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5.ポスター —前編—

 市役所にはあちこちに掲示板がある。広報課が掲示板に貼られるポスターの管理をする。

 春は特に多い。同じフロアの広報課の人間が、せっせと貼り替えている。


 その日、望月と吉野は食堂へ向かっていた。1階にあるその食堂は、職員だけでなく一般の人も勿論使える。メニューは当たり障りのないものが揃っていて、味も平均的だ。比較的安いのが嬉しい。

 二人は日替わりランチを頼んだ。今日は生姜焼き。キャベツの千切りとミニトマトが二個、豆腐が入った味噌汁がついてくる。ライスは多めに盛ってもらった。


 「明田さん、明るくていい子なんだよなー。2週間後くらいに毎年恒例の所内の花見があるだろ?同期にも声かけとけって言おうと思ってさー。」


 そう言う吉野も、人を集めるのは得意分野じゃないか、と思う。どうせ自分にも出ろって流れだ。


 吉野は勿論、他の同期もきっちり誘ってくる。毎年渋々出ているが、前半は楽しめる。後半は居場所が無くなって帰りたくなる。


 「新顔が増えるのは助かるよなー」


 ぼんやり答えておく。望月にとっては、最後まで共に話せる仲間がその中にいてくれたら尚助かる。


 「わかってると思うが、望月お前も出ろよー!俺が寂しくなるじゃん!」


 へぇへぇ。と返した。吉野は飲むと知らないうちに色んな人の所に行って飲むクセがある。自分がいなくても絶対寂しくはないと、望月自身の方がちょっぴり寂しくなる事を考えてしまった。


 花見の話をしていたからか、ふと食堂の出入口にある掲示板のポスターが目に入った。何とも春らしい桜満開のポスター。


 描かれた女子高生が一人、自転車を漕いで桜並木を走っている横から捉えた構図だった。交通安全のポスターだった。その横顔は、なんとも晴れやかで楽しそうな雰囲気だった。


 ただ、ポスターの左上が剥がれていてわずかにめくれていた。どうやら、テープが剥がれかけているらしい。望月と吉野は食堂のおばちゃんにテープをもらいに行き、ピタッと止めてやった。


 ——視線のようなものを、感じた気がした。

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