞くと、
「この三人は、四国地区担当の特対室メンバーなのじゃ。『眼』の良い一号お姉さまなら、皆の真の姿が見えるのではないかや?」
「真の姿? ……あ!?」
千代と呼ばれた童顔の女性の頭には、丸い動物の耳、そしてスカートから伸びる髪の毛と同じこげ茶色の尻尾。
柚葉と名乗るスリム女性の頭部にも、金色にも見える茶色の長い耳。
千代と同じく、スリムジーンズのお尻から伸びる金色の長い尾がうっすらと見えた。
「もしかして、お二人はヒトではなく狸と狐の……」
「ご名答! この子がアヤはんか。後で、お顔を見せてぇなぁ」
「柚葉ちゃん。名前言っちゃだめだよ。まだ未成年の子がマスコミの餌食になるのは、わたしも嫌なんだから」
ニッコリ顔のタイプ違い美人二人。
ひなから離れて、今度はわたしに抱きつきに来た。
「1号巡査補。皆さんの正体は、内緒にしてあげてね。二人とも、今日はありがとう」
「いえいえ。倉橋さんには、わたし達の戸籍やら年金関係でお世話になってますから」
「そうや。アヤカシなウチらが、安心して人間界で暮らせるんは、倉橋さんらのおかげやからな」
わたし達がガールズトークをしている間に、戦闘が終わる。
金色の剣を懐にしまいながら、ハジュンがこちらに向かってきた。
「屋外の大物は全部片付けました。警視正、残念ですが、私の戦闘可能時間はこれにて終わりです。中には、まだ数体魔神が居ますので、お気をつけて」
気軽に片付けたというが、わたしが見ていただけでも十体以上の魔神を殲滅したハジュン。
少し物足りなそうな顔で、警視正に謝る。
「佐伯さまは、四国以外での力を振るうのを制限されていらっしゃるのに、本日はご無理を申してすいませんでした」
「いえいえ。これもお大師さまの御縁ですから。ああ、滞在時間切れですね。千代さん、柚葉さん。事後処理はお願いします。では、また」
「はい」「はいな!」
二人の娘にお願いをしたハジュンの姿がおぼろげになる。
そして、次の瞬間。
その場から忽然と消え失せた。
「え? ええ!?」
「1号お姉さま、今回は驚き役なのじゃな。特対室のメンバーには、色々とおるのじゃ。今から慣れておくのじゃぞ」
驚き続きのわたしの肩に、背伸びしてぽんぽんと手をのせるひな。
大人ぶるその手の暖かさを防具越しに感じ、わたしは気持ちを切り替える。
「う、うん。今から魔神らと戦うんだもの。驚いてばかりいられないわ」
ぱちんとヘルメット越しに頬を叩き、気合を入れた。
「各員、傾注! 驚いている暇はありませんです。さあ、今よりビル内部突入します。警官隊、自衛隊の皆さん! 準備を!」
わたし以上にファンタジー展開に混乱してた警官らに、作戦開始を命じる警視正。
彼女の声で、ようやく部隊が動き出した。
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