表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
比翼の乙女たち~見えぬ呪いを斬り裂き、因果を断つ女子高生異能剣士と祈りの幼女巫女の現代怪異譚~  作者: GOM


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/105

第27話(累計 第100話) 混沌を断つ刃

 深夜の都内郊外にある工場地帯。

 そこに、わたしや超常犯罪特別対策室の仲間たち、更には警官隊や自衛隊員らが集う。


「本当に、ここに奈良原が今夜、現れるんですね、警視正」


「ええ。これまでの潜入捜査やら盗聴の情報。更には小林の証言から、確実ですわ」


「母さま。潜入捜査は違法捜査では無いのかや? 邪神相手に適法だの違法だのは、今更関係ないのじゃが」


「ひなお嬢。知らないんですかい? マトリの行う麻薬捜査では、潜入やおとり捜査は認められているんですぜ。ドラマでも定番のネタですけど」


「そうよ、ひな。和也くんの言う通り。それに最近ではトクリュウ対策で『仮想身分捜査』も検討されているの。今回の被疑者はどっちにも該当するわ。さて、突入前の雑談はこのくらいにして、皆さん。今回は必ず、奈良原を捕縛。いえ、殲滅します!」


 目的の廃工場が見渡せる高台の公園。

 そこに設置された臨時前線指揮所(コマンド・ポスト)

 外部から察知されないよう、隠された軍幕テント内の赤暗い照明の中。

 わたしは警視正らと共に望遠赤外線映像が映し出されたモニターを眺めつつ、眠気防止にコーヒーやココアなど飲みながら雑談をする。


 ……全員、防弾防刃装備ね。わたしも、通信機能付きHUDヘルメットを準備しているの。ひなちゃんは、同じ機能のゴーグルね。


「警視正! 周辺の一般市民の避難、終了しました」

「妨害術式の展開、準備出来たと神代院家の方から連絡ありました」


 同じ軍幕テント内で各方面からの連絡を受ける女性職員らから、続々と報告が上がる。

 テントの内外を走り回る男性職員らの手には、銃火器や使い方が分からない道具がある。


「そろそろチェックメイトね。後は、奈良原が現れ次第、作戦開始よ」


 着々と奈良原包囲網の準備が出来てきている。


「で、本当に奈良原が出た場合は、逮捕では無く、こ、殺ろさなきゃダメなんですか、警視正?」


 わたしにも、人間を殺した経験はある。

 だが、それは全て襲われた際の正当防衛。

 確かに、魔神はいくらも倒しはした。

 しかし、いくら血濡れた手でも、自分から「人の形」をしたモノを殺す事にはまだ抵抗がある。


「悲しいけど、そうね。彼の殺害許可は、総理大臣からも内々で出ています。何より、彼の戸籍は全て偽造。どこの誰とも分からず百年以上、人間の間で暗躍する邪神。滅ぼすなり封印するのが最善というのが、上の意見。第一、彼をずっと捕らえて置ける留置場なんてないわ。綾香ちゃんに辛い事を押し付ける事は、わたくしも賛成できなかったんだけど」


「アヤツは、腐っても神さまじゃ。空間を操る所業は、既に幾度も見ておる。今回こそは、確実に倒せるチャンスなのじゃ。なので、キヨひいお婆さまが全面協力してくださった上に、尊い筋から『とある神器』や重火器の貸出使用許可も出たのじゃ。大丈夫、アレやコレを使うなら、お姉さまが斬り倒す必要もないのじゃ」


「なんなら、綾香お嬢の代わりに俺がアイツを倒すぜ。こんな身体にしてくれた借りは返したいしな」


 わたしの弱気な呟きに対し、皆が心配そうに声をかけてくれる。

 奈良原は、許せない存在であるし、倒さなければならない邪神。

 ここまでは頭の中で理解しているが、人の形をしたものを殺すというのは、中々に抵抗がある。


「お姉さまは、優しすぎるのじゃ。じゃが、相手はその優しさを利用する邪な神を名乗る愚か者。どうせ、中身はぐちょぐちょのぬちゃぬちゃな奴。斬り倒しても後悔も何もないのじゃ」


「そりゃ、わたしも勉強して、奈良原が名乗る邪神の事は勉強したの。物語や伝説そのままなら、わたしが倒せる相手か、不安になるくらいの強敵ね」


「そこは此方が保障するのじゃ! 綾香お姉さまなら、神さまだろうが絶対に負けぬのじゃ」


 ひなの軽口、わたしを心配してくれてのもの。

 わたしは、緊張していた心が少し楽になった。


「ありがと、ひなちゃん」

「また、ちゃん付けなのじゃぁぁ。此方、子どもでは無いのじゃぁぁ」


「二人とも、漫才はこのくらいにして。今、奈良原が来たわ。自分で自動車を運転してきたなんて意外だったわ」


「空間転移なぞすれば、流石に魔力痕跡が残るから、そこは気を使ったのじゃな」


「さあ、お嬢。今日で全部終わらせましょうぜ」


 どうやら、奈良原が現場入りした様だ。

 望遠映像からもライトをつけた自動車が工場入り。

 そこから降りる奈良原の姿がモニターに映った。


「道明さん。奈良原が工場に入り次第、包囲網を完成させて。他の皆さんも戦闘開始よ。狙撃も準備して」


 ……道明さんも別部隊を指揮して、工場を包囲してくれているわ。


 警視正から指示が飛ぶ。

 いよいよ、邪神「這いよる混沌」相手の大勝負。

 わたしはヘルメットのバイザーを降ろし、固唾を飲む。


「お姉さま、ずっと一緒じゃ。じゃから、安心して刀を振るうのじゃ」

「うん、ひな」


 一旦、防刃手袋を脱ぎ、笑顔で見上げてくれたひなの小さくも暖かい手をぎゅっと握った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 動きがある倉庫内に侵入したわたしとひな。

 別動隊により、工場内のネットワークは制圧済み。

 監視カメラなどは無効化されている。

 二階になる部分にそっと潜み、下を観察する。


 ……対電波、光学、赤外線のステルスマント(隠れ蓑)を被って、覗き見しているの。


「いっぱい、働いている人がいるけど……。全員、魔神兵と同じ。もう、人じゃない」


 聞かれないように、ヘルメットなどの集音マイクを利用して小声で会話。

 ヘルメット付属のカメラ越し映像にも、うつろな眼で働く若者たちが見え、彼らからは精気は感じられないが、逆に瘴気を感じる。


「彼らは、既に魂が死んでしもうた存在。悲しい事じゃが、倒すしかないのじゃ」


「うん、分かった。あ! 奈良原だ。白衣のオジサンと会話しているけど、あのオジサンが例の科学者?」


 奈良原に対し機嫌を取る様な会話をする白衣で眼鏡の壮年男性。

 集音マイク及びカメラ映像からのAI読唇術で、会話内容が分かる。


「あれはね、憎らしき。されど実に興味深い『技能(スキル)』を持つ小娘。橘 綾香に対し、心の傷を付けるための策なのです。もし彼を殺していたら、どんなに心を痛めたかと思うと、ワクワクしてしまいます。何せ、あの男。小林には綾香を恨む正当なる理由もありますし」


 奈良原のセリフ。

 そこには悪意しか感じられない。

 小林を利用して、わたしの心を痛めつけるつもりだったらしい。


「くぅぅ。許せない! こんな奴、殺すのを躊躇していたのが、バカらしくなるわ」

「お姉さま、まだ飛び出してはならぬのじゃ。しばし、辛抱なのじゃ」


 ヘルメット内のサブモニターには、他の仲間たちが倉庫や工場内を取り囲んでいく様子が映る。

 まだ、数か所において包囲網がなされていないので、今飛び出す訳にはいかない。


「小娘は、彼を殺すしか止めることが出来ない。そうなれば安全。死人に口なしです」


 ……ふふん、わたし小林さんを殺さずに止めて助けたよ。アンタの思い通りになんて、なってやらないわ。


 内心ほくそ笑むわたし。

 奈良原の予想通りにならなかった点で既に、わたしは勝利している。


「ふふふ。神の力は偉大です。人々の無意識に干渉するなど、容易い。私に出来ない事は何も無いのです。これで……。む!? すいません、松戸どの。周囲が何物かに囲まれています」


 しかし、奈良原も流石は神。

 誰かが失態したであろうことから包囲されているのに気が付いた。


「え!? 気が付かれた。ひなちゃん、動くよ」

「了解なのじゃ。じゃが、また子ども扱いなのは嫌なのじゃぁぁ!」


 わたしは、ひなに声をかけ、隠れていた場所からステルスマントを払いのけ、立ち上がる。


「奈良原! やっと追い詰めました!」

「もう、逃さないのじゃ!!」


 何故か、背後から突然スポットライトが照らされる。


「え?」


思わず振り返ったわたしは、想定外の状況に首をかしげてしまう。


「お姉さま、こういう時は派手にするのが、特撮でのお約束じゃ!」

お読み頂き、ありがとうございます。


面白い、続きが読みたいと思って頂けたなら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけたら、とっても嬉しいです^^


皆様の声援が、作品を書き続ける原動力となります。


なにとぞ、今後とも応援を宜しくお願い致します。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ヤット○タマンみたいな笛の音とかキカ○ダーみたいなギターの音とか(笑) 魔法少女ものなら、高い場所からの名乗りとか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ