44.神輿
その日、とある会議室に祭りで神輿を担ぐメンバーが集められていた。
「いやぁ、今日はお忙しい中申し訳ない」
そう口を開いたのは、青年会の青木さんである。毎年祭りの関係者として指揮を取っている人だ。
「今日は観光課の課長さんにも頼んで、この場を設けてもらいまして」
青木さんは、ぐるっとメンバーの顔を見た。
「ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、毎年市民課にいらっしゃった神田さんが、神輿で色々サポートしてくれていまして。今、神田さんが入院中で……危篤状態が続いている中、神田さんの代わりになる人を探しております」
「えっ、神田さんの事知ってたか?」
望月は隣に座る吉野に、小声で確認をした。
「いや、何も……入院中って事自体知らなかった」
「まぁ……退職時は元気そうだったから……その後を知る人はあまりいないか……」
退職後となると、個人的に連絡を取っていなければそういった情報はなかなか入ってこない。
「その、神田さんの代わりって何ですか?」
後ろの方から、若い声が聞こえて来た。
「それがですね……」
パンッ!と青木さんは、ホワイトボードに貼り出された祭りの地図を叩いた。
「神輿を担いで曲がる際に、危険なポイントに立って見張るのです!」
地図上に丸で囲まれた箇所が、十箇所程あった。
「なぁ、あれ全部かな?」
「なんか、そんな気がする」
吉野の問いに、望月も疑問に思いながら答えた。 「その丸、全部っていう事ですか?」
先程質問していた若手の集団から、誰かがまた質問を投げかけていた。
「はい、その通りです!神田さんは、全部の神輿がこの危険な箇所を通過して行くのを、毎年見届けてくれていました」
青木のその言葉で、会議室は少しざわついた。
「毎年……神田さんって神輿を見守っていたのか」
「確かに、毎年角に立って声かけてくれてたな……」
初参加のメンバーは知らない事実だが、何回か出ている者でも、担ぐ事に集中していれば、気が付かない時もある。
「全部の神輿が危険な箇所を通過していくのを、見届けていたって……!?」
望月は持参した地図に、丸を付けて確認をしていた。
「なぁ、フツーに無理じゃないか?」
「そんな体力があったとしても、当日は混み合っているだろうし……それに……」
それに、危険な箇所が近い所は、どうやって通過を確認していたんだ……?
地図を穴が開くほど見ても、全くさっぱり検討が付かなかった。




