第40話(累計 第113話) 星を守る剣
虹色の「闇」が覆う邪神が封じ込まれた閉鎖空間。
そんな空間内に浮かび、天叢雲剣の力をお借りした神剣を構え、斬り裂くべき「場所」を探して瞑想するわたし。
「ね、ねぇ、綾香どの。もう止めましょう。こんなことしたって、貴女には何の得も無いですよ。それどころか、マイナス。可愛いひなどのを一緒に巻き込んでまで行う事では無いんです」
しかし、そんなわたしの行動を辞めさせたい<這い寄る混沌>奈良原。
慌てながら屁理屈こねて、わたしの集中を乱そうとする。
だが本当に嫌なら、わたしを殺せば簡単に終わるのに、奥に控えし邪神たち共々こちらに手出しする気配は全くない。
「今、お姉さまは集中するのに忙しいのじゃから、邪魔するでないのじゃ! この雑魚神どもがぁ!?」
「くぅぅ。こちらから手出しできないと思えば、罵詈雑言! 貴女がたには、偉大なる神々を敬うという気持ちは無いのですかぁ?」
「人々に害悪しかもたらさぬ神など、怪獣も同然なのじゃ! 敬われたいのなら、少しは善行をするのじゃ!」
邪神に向かって、怪獣と変わらぬと言い張るひな。
それに対し、崇めろと尚も上から目線の奈良原。
わたしの予想通り、この空間内では何らかの理由でこちらに対し実力行使ができないらしい。
……うるさくて、瞑想の邪魔だなぁ。この閉鎖空間って、よくわからないところがあるわ。邪気がいっぱいで気配のサーチがやりにくいの。でも、この中では邪神は悪さできないみたい。お互いの共食いはやってても、わたしやひなちゃんには手出ししてこないの。
結界の破損個所、地球へと開いてしまった「扉」部分を探すわたし。
そこを斬り壊し、邪神どもを閉鎖空間内に閉じ込めるのだ。
「綾香どの! 貴女は、ひなどのと心中するつもりですか!? そんな不毛なことはやめて、我らと共に地球に行きましょう。そうしてくだされば、貴女と周囲の人々には決して手出ししません。そうですね、日本全部を保護地域にしてもいい!」
「奈良原や。余程、お姉さまのすることが都合悪いのじゃなぁ。先程までは上位種、神さまだと言い張り、人間を見下しておったが。今度は嘘までついて命乞いかや? 己らが現れた時点で、大半の人々は発狂してしまうのじゃぞ! まったく情けないのぉ。第一、此方。お姉さまと一緒なら、何も後悔しないのじゃ!」
最早なりふり構わず説得に掛かる奈良原。
しかし、ひなはわたしと一緒に閉じ込められても構わないと叫ぶ。
……ありがと、ひなちゃん。わたしも、ひなちゃんと一緒なら満足よ! あ、見つけた!
わたしは、ひな以外に何か暖かいものを感じ、その方向。
背中側に急ぎ振り返り、「扉」を見つけた。
そこには、丸い窓が開いており、まるでサファイアみたいに綺麗な青い惑星。
母なる地球が漆黒の宇宙の中に浮かんでいた。
「綺麗……」
……わたし、あの星に住んでいたのね。帰りたい……。でも、今は守らなきゃ!
「ひなちゃん、『扉を』見つけたわ! 奈良原。いえ、<這い寄る混沌>。そして外なる神々たちよ。貴方がたに、もう好き勝手な事はさせません! 神の牢獄の中で、ずっと反省しなさい!」
「そうなのじゃ。井戸の奥底で永遠にくすぶっておるが良いのじゃ!」
わたしは地球を見ながら眼を見開き、邪神たちに啖呵を切る。
ひなもわたしに抱きつき、同じく邪神たちにトドメの言葉を放った。
「いくよ、ひなちゃん。はぁぁぁぁ!」
わたしは両手でしっかりと握った両刃短刀。
神の依り代となっている神剣に己の力。
自分が選んだ存在や概念を切り裂く力を籠める。
「此方も力を貸すのじゃ! はぁぁぁ!」
そこに、ひなも力を貸してくれる。
……ひなちゃんの力、とっても暖かいわ。
「止めましょう。ねぇ、止めるのです。止めなさい。止めろと神が言っているのが聞こえないんですか? もう、戻れなくなるんですよ? 止めろ、止めろよぉぉ!」
奈良原が背中の方で叫んでいるが、もう関係ない。
今は、目の前に見える地球と繋がる「扉」を破壊するだけだ。
「これ……凄い!」
わたしの手の中で、神剣が徐々に姿を変えていく。
短刀サイズだったのが、金色の刀身も握る柄も伸びてゆく。
「これは、八岐大蛇の力かや。そういえば、天叢雲剣は大蛇の尾から出たのじゃった」
八十センチほどの長さ。
太刀くらいまで伸びた両刃刀身は波状に屈曲し、六本の枝刃が生える。
「そ、そんな! たかが、蛇風情の力が我ら外なる神々を上回るとでも!? 止めろぉぉ!」
……力がみなぎって来たわ。さあ、いこう!
「ひなちゃん。いくよ」
「あい、分かったのじゃ!」
ひなの答えを聞いて、わたしは育ち切った神剣を天高く振り上げる。
「止めてくれぇぇ。扉が閉じれば、我らは再び闇の中に封印されてしまうぅ。もう二度と閉じ込められるのは嫌だぁぁぁ!」
閉じ込められるのを嫌だと叫ぶ奈良原。
彼の背後に控えし邪神らも、震えあがる。
「貴方、今まで何回。命乞いをした相手を殺したの? 何人。いや何万人の人々を踏みにじり、不幸にしてきたの? もう、そんなことはお終いにしましょう。学ぶことができなかった可哀そうな神さま」
しかし、わたしは邪悪で傲慢な彼らが可哀そうとは思えない。
いや、どんなに長く生きていようとも、お互いにお思いあう事を学ぶことが出来ない事が可哀そうだと思った。
「さあ、いくよ!」
「此方、ずっとお姉さまと一緒じゃ!」
目の前には、青い地球。
わたしの大事な人たちが住む星が見える。
「やめろぉぉぉ!」
奈良原の叫び声を聞きながら、わたしは振り上げた刃を振り下ろした。
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