5話 最弱、六体目で現実を知る
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ぴょん。ぴょん。ぴょん。
「……いや、増えすぎだろ」
ハジメは足を止めて振り返った。
そこにはスライムが三体。
当然のように追ってきている。
「ちょっと待て」
指を折る。
「一体目、水で撃破。
二体目、三体目、泥で撃破」
そして今。
「……六体目じゃねぇか」
どういう計算だこれ。
初心者クエストってこんなハードだったか?
ブラックすぎるだろ。
ベチッ。
「いったぁ!?」
背中に直撃。
「いや普通に痛いって!」
体力4。
安心できる数字じゃない。
むしろ“あと何発で死ぬか分からない”ライン。
「……逃げ切れないな」
ハジメは息を整えながら呟く。
敏捷4。
相手、ぴょんぴょん無限ジャンプ。
「勝てるわけないだろ」
だが、やるしかない。
「……正面からは無理」
これは確定事項。
殴っても効かない。
蹴っても効かない。
心が折れる。
「じゃあどうする」
答えは一つ。
「……崩す」
水でも泥でも結果は同じだった。
スライムは“まとまってるからスライム”。
なら——
「まとまらなきゃいい」
ハジメは周囲を見渡した。
草原、石、そして例のくぼ地。
「またあそこかよ……」
頼りすぎじゃない?
でも他にない。
「来いよ」
ハジメは走り出す。
くぼ地へ。
スライムも追う。
ぴょん、ぴょん、ぴょん。
「来すぎだって!」
くぼ地に飛び込む。
即行動。
石を蹴る。転がす。さらに蹴る。
「工事開始!!」
いや破壊かこれ。
地面を踏み荒らす。
足場をわざと不安定にする。
「滑れ滑れ滑れ……!」
「よし……」
振り返る。
スライム突入。
ボヨン。
ゴロン。
ぐにゃ。
「いいぞいいぞ!」
一体が転がる。
二体目もバランス崩す。
三体目、勢いよく突っ込んできて——
ぐちゃっ。
「お前が一番いい崩れ方したな!?」
「今だ!!」
ハジメは突っ込む。
「うおおおお!!」
ドンッ!!
体当たり。
スライムの形が歪む。
「そのまま——」
踏む!
踏む!
踏む!
「俺何やってんの!?」
でも止まらない!
数秒後。
動きが止まる。
「……一体!」
ぴょん。
ベチッ。
「いったぁ!?」
「タイミング悪すぎだろ!!」
完全に背後からの奇襲。
「くそっ!」
振り向く。
残り二体。
しっかり元気。
「回復してないよな!?」
してたら泣く。
ぴょん。
ぴょん。
「近い近い近い!」
「……いや待て」
足元を見る。
石。
「お前にかける」
拾う。
思いっきり叩きつける。
ゴンッ!!
石が跳ねてスライムに当たる。
「よし!」
効いてない。
「でも形は崩れる!」
「もう一発!」
ゴンッ!!
ゴンッ!!
「連打だ連打!!」
完全に戦い方じゃない。
でも効いてる。
スライムがぐにゃぐにゃしてきた。
「今だあああ!!」
ハジメは突っ込む。
二体まとめて——
ドンッ!!
「人間プレス三号!!」
1号2号はどこいった?
ぐちゃっ。
「そのまま——」
踏む!!
混ぜる!!
押し潰す!!
「もう戻るなよ!!」
数秒後。
静止。
「……」
「……終わった?」
つつく。
反応なし。
「……勝ったわ」
その場に倒れる。
「はぁぁぁぁ……」
疲労が一気にくる。
全身泥だらけ。
「六体……」
空を見る。もう夕暮れ。
「やりすぎだろ……」
そのとき。
――レベルが上がりました。
――レベルが上がりました。
「……きた」
ステータス確認。
――――――――――
名前:ハジメ
レベル:6
筋力:6
体力:6
敏捷:6
魔力:6
スキル:なし
――――――――――
「……ちゃんと強くなってる」
ちょっと嬉しい。
いや結構嬉しい。
「でもこれ」
空を見上げる。
「無双じゃなくね?」
完全に泥試合。
むしろ泥そのもの。
「……まあいいか」
立ち上がる。
足ガクガク。
「もう無理」
正直。
「帰る」
即決。
ギルド。
ガチャッ。
「……泥男だ」
あいつら言い回しやがったな。
「やめろ!!」
即ツッコミ。
「討伐、終わりました」
素材を出す。
「……六体?」
「はい」
「……どうやって?」
「泥と石で」
「……」
「いや俺も分かんないんですよ!」
先に言う。
「気づいたらこうなってた!」
「……変わってますね」
「ですよね!」
報酬を受け取る。
「おお……!」
袋が重い。
「無理はしないでくださいね」
「無理しないと無理なんで」
「日本語おかしいですよ?」
「元からです」
外に出る。
夕焼け。
「……ハジメ」
最弱。
チートなし。
戦い方、泥と石。
「……でも」
小さく笑う。
「ちょっと楽しいな」
その瞬間。
ぴょん。
「……まだいんのかよ」
一拍おいて——
「今日は帰る!!」
ハジメは全力で逃げ出した。
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