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比翼の乙女たち~見えぬ呪いを斬り裂き、因果を断つ女子高生異能剣士と祈りの幼女巫女の現代怪異譚~  作者: GOM


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第20話 聖夜、切り裂かれる日常

お読み頂き、ありがとうございます。

面白い、続きが読みたいと思って頂けたなら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけたら、とっても嬉しいです^^


皆様の声援が、作品を書き続ける原動力となります。

なにとぞ、今後とも応援を宜しくお願い致します。 

「結衣ちゃん、本当にありがとう」


「いえいえ。命の恩人をお助けできるのですから、このくらいは当り前ですわ」


 結衣や葵のおかげで、わたしとひなはステキなクリスマスイヴを迎えることが出来た。

 二人の大事な親友に感謝である。


「このまま、降り続けたらホワイトクリスマスになるけど、交通は大変になっちゃうよね」


「そうですわね。もう少しすれば夕刻の帰宅時間。ラッシュになる前に帰りましょうか?」


 トイレに行った結衣と葵を待つ間、わたしはファーストフード店の大型ウインドウから、街を眺める。

 まだ日が陰るには早い時間であるが、吹き降りからしんしんと積もる降り方になった雪。

 各所で灯るロウソクを模したクリスマスツリーのLED照明が、人が多く往来する街並みを温かく照らしていた。


「じゃあ、ひなちゃん達が帰ってきたら、お店を出ようかな? 雪も降り方がおとなしくなったし」


 そう呟いた瞬間。

 ガラスがガチャンと割れる嫌な音。

 そして、これまでの幸せな店内の雰囲気を壊す悲鳴が、わたしの耳に飛び込んできた。


「きゃぁぁ」

「うるさい! このメスブタがぁぁ!」


 女性の絹を裂くような悲鳴が店内に響き渡り、それを制する様な男の声も聞こえる。


「え! なんてことをするの!?」


 音の方へ首を向けたわたし。

 その視線の先には、わたしよりも少し年上に見える若い女性店員を羽交い絞めにし、柳葉包丁らしき刃物を女性の首筋に突き付けている男がいた。


「……今、警察に通報しましたわ。通話は、繋げたままにしています」


 警察へと連絡済みと、結衣の小声が聞こえる。

 彼女の方へ視線を向けると、その手は小刻みに震えてはいるものの、無理にでも笑顔を作っているように見えた。


「ありがと」


 わたしは、勇気づける様に由衣の手をぎゅっと握り、視線を犯人へと向ける。


「お、俺は、なぁぁ! だ、誰よりも強い! 神の力を得たんだぞぉぉ」


「お、落ち着きましょう。ね、その子を解放しましょう」


「くそぉ。オマエも死にたいのかぁ!」


 意味不明のことを叫び、女性店員をきつく抑え込む男。

 店長らしき人が、落ち着かせようと声をかけるが聞く耳を持たない。

 男の虚ろな瞳は、店長どころか抱え込んだ女性すら見ていない。

 もちろん、店内の客たちすら、彼の眼に映っていない。


「オマエら、俺をバカにするのかぁ!」


 犯人の手に持つ包丁の刃先は彼が叫ぶたびに大きく揺れ、女性の首元から血のしずくが床へぽたりと垂れる。


「いやだぁぁぁ。誰か、助けてぇぇ!」


 店内では、更に多くの悲鳴が上がる。

 誰もが、頭を抱え込んで震えあがる。


「……ゆるせないわ」


 クリスマスイブの幸せな日を壊し、無辜(むこ)な女性を傷つける男。

 足の運びは大きく乱れ、視線すら定まっていない。

 包丁の握りも甘い。


 ……武術の心得は無いようね。だったら!


 怒りで頭がいっぱいになったわたしが飛び出そうとし、由衣の手を握っていた手を離したとき。


「綾香さん、慌てずタイミングを待ちましょう」


 由衣は、離そうとした手をぎゅっと握り返してくれた。


「でも、あのままじゃ……」


 恐怖と痛みで泣き苦しむ女性店員を前に、わたしは(いきどお)る。

 早く助けたい思いが胸の奥で暴れ、このまま見ている事は出来ない。


「あちらを見てくださいませ。ひなさんが、動き出してますわ」


 由衣の視線を追うと、トイレの出口で姿勢を低くし真剣な表情のひながいる。

 葵もひなの後ろで、心配そうな顔をしていた。


「……分かった。ふう。でも、結衣ちゃん。随分と落ち着いているのね」


 一旦、深呼吸をして心を落ち着かせる。

 祖父がいつも言っている教え。

 戦場において冷静さを失うことは、死への早道。

 それを、すっかり忘れているとは、我ながら情けない。


「わたくしも、とっても怖いですわ。でも、綾香さんもひなさんも、葵さんもいらっしゃいます。皆さん、犯罪を黙ってみてはいられないでしょう?」


 握り返してくれた手は、先程よりも大きく震えている。

 それでも、勇気を振り絞ってくれた結衣に感謝しかない。


「それじゃあ、ひなちゃんの行動に合わせていくわ」


 心がすっかり落ち着いたわたしは、ひなに視線を向ける。

 すると気が付いてくれたのか、わたしを一瞥してウインクしてくれた。


「くそぉぉ。俺は最強なんだぞぉ。なのに彼女も金もない! 何故、お前らは幸せそうに笑っているんだぁ!!」


 男は、逆恨みとしか聞こえない叫びを放つ。

 その言葉は大した意味を持たず、ただ音として吐き出されているだけ。

 男が叫ぶたびに握っている包丁の刃先が揺れ、捕まっている女性店員の悲鳴が上がった。


「大の男が、何情けない事を言っておるのじゃ!?」


 そんな中、ひなの可愛くもはっきりとした物言いの声が店内に響いた。


「だ、誰だぁ。何処にいるぅ。クソガキがぁぁ!」


 犯人は、虚ろな視線を周囲に振り回す。

 目の前にいるひながまるで見えないかの様に。


「まったく、目まで節穴とは残念すぎるのぉ!」


 ドヤ顔で小さな胸を張り、犯人を挑発するひな。

 そんな様子に周囲から悲鳴は消え、全ての視線は全てひなに向いた。


「そこにいたかぁ、メスガキがぁぁ。大人に何を言うかぁ!?」


 抱え込んだ人質の女性から、包丁の切っ先をひなに向ける犯人。

 その隙を見て、わたしも動き出した。


「結衣ちゃん、行ってくるね」

「ご武運を」


 姿勢を低くして客の隙間を縫い、わたしは脚を進めた。

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