2話 最弱、街に出る
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「……詰んでね?」
もう一度言う。
「いやこれ詰んでるだろ」
白い空間に一人、俺は頭を抱えていた。
無双したくて死んだ。
結果、ステータス全部1。
これ、どういうバグ?
「いやいやいや、まだだ」
落ち着け俺。
こういうのって“隠しスキル”とかあるパターンだろ。
ほら、よくあるじゃん。最初弱いけど実は最強でした、みたいな。
「ステータス、再表示!」
――――――――――
名前:???
レベル:1
筋力:1
体力:1
敏捷:1
魔力:1
スキル:なし
――――――――――
「変わってねぇよ!!!」
知ってたけどな!
「くそっ……説明書どこだよ……」
ゲームならチュートリアルあるだろ普通。
なんでいきなり放り出すんだよこの世界。
その瞬間、視界がぐにゃりと歪んだ。
「え、ちょ、待っ——」
気づくと、俺は石畳の上に倒れていた。
「いってぇ!!」
全身に走る鈍い痛み。
「え、痛い!?ちゃんと痛いの!?リアルすぎない!?」
顔を上げると、そこは見知らぬ街だった。
てか石畳の上?雑すぎるだろ。
中世ヨーロッパ風の建物。
鎧を着た男。ローブ姿の女。
そして、明らかに“冒険者です”って感じの人たち。
「……来たわ」
異世界、来たわこれ。
テンションが一気に上がる。
「よし、無双——」
一歩踏み出した瞬間、足がもつれた。
ズテッ。
「よっわ!!!」
自分でびっくりした。
「何この体!?赤ちゃん!?」
ステータス全部1をなめてた。
想像以上に弱い。
「いやいやいや、でも大丈夫だ」
街に来たってことは、まずはアレだろ。
冒険者ギルド。
ここで登録して、クエスト受けて、成り上がる。
テンプレ展開、俺知ってる。
「行くしかねぇ……!」
フラフラしながら歩き出す。
通行人がちょっと避けてる気がするけど、気のせいだな。うん。
数分後。
「ここか……」
目の前には、いかにもな建物。
木製の扉に、大きな看板。
剣と盾のマーク。
間違いない。
「冒険者ギルドだ!」
テンション爆上がりで扉を開ける。
ガチャッ。
中は酒場みたいな雰囲気だった。
ガヤガヤとした空気。
屈強な男たち。
美人受付嬢(重要)。
「うお……マジで来たわ」
完全に異世界。
「よし、とりあえず登録だな」
受付に向かう。
途中、ガタイのいい男と肩がぶつかった。
ドン。
「……あ?」
低い声が響く。
「あ、すみません!」
反射的に謝る。
やべ、絡まれるパターンか?
男は俺を見下ろしたあと——
「……ちっ」
それだけ言って去っていった。
「セーフ!!!」
危なっ!絶対勝てねぇあれ!
ステータス1で喧嘩とか自殺行為すぎる!
「……いやもう死んでるけどな」
自分で言ってちょっと悲しくなった。
「ご用件は?」
受付嬢がにこやかに聞いてくる。
「冒険者登録お願いします!」
元気よく言う。
こういうのは勢いが大事だ。
「かしこまりました。ではステータスの確認を——」
「ちょっと待ってください」
俺は真顔になった。
「これ見ても引かないでくださいね?」
「……?」
不思議そうな顔をされる。
俺はゆっくりとステータスを表示した。
受付嬢の目が、スッと細くなる。
「……あの」
「はい」
「これ、本気ですか?」
「大マジです」
沈黙。
周りの空気が、なんかざわつく。
「ステータス……全部1……?」
小声で呟かれる。
「初めて見ました……」
ですよねぇ!!
俺も初めてだよこんなの!!
「えっと……失礼ですが」
受付嬢が少し困った顔をする。
「冒険者として活動するには、最低限の能力が必要でして……」
「はい」
「その……非常に危険かと」
「知ってます」
めちゃくちゃ知ってる。
「でも、やります」
きっぱりと言う。
ここで引いたら、何のために死んだのか分からない。
無双するために来たんだ。
最弱でも、関係ない。
「……理由をお聞きしても?」
受付嬢が少し真面目な顔になる。
俺は一瞬だけ考えて——
「無双したいんで」
即答した。
「……はい?」
「無双したいんで」
大事なことなので2回言った。
受付嬢が完全に困惑している。
周りからもクスクス笑いが聞こえる。
「……分かりました」
ため息をつきながら、彼女は書類を差し出した。
「自己責任になりますが、登録は可能です」
「マジで!?」
「はい。ただし——」
少しだけ、真剣な目になる。
「絶対に無理はしないでください」
「……」
一瞬だけ言葉に詰まる。
でもすぐに笑って、
「大丈夫です」
と答えた。
「どうせ最初から無理なんで」
「それ大丈夫って言わないんですよ」
即ツッコまれた。
こうして俺は、異世界での第一歩を踏み出した。
ステータス全部1。
スキルなし。
完全なる最弱。
それでも——
「やってやるよ」
小さく呟く。
無双したくて死んだんだ。
ここで終わるわけにはいかない。
たとえ最弱でも。
たとえ誰に笑われても。
俺は——
「……で、最初のクエストって何やればいいんですか?」
「スライム討伐ですね」
「いけるな」
「いけません」
即否定された。
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