4話 最弱、姑息で生き延びる
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「うわああああああ!!」
俺――ハジメは、全力で草原を駆けていた。
後ろから、ぴょん、ぴょん、と規則正しい音。
振り向く。
スライム、二体。
「なんで増えてんだよ!!」
さっき一体で死にかけたんだぞ!?
「無理無理無理!!」
全力疾走。
なお、ステータス敏捷2。
遅い。
普通に距離詰められてる。
「くそっ……!」
このままじゃ追いつかれる。
ていうかもう追いつかれてる。
ベチッ。
「いったぁ!?」
背中に直撃。
「ぐはっ!」
前のめりに転ぶ。
「終わった!!」
振り返ると、スライムが二体、じりじり近づいてくる。
「いやちょっと待って!」
両手を前に出す。
「話し合おう!?な!?」
もちろん無視。
ぴょん。
ぴょん。
「だよな!!」
「……落ち着け」
深呼吸する。
パニックになったら終わりだ。
考えろ。
さっきどうやって倒した?
「水たまり……」
あれで“形を崩した”。
つまり——
「形を保てなくすればいい」
じゃあ水じゃなくてもいいのか?
泥、砂、何か混ざれば。
「……あ」
視線の先に、小さな坂があった。
その手前、少しぬかるんだ地面。
雨で柔らかくなってる。
「……いけるか?」
賭けだ。
でも他に方法はない。
「来いよ!!」
俺はわざと大声を出した。
スライムが反応する。
ぴょん、と跳ねる。
「よし!」
そのまま坂の方へ走る。
全力。
後ろから追ってくる音。
ぴょん、ぴょん。
「いいぞいいぞ!」
そのまま坂を駆け上がり——
頂上で振り返る。
スライム二体、ぴょんぴょん登ってくる。
「今だ!!」
俺は地面を思いっきり蹴った。
ズザァッ!!
「うおおおおお!!」
滑る!!
坂を滑り降りる!
ケツで!!
「ケツスライディングアタック!!」
自分でも何言ってるか分からん!
でも勢いはある!
そのまま——
ドンッ!!
スライム二体に激突。
「まとめて行けえええ!!」
勢いのまま、ぬかるみへ突っ込む。
バシャァッ!!
泥が跳ねる。
スライムがぐちゃっと潰れる。
「押し込めえええ!!」
足で踏む!
かき回す!
混ぜる!
完全に農作業。
「これもう戦いじゃねぇ!!」
でもやるしかない!
スライムが暴れる。
泥が飛び散る。
俺も滑る。
「うわあああ!!」
転ぶ。
起きる。
また踏む。
「しつこいんだよ!!」
数秒後。
……動きが止まった。
「……」
静寂。
泥だらけの地面。
スライムだったものが、ただのぬかるみになっている。
「……勝った?」
少し待つ。
動かない。
「……勝ったわ」
その場に座り込む。
「はぁぁぁぁ……!」
息が上がる。
全身泥だらけ。
「最悪の勝ち方だな……」
でも——
「勝ちは勝ちだ」
――レベルが上がりました。
「お?」
――レベルが上がりました。
「え、2回!?」
急いでステータスを開く。
――――――――――
名前:ハジメ
レベル:4
筋力:4
体力:4
敏捷:4
魔力:4
スキル:なし
――――――――――
「一気に上がった!!」
ちょっとテンション上がる。
「これ……地味に楽しくね?」
泥まみれだけど。
戦い方終わってるけど。
でもちゃんと強くなってる。
「……悪くない」
むしろワクワクしてきた。
そのとき。
「……今の何?」
声がした。
「……え?」
振り向く。
少し離れた場所に、二人組の冒険者。
剣を持った男と、ローブの女。
完全に見られてた。
「……いや、その」
言い訳を考える。
無理だ。
どう見ても泥遊び。
「スライムを……」
「泥で倒してた……?」
女がドン引きしている。
男も引いてる。
「え、普通に倒せばよくない?」
「それができたら苦労してねぇんだよ!!」
思わずツッコむ。
「ステータス全部1からスタートなんだぞ!?」
「え?」
二人の動きが止まる。
「全部……1?」
「はい」
沈黙。
「……そんな人いる?」
「ここにいるよ!!」
「初めて見た……」
ですよねぇ!!
しばらく気まずい空気が流れる。
やがて、男が口を開いた。
「……まあ、その」
「はい」
「……生きてるのすごいな」
「だろ?」
ちょっと誇らしい。
いや誇っていいのかこれ。
「普通死ぬぞそれ」
「だろ!?」
女がため息をつく。
「……とりあえず」
「はい」
「その戦い方、やめた方がいいと思う」
「なんで!?」
「見てて不安になるから」
ひどい。
でもちょっと分かる
「……でも」
男がニヤッと笑う。
「面白かったわ」
「え?」
「普通じゃないやつ、嫌いじゃない」
そう言って、軽く手を振る。
「死ぬなよ、泥男」
「誰が泥男だ!!」
即ツッコミ。
二人は笑いながら去っていった。
「……泥男か」
自分の姿を見る。
全身泥まみれ。
「否定できねぇ……」
でも。
「まあいいか」
小さく笑う。
最弱。
チートなし。
戦い方は姑息。
それでも——
「俺は俺だ」
ハジメは立ち上がる。
泥を払いながら。
「次は……どうすっかな」
無双には程遠い。
でも確実に前に進んでいる。
「やってやるよ」
そう呟いた瞬間——
ぴょん。
「……ん?」
また背後から音。
ゆっくり振り向く。
スライム。三体。
「……増えてね?」
ぴょん。ぴょん。ぴょん。
「ちょっと待てええええ!!」
ハジメは再び走り出した。
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