エピローグ
今日の収録が終わったので解散となった。
高梨先輩は、
「夕日がキレイだから、ちょっと写真撮って行く」
と行って、別行動を始めたので、俺と古谷さんだけで電車に乗って帰った。
その途中、古谷さんはちょっと不機嫌そうだった。
俺と一緒にいる時は、だいたいいつも笑顔な印象なので、不機嫌なのはちょっと新鮮。
だが、それ以上に怖い。
「古谷さん……もしかして、俺がなにか気に障ることでもしたかな?」
「しました」
即答された。
これは本気で怒ってるのか?
「ネックレス作ってるのを邪魔したから?」
「あれは……まぁいいです。私ががんばりすぎていたのも悪かったですから。いえ、やっぱりそれも不満です。素敵なネックレスを作って、それでデートに行きたかったのに」
「ごめん」
「でも一番怒っているのは、それではありません。あんな不意打ちみたいなタイミングで私の名前を呼んだことです。もっとちゃんと言ってほしかった……」
ああ……そういうことか。
「あんな形で集中を切らすためだけに名前を呼ばれたんじゃ、その記憶とセットになってしまったんじゃ、このネックレスを家で完成させても、気分が乗らなくてデートに着けていけません。どうしてくれるんですか?」
「ごめん」
「謝ってほしいわけではありません」
古谷さんは、じとっとした目で俺を見る。
不満に満ちた目だが、さっき俺がしたことに対する不満とはなにか違いそうだ。
どちらかと言えば、期待していることを俺がしないことに対する不満…………なるほど。
「あの時だけじゃなく、これからは恋湖愛さんと呼ぶってことでどうかな?」
「はい、それなら許してあげますよ、冬馬くん」
そう言って古谷さん――恋湖愛さんは俺の手を握った。
彼女の手首には、前に俺がプレゼントした金属のブレスレットと、今日プレゼントしたビーズのブレスレットが二本着けられていた。




