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比翼の乙女たち~見えぬ呪いを斬り裂き、因果を断つ女子高生異能剣士と祈りの幼女巫女の現代怪異譚~  作者: GOM


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第32話 立ちはだかる魔神、届かぬ刃

「はぁぁ!」


 グレーターデーモンが放つ魔法の凍気。

 それを「力」で切り裂き、なんとか耐える。

 しかし、いくらかは余波を喰らい、頭髪の一部は凍り付き、籠手越しの指は冷たさを越えて痛む。

 口から吐く吐息も、白くなる。

 握る刀にも霜が走った。


「魔法すらも切り裂くか、小娘。後ろのガキも生意気に防ぎきるとは、生意気。だが、大の大人どもは女子供に守られて何も出来ぬとは情けない。国の(いぬ)らしいのぉ」


「言わせておけば、狗、狗。どんだけ、イヌに恨みがあるのよ、アンタ。適材適所ってのが分からないの? さては、組織に居られなかった人かしら?」


 SATの人らをバカにする発言、流石にわたしも頭に来た。

 確かに今の魔法攻撃を連打されれば、耐え切れない。

 その上、バフォメットを越える巨体から繰り出される攻撃は、更に恐ろしい。

 幸い、道場は背に生えた羽が生かされる程の広い空間ではない。


 ……さっきの発言からして、組織に居られなかったプライド高い人。これで隙が生まれれば……。


「小娘が良く吠える。お前らは、まだ子どもよな。何故、国の狗になる?」


 長い尾をゆらゆらとさせ、いつでも襲い掛かる雰囲気を見せる魔神。

 縦割れの瞳孔を持つ目を細め、なおもわたし達を嘲笑する。


「そうね。アンタには分からないかもだけど、誰かの幸せを守りたいから刀を握ったのぉ!」


 ……く、隙が見えない。フェイントすら見抜かれる。


 先程から、飛び込む気配を幾度も放ってみるが、それに呼応するように手足や尾が動く。

 確実にわたし達を嬲り殺す。

 弄んで喰らうのが目的に思えてきた。


「自らの不幸を他人に擦り付ける愚か者に話す道理など無いわい! オマエも昨今の無差別刃物事件の犯人と同類かや」


「あんな出来損ない! レッサーの母体にすらなれなかった出来損ない共とグレーターデーモンとなった俺を一緒にするな!」


 しかし、ひなの発言で動揺を見せ、尾の動きが完全に止まった。


 ……今だ! 


 心臓の鼓動が耳にまで響くほどの緊張の中、わたしは一歩を踏み出す。

 登山靴ごしの一歩は、足元の畳を大きく歪ませた。


「ふ!」


 武術において、瞬動法とも縮地とも呼ばれる高速踏み込み。

 それを発動させる。


 ひなに視線を向けたままの魔神の死角。

 背中の羽に隠れる位置まで、一気に踏み込む。

 足跡の畳が抉れ、板間も割れ飛ぶ。


 そして、渾身の「力」を込めて刃を魔神の背。

 急所の腎臓がある部分に叩きつけた。

 完全に殺せる攻撃……のはずだった。


「何をしたか、小娘?」


「う、嘘」


 しかし、完全に奇襲攻撃だった一撃は、魔神の全身を覆う青黒い鱗に弾かれる。

 刀身は激しく軋み、手首にはまるで大地や巨木を殴った様な反動が帰ってきた。


「目障りだ、小娘」


 そして、空気を裂くような音を立て、視界いっぱいになる尾の一撃が迫ってきた。


「きゃぁぁ!」


 籠手の金属部分で攻撃を受け止めるも、体重が軽いわたしでは簡単に吹き飛ばされる。


「ぐはぅ」


 視界がぐるぐると回る勢いで飛ばされた後、道場の壁に叩きつけられる。

 なんとか頭部を庇えたが、強く背中を打ち付け、床に倒れ伏してしまった。


「お姉さまぁ! よくもぉ!」


「次はガキか。魔法の打ち合いでもするか。背後に隠れる大人を庇って、何処まで戦えるかな」


 身体中がきしんで痛い。

 ひなの悲鳴じみた叫びが耳に飛び込んでくるが、目まいも激しくて立ち上がれない。


「ぐはぁ」


 更に、血液交じりの胃液が喉からほとばしる。

 たった一撃。

 魔神が簡単に振った尾の一撃。

 それが、わたしから戦闘力を奪っていた。


「お、お前たち。子どもにだけ戦わせて良いのか! SATの名折れ、この一戦に命を賭けるぞ」


「了解!」


 魔神に恐怖し、これまで発言すら出来ていなかったSATが動き出す。

 ひなの背後から一気に散開。

 それぞれ短機関銃(MP5)で魔神を攻撃し始めた。


「そんな豆鉄砲、効かぬと何度言っても分からぬか。では、死ね!」


 魔神の動きが早くなる。

 SAT隊員らの前に飛び出し、巨大な鍵爪付きの腕を振るう。


「ぐぎゃぁ!」


「ほれ、腐敗毒だ。苦しんで死ねぇ」


 鮮血を噴き上げ、吹き飛ぶ隊員。


「も、もう辞めるのじゃ。此方が相手するのじゃ! <帝釈天・雷神撃>!」


 ひなは、泣きながらSAT隊員を庇いつつ、電撃らしき術を放つ。


「ふん! 俺の身体を覆う鱗は、刀剣や銃弾はおろか、魔法すら弾く。言っただろ、俺を殺すには戦車でも持って来いと! ワハハハ!」


 しかし、ひなの術を簡単に弾きながらSAT隊員らを一人一人と殺戮していく魔神。


「う、動け。今、動かなきゃ、ダメなのぉ!」


 血しぶきを上げ、倒れる隊員

 ひなを庇って魔法攻撃を喰らって氷像になる隊員。

 毒に苦しんで、嘔吐する隊員。


 目の前での悲劇を、もう黙っていられない。

 力が入らない身体に無理やり気合を込め、振るえる脚で立ち上がる。


「はぁはぁ」


 呼吸は大きく乱れ、身体中が痛い。

 口からは、なおも血交じりの胃液が流れ落ち、視界も大きくゆがむ。

 耳は心臓の鼓動だけが大きく響き、ひなの叫び声も半分くらいしか聞こえない。


「くぅ」


 なんとか脚を前に踏み出そうとしたとき。


「まだ死んでいなかったのか、小娘」


 魔神の視線と噛み合ってしまう。


「く!」


 今、攻撃されたら避けられない。

 死を意識した瞬間。


「お嬢ちゃん!」


 SAT隊長の背中が視界いっぱいになった。


「隊長さん……」

「ぐはぁぁぁ。さ、最後くらい、良い恰好させてくれや」


 わたしを庇うため、腹部を魔神の爪で貫かれ、大量の吐血を放つSAT隊長。

 濃い血臭をさせながらも、わたしに笑いかけてくれる。


「国の狗が、小娘を庇って死ぬか。どうせ全員俺に殺されるのに愚かよのぉ」


「ふふふ。それはどうかな。魔神、人の意地を見ろ!」


 魔神の嘲笑に、壮絶な笑みを返す隊長。

 短機関銃を手放した彼は、タクティカルベストの胸元装備していた「何か」の信管を抜く。


……あれは!?


 わたしの脳裏に、彼が自慢そうに装備の一つ。

 フラッシュバン(M84)を見せてくれたことが思い浮かんだ。


「ぐわぁぁ! め、目が、耳がぁぁ!」

「真面目に見やがったか、バカめ……。お嬢ちゃん、頼む……」


 閃光と爆音を予想し、目を閉じ、耳をふさいでいたわたしと違い、もろにフラッシュバンを喰らった魔神。

 苦痛から床に倒れ伏す。


 ……隊長さん、ありがとう!


 最大級の隙をつく。

 動かぬ身体に気力全てをつぎ込み、崩れ落ちる隊長の背中からわたしは飛び出した。


 ……鱗が全部攻撃を弾くなら、鱗が無い場所を。


 目や耳を抑え、暴れまわる魔神。

 頭部に回り込み、最大の急所。

 鱗が無い魔神の右眼球に向けて、体重を乗せた渾身の突きを叩き込んだ。


「刺されぇぇ!」

「ぎゃぁぁ!」


 わたしは、暴れる魔神の腕に弾き飛ばされる。


「きゃ!」


 魔神は一旦は立ち上がるが、目を潰されたためか、動きに精彩が無い。

 更に、日本刀はしっかりと、魔神の右眼に刺さったままだ。

 床に倒れたまま、わたしは叫ぶ。


「ひなちゃん! 日本刀めがけて雷撃を!」

「分かったのじゃ、<帝釈天・雷神撃>!」


「ぎぇぇぇ!」


 ひなの渾身の一撃。

 雷撃は、わたしの愛刀を通じて魔神の体内を焼いた。

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― 新着の感想 ―
特殊音響閃光弾スタングレネードなら、たしかに警察官が持っている装備ですね。 殺傷能力が低い武器しか無いのは警察の任務の関係だからしかたない。 AMP(サイレントメビウス)みたいに重武装できないところが…
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