37.サングラス
「はぁ、暑いなぁ……」
出勤の道中、お堀の木々から伸びる影に身を潜ませながら、望月は歩いていた。
「望月ー!おはよー!」
後ろから元気な吉野の声が聞こえて来る。
「おはよう。あれ?ここ歩いて来るんだっけ」
「いや、普段は向こうの地下駐車場なんだけど……この辺でちょっと探してる店があるんだ」
そう言いながら、辺りをきょろきょろと見回している。
「そう言えば、最近この辺の店は変わったけれど……どんな店?」
「眼鏡屋なんだけど……」
「ん?吉野、目は悪いんだっけ?」
「いや、サングラスが欲しいんだ」
「へぇ……」
そう言われると、望月自身もサングラスが欲しいなぁと思いつつ、毎年買わずに夏が過ぎて行った。
夏の夕方は眩し過ぎて非常に危険だ。そして朝も眩しい。望月は朝太陽に向かって車を走らせ、夕方は太陽に向かって帰って行く。朝夕とギラギラ輝く太陽に目潰しを喰らうのだ。
「やっぱり、運転してると危ない時間帯あるよな」
「そうそう。毎年危ないなーって思いつつ、喉元過ぎればってやつで、買わないまままた一年過ぎるんだよな。今年こそは買おうと思い立ったんだけど……どうせなら、帰りに寄れる所に行きたい」
「それもそうだな。帰りに寄らないから、結局買わないって事だもんな」
そんな話をしながら市役所に着いた。
「意外とサングラスしてる人、多くないか?」
望月が辺りを見回すと、色んな色のサングラスをしている人々が目に留まる。サングラスが欲しいと思っているからだろうか。
「多分増えたよな?」
吉野も同意見のようだ。二人はエレベーターに乗り三階のフロアに向かう。
「あ!おはようございます!」
席に着いていた明田が、二人を見るやいなやサングラスをかけた。
「どうです、これ!最近できた眼鏡屋さんで買ったんですよ!」
それは薄いブラウンに細い金縁のサングラスだった。
「今まさに俺らの話題に上がっていたよ」
吉野がほぅ、と覗き込みながら話す。
「なかなか似合ってるじゃん。運転用のそういうサングラスが欲しいんだよねー」
「ちょっと道から反れるので、もし良ければ帰りに案内しますよ!」
「どう?見やすいの?」
望月は度入りが欲しいなぁ、とぼんやり考えていた。
「目に優しいですよー!そういえば最近、小学生でもかけてますよね!」
「そう言われると、登下校してる子なんかもかけてるのを見たなぁ」
「紫外線対策で柔軟に対応している学校もあるって何かで見たよ」
会報だか広報だかで、最近チラッと見たのを望月は思い出した。
「日傘もそうだけれど、紫外線対策はもはや老若男女、季節を問わず一年中するものになったな」
「そうですよね!じゃあ、帰りに私がこの可愛いサングラスを買ったお店にご案内しますね!」
一年で最も危険を感じるのは、この暑い夏だ。各々が工夫して身を守り、健康第一で乗り切って行きたい。




