7話 最弱、初めての装備
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翌朝。
「……よく寝た」
ハジメはゆっくりと体を起こした。
見慣れない木の天井。軋む音。ほんのり差し込む朝日。
それでも昨日とは違って、不思議と落ち着いていた。
「……異世界二日目か」
そう呟きながら、軽く体を動かす。
痛みはあるが、動けないほどではない。
むしろ——
「ちょっと軽くね?」
ステータスが上がった影響だろうか。
体が昨日よりも確実に動く。
「レベル6、なかなかやるじゃん」
ちょっとだけ誇らしい。
……まあ戦い方は泥と石だけど。
腹が鳴った。
「……とりあえず飯」
人間、結局そこだ。
軽く食事を済ませた後、ハジメは財布を取り出した。
昨日、ギルドでもらった報酬。
「確か……銀貨10枚だったな」
そこから宿代で銀貨3枚。
飯で2枚。
「……ってことは」
中身を確認する。
「残り5枚か」
じゃら、と軽く鳴る音。
「思ったよりシビアだな……」
異世界ってもっとこう、稼ぎ放題なイメージあったんだけど。
全然そんなことなかった。
ギルドへ向かう……はずだったが、ハジメは途中で足を止めた。
「……いや待て」
自分の手を見る。
何も持っていない。
「俺、武器なくね?」
今さらである。
「今まで何で戦ってたんだよ」
水。泥。石。
「……原始人か」
いや、むしろ原始人の方が槍くらい持ってる。
「……ダメだな」
ハジメは方向を変えた。
「先に装備だ」
武器屋はすぐに見つかった。
看板には剣のマーク。
いかにもそれっぽい。
「……入るか」
少しだけ緊張しながら扉を開ける。
カラン、と音が鳴る。
「おう、いらっしゃい」
奥から出てきたのは、がっしりした体格の男だった。
いかにも“鍛冶屋”という雰囲気。
「えっと……武器、見てもいいですか?」
「好きに見ろ」
店内を見渡す。
「おお……」
剣。槍。斧。ナイフ。
ずらりと並ぶ武器の数々。
どれもこれも、いかにも“強そう”だ。
「……これが異世界か」
ちょっとテンション上がる。
近くにあった剣を手に取る。
「お、いいの選ぶじゃねぇか」
店主が言う。
「いくらですか?」
「銀貨15枚」
「戻します」
即返却。
「高っ!!」
「普通だ」
「普通じゃないだろ!!」
ハジメは財布を握る。
「俺、今6銀貨5枚しかないんですよ」
「それじゃ無理だな」
「ですよね」
別の武器を見る。
ナイフ。
「これなら安そう」
「銀貨5枚」
「……高ぇな」
買えなくはない。
だが——
「これ買ったら残り0枚なんですけど」
「飯どうする」
「そこなんですよ!!」
深刻な問題。
「もっと安いのないですか?」
店主は少し考えて、奥から一本の棒を持ってきた。
「これ」
「……棒?」
「木の棒だ」
「見りゃ分かるわ!!」
「銀貨1枚」
「急に現実的!!」
ハジメはそれを受け取る。
軽い。
シンプル。
「……いや弱そうだなこれ」
「当たれば痛い」
「その前に俺が痛いわ」
少し悩む。
剣は高い。
ナイフも微妙に高い。
棒は……頼りない。
「……中間ないのかよ」
店内をうろうろする。
そのとき。
「……ん?」
壁に立てかけられている一本の武器が目に入った。
「これ……」
細めの木の柄に、先端だけ金属がついている。
「槍……っぽい?」
「お、それか」
店主が近づく。
「安物の槍だ。バランスは悪いが、初心者なら悪くねぇ」
「いくらですか?」
「銀貨3枚」
「……」
残り5枚。
買えば2枚残る。
「……ありだな」
「あと、距離取れるぞ」
「それ大事!!」
即決だった。
「これください!」
店を出る。
手には槍。
「……それっぽい」
軽く振ってみる。
ブン、と風を切る音。
「おお……」
ちょっとテンション上がる。
「これで俺も……」
一瞬、脳内に勇者っぽい自分が浮かぶ。
「……いや無理だな」
即否定。
「どうせまた泥使うし」
現実は変わらない。
道を歩きながら、ふと思う。
「……でもこれ」
槍を見つめる。
「今までよりはマシだよな」
少なくとも、石よりは強そう。
「たぶん」
不安はある。
だが、それでも。
「ちょっとは“冒険者”っぽくなったな」
小さく笑う。
最弱。
チートなし。
「所持金、銀貨3枚」
「……現実厳しすぎだろ」
でも——
「まあ、やるしかねぇか」
槍を肩に担ぎ、ハジメは歩き出した。
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