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両一目惚れから始まる超楽勝ラブコメ  作者: 宵月しらせ


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第10話 デートの約束

「う~ん、思ったほど伸びてないなぁ」


 ある日の放課後、高梨先輩はスマホを見ながらそう言った。


「なにが伸びてないんですか?」


「投稿した写真に決まってんじゃん」


 先輩は、写真同好会のアカウントが表示された画面を見せてくる。

 トップに固定されているのは一番最初に投稿した古谷さんの横顔写真。目が少し潤み、頬は少しだけ赤く染まり、ちょっとした色気と清楚な美しさが同居している。


 控えめに言って芸術だ。

 だが、奇跡の一枚というやつではない。古谷さんは常に芸術的に美しいから。


「めちゃくちゃいいね多いじゃないですか」


「どこが多いの? たった九百ぽっちだよ」


 九百ってたったなのか?

 芸能人じゃあるまいし、一般人で九百なんて奇跡みたいな数字だろ。


「私の顔写真に九百人がいいねしてくれたなんて、ちょっと申し訳ないくらいバズってるように思えるんですけど」


 古谷さんもそう言っている。


「いいや、全然足りないね。私はこの神写真なら一万いいね行くと思ってたんだよ」


 さすがにそれは図々しいと思う。

 たしかに古谷さんの顔は、控えめに言っても、日本トップクラスだろう。少なくとも彼氏の俺にはそう見える。

 だからって、昨日今日始めたばかりのアカウントが万バズなんて、さすがにムリだろう。

 

 そういうのは地道にフォロワーを増やしていって、さらに運が味方した時にようやく起きるもののはずだ。

 いかに最高の写真だからといって、それだけでバズってしまうほど、SNSは甘くない。


「他の写真はどうなんですか?」


 あれから他のパワースポットにいくつか行き、撮影を行った。

 古谷さんのワンショットの時もあるし、俺が写っている時もある。

 そちらの様子はどうなのだろう?


「万どころか、千すらまだないよ。そういえば、ある傾向が見えてきたよ」


「どんなですか?」


「古谷のワンショットの方が伸びる。小野寺くんがいる写真はあんまり伸びない。小野寺くん付きだと一番多いので、二百いいねぐらいかな」


 俺が写っている写真で一番伸びているのは、神社の境内に二人で座って、池の鯉に餌をあげている写真。

 鯉がたくさん集まってくるほど、その恋が成就しやすい――という伝説があるらしい。


 俺たちが餌をあげた時は、池にいるすべての鯉が集まってきたんじゃないかと思うほど、大量に集まっていた。鯉のあげる水しぶきがすごくて、頭まで濡れてしまったほどだ。

 結構映えたと思うんだけどな……。


「コメント欄なかなか辛辣だけど読む?」


「結構です」


「『めっちゃかわいい付き合いたい』『隣の男いらねえ』『隣に乗ってまさか彼氏? かわいいのに男の趣味は微妙で草』『このくらいの男でいいなら俺にもチャンスありそう』」


「いや、読まなくていいですって。……本当にそんなろくでもないことばっかり書いてあるんですか?」


「全部本当に書いてあるよ」


 マジか、へこむ……。

 別に自分がイケメンだなんて思ってないけど、笑われるほど不細工なつもりもないんだけどなぁ。

 隣にいるのが古谷さんだから、どうしても比較対象がなぁ。


「こんなの気にしなくていいですよ、小野寺さん。私は小野寺さんの顔はとてもいいと思います」


 と古谷さんが励ましてくれる。


「一緒にいるとドキドキするし、幸せになれる顔です」


 まぁ古谷さんがそう言ってくれるならそれでいいか。

 他の誰になんて言われるかよりも、古谷さんの言葉の方が大事だもんな。


「あたしも別に小野寺くんの顔は嫌いじゃないけどね。写真に撮って面白いっていうか、素材に頼れず腕を試されるっていうか」


 なんか微妙に引っかかる言い方だなぁ。


「弓月先輩、失礼ですが、小野寺さんがこんなこと言われるのって弓月先輩のせいじゃないですか?」


「あたしの? なんで」


「先輩が小野寺さんをもっとカッコよく撮ってくれていたら、こんなこと言われないんですよ。小野寺さんの魅力をもっと引き出すような写真を撮ってください」


「ええ……そんな無茶ぶり。結構がんばったと思うけどなぁ、あたし」


「もっとです。小野寺さんの魅力が全然伝わっていません。これじゃなんのための写真同好会かわかりません」


「地元の魅力を広めるて、世間から評価されるのが目的だよ! そのための美人モデルが必要で、小野寺は美人モデルのテンションを上げるのが仕事だよ」


 わかってはいるけど、どう後悔での俺の存在理由っておまけみたいなもんなんだな……。


「私は小野寺さんを悪く言われてテンション下がってます! 私の良い写真を撮りたいなら、もっと小野寺さんの待遇を良くしてください!」


「めんどうくさいやつだなぁ。わかったよ、小野寺くんをもうちょっと目立つようにしてあげる」


「それでいいんです。よかったですね、小野寺さん」


 古谷さんが得意げな顔をしているので文句は言えないが、別に目立ちたくないんだけど……。

 どんなにがんばっても、ルックスで古谷さんに並べるとは思えない。むしろ黒子に徹した方が結果に繋がる気がする。


「じゃあどうやって小野寺をイケメンに仕上げてやるか」


「基本は服ですよね」


「まぁね。小野寺くん、君が今まで撮影で着た制服以外の服は、言っちゃなんだけど微妙だったよ。もっと垢抜けた服はない?」


「ないですね」


「じゃあ次の撮影は週明けってことにして、週末に君らで服を買ってきなよ」


「……私たち二人でですか?」


「そう。あたしは邪魔でしょ?」


「いえ、そこまでは言いませんが………………」


 古谷さんが口ごもる。

 理由はわかりやすい。実は俺たちは、休日に一緒に出かけたことがまだないのだ。

 撮影のついでに公園デートをしたことはあるが、本格的なデートはまだない。

 

 誘えば来てくれるような気はするのだが、どうやって誘えばいいのかがわからない。

 どういう理由が適切か……休日だからってだけでいいような気もするのだが、その一言を言うのが、なんとも難しい。


 だがいつまでも休日デートをしないわけにもいかない。

 すると、ちゃんとした大義名分がある今回は、案外いいチャンスかもしれない。


「古谷さん、よかったら今度の週末服を買いに行くの手伝ってくれないかな? 自分だとなにを買ったらいいかわからないから、古谷さんのセンスを貸してほしい」


「私も男性用の服には詳しくないですが、小野寺さんが頼ってくださるのでしたら。今日からがんばって男性のファッションを勉強します」


 思っていたよりもずっとあっさりデートの約束を取り付けられた。

 きっかけをくれた高梨先輩には感謝しなくては。

 でもまぁニヤニヤ笑って、俺たちを見て楽しんでいるようなので、別に感謝しなくてもいいか。


 この人がいいねを稼げる写真にしか興味ない人でよかった。もっと野次馬根性むき出しの人なら、デートの様子を隠し撮りとかしかねないもんな。


 さて、デートが決まったのはいいとして、どれくらい予算があればいいのか。

 財布に入ってる金額でも、一応買えないことはないだろうけど……安くて良い物なんてなかなかないよな。安い物は、安いなりの物というのが世の常だ。


 高級品を手に知れたいとまでは思わないが、やはりそれなりの物はほしい。するとそれなりの金が必要で……。

 予算が全然足りない。どうするか。

 とりあえず親に相談か。運がよければ、小遣いを前借させてもらえるかも。


 家に帰ってその話をすると、母さんは財布からを二万円を取り出し、テーブルに置いた。


「え、こんなにくれるの? さすがに多いんじゃ?」


「安物の服を買って恋湖愛ちゃんに恥をかかせるわけにはいかないでしょ。せっかく選んでもらうんだから、恋湖愛ちゃんが一番いいと思う服を選んでもらいなさい」


「わかった」


「馬子にも衣裳って言うし、あんただって着飾ればきっとそれなりに見えるわよ。それよりも、この二万円をどう使うかはかなり大事なところだから、しっかり考えなさいよ。自分が欲しいもののためだけに使うんじゃないわよ。母さんの言いたいことはわかる?」


「……たぶん」

 

 予算の都合もついたので、あとはデート当日を待つだけだ。

 その日はずっと古谷さんと二人で過ごす。一緒に出かけて、買い物して、ご飯を食べて

 完璧にこなす必要がないのはわかっているが、それでもいくらかは気負ってしまう。

 楽しみ半分、怖さ半分ってところか。


 いや、実際行ってみると、緊張しながらもきっと楽しさ百パーセントなんだろうけど。

 せっかくの初デートなんだから、買い物だけじゃなくなんか思い出に残る特別なことをしたいなぁ。

 そうだ、手を繋ぐのはどうだろう?


 付き合い始めてそろそろ一ヶ月。

 さすがに手くらい繋がないと……初日告白から始まったのに、まだ手も繋いでないんじゃさすがにペースが遅すぎる。

 小学生の恋愛でももう少し進んでいるはずだ。

 

 うん、決めた。デートでは絶対に手を繋ごう。

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