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両一目惚れから始まる超楽勝ラブコメ  作者: 宵月しらせ


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8/28

第8話 写真同好会

 四月も後半に差し掛かってきた。

 もうすぐゴールデンウィークだが、その前にやらなければいけないことがある。

 部活決めだ。うちの高校の体験入部は四月の後半まで。


 ゴールデンウィーク前には、どの部にするか決めなければいけない。

 せっかくなので帰宅部ではなく、どこかに所属したい。しかし同時に、古谷さんと過ごす時間を減らししたくないという思いもある。


 なので運動部は選びたくない。

 そこそこ楽な文化部に、古谷さんと一緒に入るのがベストだ。


「古谷さんはどの部にするか決めた? 中学時代って何部だったの?」


「以前は美術部でした」


「じゃあ高校でも美術部?」


 一緒に活動できる文化部なので、希望通りと言えば希望通りだが……。

 絵はまったく得意ではない。古谷さんといたいからといって、まったく興味もない部に、三年間も在籍するのキツそうだ。


「それなんですが、ちょうど昨日、中学時代の美術部の先輩から誘われまして。その人もこの高校にいるのですが、新しい同好会を作ったから入ってくれないかと」


「同好会って何の?」


「写真同好会だそうです。去年美術部に入ったらしいのですが、最近写真のおもしろさに目覚めたらしく、退部して同好会を立ち上げたそうです。でも、まだ部員がいなくて、このままだと立ち上げ失敗で解散になるとか」


「で、数合わせに入ってくれないか、と」


「そうみたいですね。同好会は三人いれば成立するらしいので、私と小野寺さんが入ればなんとかなるみたいです。他に入りたい部がなければ、とりあえず先輩と話だけでもしてくれませんか?」


「うん、わかった。そうしよう」


 助かった。絵を描くのと違って、写真ならボタンを押すだけ。

 きっと楽だろう。


 いや、もしかして高いカメラが必要と言われるか?

 スマホのカメラでも十分キレイだから、それで大丈夫ってことにならないかな?


★★★


 同好会に部室はないらしく、その日の放課後、うちの教室でその先輩と合流することになった。

 やって来たのは、背の低い女子。ショートカットで、活発そうな顔立ちをしている。

 室内にこもって絵を描くよりは、外に出てシャッターチャンスを狙う方が似合っている気がする印象の人だ。


「あたしは高梨弓月(たかなしゆづき)だよ」


「小野寺冬馬です。初めまして、高梨先輩」


「うん、初めまして。まぁ校内で君たちはちょっとした有名人だし、古谷から話を聞いてたから、あたしは結構君のこと知ってるけどね」


 どんな話をしたのだろう? 悪いことは言われていないと思うけど。

 いや、「意気地なし」くらいは言われていても文句は言えないが……。


「さて、写真同好会に二人を誘うに当たって、まずは現状を説明しておこうかな」


「会員が集まらないと解散になるんですよね? その数合わせにほしい、と」


「半分はそう。君たちが入ってくれないと解散。でも、頭数としてほしいわけじゃない」


「戦力ってことですか? でも俺は写真は全然わからないし、本気で撮りたいとも思ってないんですが……」


 古谷さんとの思い出を残すために、少々のテクニックを学ぶくらいならいい。

 しかし、ガッツリと活動するほど写真に対して熱意はない。


「まぁ撮るのに興味を持ってもらえたらそれはそれでいいんだけど、実はお願いしたいのはモデルなんだ」


「モデル?」


 俺が?

 古谷さんならわかるが、俺が?


「カップルのモデルがほしいんだよね」


「ああ、そういうことですか……なんでカップルの?」


「その話をするために、去年のあたしの話をしよう。絵より写真に興味を持って、ネットにいろいろ投稿するようになったんだけど、全然バズらなかったんだよね。そこで、人気がありそうなテーマを設けてシリーズ物にしたらどうだろう、と考えた」


「なるほど。どんなシリーズを考えてるんですか?」


「恋愛成就のパワースポット巡り」


 たしかにそれなら注目されそうだ。


「でも、そういうところにソロで行っても面白くないじゃん? だからモデルがほしいわけさ」


「それはわかりましたけど、パワースポット巡りって交通費がかなりかかるんじゃないですか? 同好会ってそんなに予算が出るんですか?」


「ふふっ、実はほとんどお金はかからないんだよ。パワースポットは近くにもたくさんあるからね」


 高梨先輩は、スマホで地図を表示した。

 近隣の地図だが、あちこちに×印が付けられている。学校周辺の二、三キロだけで二十ヵ所。


 まさかこの×印がすべて恋愛関係のパワースポットってことか?

 きっとそうだ。学校の裏庭にも印がついている。ここは例のベンチがあるところだ。


「なんだってこんなにパワースポットだらけなんですか? 」


「知らない? 結構有名な話だと思うけど」


「最近こっちに越してきたばかりなので」


「そうか、じゃあ教えてあげよう。この辺は江戸の昔から自由恋愛が盛んでね。武家でも商家でも、子どもが結婚適齢期になると、同じくらいの身分の家の男女を集めて宴会をしたそうだ。そこで相性の良さそうな相手を見つけ、縁談を進めたらしい」


「合コンみたいなものですか?」


「そうそう、そんな感じ。だから当時としては、異様なほどに仲が良い夫婦が多いし、良縁を求めて神頼みをするための神社があちこちにできた。そういう歴史の土地だから、裏庭のベンチみたいな超ローカルパワースポットも案外簡単に生み出される」


「なるほど」


「地元民ならパワースポットの五ヵ所や十ヵ所は知ってるけど、全部網羅してる人なんてまずいない。私もがんばって調べてこの地図を作ったけど、それでも漏れがあるはず。もしそのすべてを訪れて写真に収めて紹介するアカウントがあったら、きっと市民の間でかなりバズる」


 市民の間というとたいしたことないように聞こえるが、ここは政令指定都市なので、それでもかなりの数になる。

 もしかしたら、市民の力だけで万バズも不可能ではないかもしれない。


「もしすごい人気者になったら、地元のテレビで紹介されたり、市長とか県知事から表彰されたり、地元の観光案内で私の写真が使われたりするかもしれない。そのままプロの写真家なんてこともあるかも――」


 高梨先輩は都合のいい未来を想像し、ニヤニヤと笑い出した。

 そんな簡単にいくとは思えないが、多少でもバズれば同好会は部に昇格できるかもしれない。

 それで内進点が良くなって進学の有利になる……くらいはありそうだ。


「写真をバズらせるためには美女は必須。その点、古谷なら完璧。贅沢を言えば、もっとイケメンが欲しかったけど、代理の彼氏役を用意したところで古谷は絶対断るから、まぁ君で妥協してあげるよ」


 そんなことまで丁寧に言わなくていいんだけど……変にウソを言われるよりはいいか。


「ってことで、協力してくれるかな? うまいことバズって収益化できたら利益は山分けするよ」

「私としては、弓月先輩の頼みだしできれば協力してあげたいんですけど、どうですけど?」


 学校の同好会を収益化していいのか疑問だけど、同好会の趣旨的に、活動中にイチャイチャしても許される……むしろ推奨されそうなところが気に入った。


「わかりました、協力します」


「よしっ、じゃあさっそく二人とも入会届に名前書いて…………これで同好会成立! さっそく職員室に提出してくる。そしたら、とりあえず近くのパワースポットに撮影行こう!」


 高梨先輩は、入会届を持って廊下を走って行った。

 すごい元気な人だ。おとなしめな古谷さんとは、良い意味で対照的……あれ、なんか古谷さんが頬を膨らませている。


「どうしたの? なんか気に障ることでもあった?」


「いえ、特に……………………ありました」


 あったのか。

 たぶん俺のせいだよな?


「ごめん、何が悪かったか教えてもらえる? もうしないようにするから」


「しないようにしてほしいわけではないです。ですが、改善はしていただけるとありがたいです」


「うん……?」


 どういうことだ? ちょっと複雑そうだな。


「小野寺さんが弓月先輩と話している時、わりとリラックスしているように見えましたので。私と話す時は、まだちょっと緊張しているっぽいのに」


「それは……」


 すごいなぁ、ズバリと当てられた。

 古谷さんと話している時に緊張しているのは事実だし、高梨先輩と話す時にはそういうのがないのも事実だ。


「それはその……なんと言うか……」


「なんですか?」


「古谷さんのことが好きすぎて、絶対に嫌われたくないので緊張すると言いますか……。一方で、高梨先輩には別にどう思われてもいいので、その分気楽と言いますか……」


「……気持ちはわからないでもありません。ですが、私はちょっとやそっとで小野寺さんのことを嫌いになったりしない自信があります。ですので安心して、もっとリラックスしてください」


「はい、がんばります!」


「まだ硬いですね……そうだ、良いことを思いつきました」


 その直後、高梨先輩が戻って来た。


「受理されたよ~……あれ、なんか変な雰囲気?」


「いえ、ちょうどいいところに戻って来てくれました。弓月先輩、近くに好きな人に素直になれるパワースポットってありませんか?」


「ずいぶんピンポイントな効能を求めてるね。まぁあるけど」


 あるのか。

 まぁこの近辺だけで二十ヵ所もあれば、そういうのもあるか。

 これだけ密集してたら、パワースポットも差別化しなきゃやっていけないだろうからな。


「よし、リクエストに応えて、写真同好会一発目のロケはここで決まりだ!」


 高梨先輩がスマホの地図を指差し、俺たちはそこに向かった。

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