第44話 虚飾を斬る
三月初頭。
中央合同庁舎第二号館にある大会議室にて、初代帝都安全保障庁 長官。
鷹宮 恒二が自分の配下の前で演説する。
「さあ、今日は皆さまに我が部隊をご紹介します! 彼らが帝都安全保障庁の実働部隊です。本来であれば、我が母の所有するビルを改修した新たなる庁舎にてお披露目をしたかったのですが、何分話が急で間に合いませんでした」
帝都安全保障省の実働部隊のお披露目が、今日行われている。
多くのマスコミが集い、黒ずくめの部隊員をカメラに映していた。
黒い防護服に身を包み、顔を隠した部隊員たちは、一言も発することなく整列している。
その姿は兵士というより、どこか無機質な人形のようにも見える。
だが、顔を晒した坊主頭の隊長は渋い顔。
右目に機械的な器具をつけている軽薄そうな男も顔を晒し、下卑た笑みを浮かべていた。
「質問宜しいでしょうか? 長官。〇×テレビの青木です」
「はい、どうぞ」
晴れやかな表情で、自ら指揮する部隊の前でマスコミ対応をする若き大臣、恒二。
マスコミの質問にもイケメンの姿を崩さず、対応する。
「今回の新組織ですが、国会審議を待たず閣議。閣僚の了解のみで発足したのは、あまりに急ぎ足だったのではないでしょうか? 野党のみならず与党内部からも異論が出ています。警視庁があるのに、どうして同じ役目の組織を急ぎ設立したとの声を聴きます」
「なるほど。確かにそういうご意見が多く僕のところにも上がっています。しかし、昨年末の警視庁襲撃事件。あのような人外の存在から東京を。ひいては日本を守るのには既存の組織では動きが遅いと僕は思っています。コンパクト、かつ新たなる技術を用いて、いかなる存在からも都民を。いえ、国民を守りたい。ただそれだけです」
恒二の背後、会場の隅で黒衣の執事。
奈良原が静かに立っている。
彼は薄く笑みを浮かべながら、自ら仕える恒二の演説を聞いていた。
「とはいえ。国会無視は、国民無視にも繋がりかねません。更に都民に対する圧力も感じるという意見も多いです。街中で武装した兵士らが歩き回るのは治安維持のためとはいえ、怖がる人も多くいます」
「今回は急務ということで、国会審議の前に首相肝入りで発足したまで。次の通常国会にて我らの成果共々審議させていただけたらと思います」
なおも食いつくテレビ局に対し、ぺらぺらと笑顔のまま答える恒二。
弁舌に優れ、表向きは感情的にならず冷静で紳士的な印象を誰にも抱かせる。
既に省庁として誕生し、私兵もどきの部隊まで作り上げた彼は今、有頂天であった。
「まったー!」
しかしその時、恒二の発言を止める声が会場の後方から響く。
若い……いや、幼さすら感じる二人の少女の声。
記者たちとカメラが、声の方向に一斉に振り向いた。
「あら。マッチポンプの親玉が自慢げに部隊自慢ですか? 警視庁を襲った犯人が、よくもまあ都民の守護者みたいな顔をできますわね」
「そうなのじゃ……。いや、おほん。そうですわね。実に面の皮が厚いおじ様ですこと、おほほほ」
二人の少女は、恒二を嘲笑うように声を放つ。
「誰だ!?」
「ほう……。これは面白くなりましたね」
恒二の誰何する声と、奈良原の面白がる声が重なる。
「貴方がたに名乗る名前は、無いわ!」
「同じくですわ、おほほ」
カメラの前に、フード付きマントを被り、顔を隠した大小二人。
まだ幼げな肢体が衣服越しに分かる少女が居た。
「え? 今までいなかったのに?」
「誰が子どもを、ここに通した!?」
「一体、何を言ってる??」
ザワザワとマスコミが騒ぎ出し、多くのカメラが一斉に二人へとピントを合わせ出した。
◆ ◇ ◆ ◇
……うわー。一気にカメラがこっち向いたわ。緊張しそう。
会見場にて、「まったー!」を掛けたわたしとひな。
先程までは、ひなの秘匿呪術で存在を隠していたのだが、警視正からのOKが出たので、声を上げてみた。
……変声機を使っているから、少し変な感じ。といって顔隠してても声から身バレは嫌よ。ひなちゃんも、必死に口調を替えているわ。
「あ、貴女がたは何者ですか? 先程のお話は一体!?」
「わたくし達の正体はどうでもいいです。問題は、そちらの政治家。大臣さんが、警視庁を襲った魔神の親玉。数々の不正や犯罪を犯していることです!」
「そうなのじゃ! 都民の事どころか、自分の私欲を満たす事しか考えておらぬ、愚か者じゃ……。う、おっほん。愚か者ですわ、おほほほ!」
……ひなちゃん。お嬢さま言葉になっていないよぉぉ。
先程まで若き大臣に対し質問をしていたテレビ局の人。
今度は、カメラをわたし達に向けて質問を飛ばしてくる。
……うふふ。この人。結衣ちゃんや警視正による『仕込み』なのよ。同僚を魔神に殺された事で、犯人を酷く恨んでいるわ。
「何、アニメか漫画の話でも言っているんでしょうか。この小娘、う。おっほん、このお嬢さん方は。ここは学芸会の会場では無いです。さあ、警備の方は、お嬢さんたちを保護お願いします」
大臣は余裕ある表情で、わたし達が「お遊戯」をしている子どもと言い張る。
そして警備にわたし達を追い出させようとする。
……坊主頭の隊長。道明さんだよね。あの表情だと、わたし達の正体までバレバレか。でも、報告しないところを見ると、正気でこっちの味方のよう。
「まだ余裕があるようですわね、大臣さん。ですが、貴方は我慢できても、そちらの軽薄そうなお兄さんはどうでしょうか。ねぇ、警視庁で潰された右目、痛かったですか。脳までぐりぐりしてごめんなさい」
「電撃で脳を焼いてごめんなさいですわ、おほほほ!」
なので、わたし達は、今回の作戦のキーパーソン。
グレーターデーモンになり「下がった」愚か者を挑発した。
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