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両一目惚れから始まる超楽勝ラブコメ  作者: 宵月しらせ


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第21話 コラボ

「お、落とし前って……」


 思わぬ強い言葉に、少し怯んでしまう。

 何を要求してくるつもりだ? 写真同好会のアカウントの削除とか?


「仮にパクリだとしても、企画に著作権はないはずです。どのテレビ局だって、クイズ番組や散歩番組をやってますよね。しかも同じ街を散歩することもあります。だから、この程度なら――」


「ああ、落ち着いて。落とし前なんて言い方したけど、そんなにキツイ要求するつもりはないから。まぁなんて言うの……こっちはまだ収益化もできていないのに、そっちが地元の商店街とコラボ企画してるのが気に入らないってのもあってさ」


 たしかに、動画研究会のチャンネルの登録者は二百人強しかいない。収益化まではまだまだ……。

 そんな状態で苦しんでいるのに、企画をパクった連中が大成功してしまったのでは、そりゃ頭に来るだろう。


「では、なにを要求するつもりですか?」


「コラボしましょうよ」


「ケンカ腰で来た割には、ずいぶんと穏やかな要求ですね。それくらいなら、同好会のアカウントにDMくれれば――」


「西高に頭を下げるわけにはいかない。そっちが悪いから、コラボすることで許してあげるって形にしなきゃ」


 地元民なら当たり前の感覚なのかもしれないが、越して来たばかりの俺にはよくわからない意地の張り方だ。


「コラボっていうと、うちの写真にそちらも写ったり、動画にこっちが出演したり……ってことですよね?」


「そういうこと」


「まぁそれくらいなら、しかたないんじゃないですか。どうもこっちに非がありそうだし」


 高梨先輩に確認すると、俯いた状態から、さらに頭を下げた。たぶん頷いたってことなんだろう。


「古谷さんもそれでいい?」


「弓月先輩がやったことを考えれば、しかたないのではないでしょうか」


 たしかに。別にこっちが損を被るわけでもない。

 まぁフォロワーの数を考えると、相手にばかりメリットがあり、こっちには恩恵はあまりなさそうだが。


「ってことで、コラボの件、了解しました」


「ええ。それじゃさっそく企画会議をしましょう。森田くん、資料を」


 相手のリーダーが隣にいた男子に言うと、彼はバッグから数枚の紙を取り出した。

 それにしても、ずいぶんとイケメンだ。さっきから黙って座っているだけなのに、妙に絵になる。


 リーダーのもう一方の反対側に座っている女子だが、こちらはお世辞にも美人とは言えない。だが、お世辞抜きで、ブスとは決して言えない。

 とても平均的……十人並みって言葉がピッタリだ。


 サムネを見る限り、あちらの動画は、この二人が出演者となっているようだ。

 リーダーが撮影と企画、両脇が出演者という構成はうちと似ている。

 しかしその一方で、こちらの企画はパクリ。男女の容姿は逆――なんか鏡を見ているような気分になる。


「まずこれを読んで」


 出された資料は、こちらが相手の動画にゲスト出演するというもので、どこに行ってなにをするかまでかなり細かく決められていた。

 俺たちに会う前から、すでにここまで準備をしていたとは……すごい周到さだ。


 あちらの用意した企画は、東高の近くにある城東商店街で食べ歩きを行う――というものだった。

 俺たちが商店街でやった案件撮影と似たような感じだ。

 今度はあっちがパクる番、ってことか……。

 先にやったのがこちらなだけに、文句は言えない。


「なにか質問は?」


「城東商店街に話は通してる?」


「当然。城西商店街があんたたちの写真でそこそこ盛り上がってるのを教えたら、やる気になってくれたわよ。あんたたち……っていうか、そっちのキレイな子を連れて来てくれるなら、全面協力するって」


 どうやら相手の狙いは、俺たち写真同好会とコラボすることではなく、古谷さんを起用することのようだ。


「どうする、古谷さん。洋菓子店や和菓子店、パン屋、カフェ、ラーメン屋、トンカツ屋……割とヘビーな企画になりそうだけど」


 写真撮影なら、全部を食べる必要はない。なんなら、口に咥えるだけで、実際に食べなくても大丈夫だった。

 だが、動画ではそうはいくまい。一口や二口では動画にならない。

 おそらく、完食した画もほしいところではないだろうか。


「別に一日で撮影するなんて言わないから安心して。一日一店、放課後に集まって少しずつ撮影しましょう」


「それならまぁ……」


 古谷さんが頷いたことで、この話は本決まりとなった。

 後は各店と具体的な話をする段階だが、それは俺たちがすることじゃない。あちらの仕事で、俺たちは当日に行って、言われた通りに出演するだけだ。


★★★


 その日の夜、古谷さんと通話をした。


「弓月先輩には困ったものです。まさか私たちは、パクリ企画の片棒をずっと担がされていたとは……」


「本当にね。それにしても、東高の人たちの手際はすごく良かったね。特に相手の会長さん……堀尾さんだっけ? 最初はあんなにケンカ腰だったのに、気付いたらこっちは要求を全部飲まされてた」


「罪悪感を抱かせてから、比較的軽い要求を突きつける……お見事でしたね。企画書をすでに用意していた点も含め、敵ながらあっぱれです」


 敵って……一時的とはいえ、同じ企画をやる仲間なのに。

 東西の確執は根深いな。


「堀尾さんはいかにもシゴデキって感じなのに、肝心の再生数や登録者はあんであんなに少ないのかな?」


「小野寺さん、彼女たちの動画を観ましたか?」


「いや、見てないけど」


「見るとわかりますよ。ということで、三十分後にまたお話ししましょう」


 古谷さんとの通話を切って、東高動画研究会の動画を観ることにした。

 俺たちが撮影したのと同じパワースポットに行き、説明をしながら歩いている動画だ。

 出演しているのは、あのイケメンと普通顔の女子。


 それはいいのだが……全然会話が弾んでいない。お互いに何か話そうとしているのだが、相手がそれをうまく拾うことができず、ラリーが成立していない。

 パワースポットの説明をしているセリフ以外は、なにを言っているのかよくわからない状態で………………まぁ、単純につまらない。

 というか、気まずい空気が画面越しに伝わって来る。


 いくつかの動画をチェックしたが、例外なくどれもそんな感じ。

 こんな気まずい空気、誰もわざわざ共有したくないよな……というのが、正直な感想。

 それ以上観る気になれなかったので、三十分経っていないが、古谷さんに通話をかけた。


「いかがでしたか?」


「こことコラボするのが怖くなった」


「ええ、私も同じ感想です。もらい事故だけは避けたいのですが…………」


 今回のコラボの話、主導権はあちらにある。

 俺たちが無事に乗り切れるかは、あちら次第ということで……いろいろ不安だ。

 とりあえず、諸悪の根源である高梨先輩には、今度なにかおごってもらおう。

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