36.迷惑メール
世の中には、ありとあらゆる迷惑メールが存在している。身に覚えの無いところから金銭を支払うようにだ何だと、なぜか一定の期間の間に集中して受信したりもする。
本当に迷惑だなぁ、と望月はPCのメール受信の中身を見て思っていた。
望月宛てのメールは普段あまり送られてこない。送られてきてもだいたいのメンバーは決まっている。
「迷惑メールが結構来てるんだけど、市の水道局から水道代を支払えって内容のばかりある」
こういう督促は、メールやSMSでお知らせすることは無い。
「俺の方にも来てるー迷惑だよなぁ」
吉野が三連休明けの仕事はイヤです、とでもいうような声で望月に応えた。
「私の方にも来てます!問い合わせとか来ちゃいますかね」
明田の方にも迷惑メールは来ているようだ。
こちらに問い合わせは来ない。もし行くなら水道局の料金課となる。
「休み明けに可哀想にな……まったく、こんなメールどんなヤツが送ってるんだよ。リアルな金額請求してるな」
吉野はぶつくさ言いながら、メールを開いているようだった。
「あ、俺のところに面白いのがある。市役所の水道代が請求されてる」
「は?いくらなんだ」
「さん……ぜん……ふふっ」
市役所の水道料金が、基本料くらいだなんて、そんな面白い事は無い。
「やべー、一人かよ」
吉野のツッコミを受けつつ、そのメールを始め、他の二十件くらいのメールを一括で消した。
昼休みが明けて午後の仕事が始まると、またメールボックスには偽水道局からの迷惑メールが数十件来ていた。
「吉野、俺のところにまた迷惑メールがきた。しかも件数が朝より増えてる」
「えぇ、やだなぁ。俺のところは来てないなぁ」
その迷惑メールに埋もれている中に、観光課の間宮から珈琲イベントの進捗状況も上がってきている。
「あ、それじゃない」
間宮のメールの一つ上にあった迷惑メールを、うっかり開いてしまった。先に消しておけば良かったと思いつつ、メールの内容に目が止まる。
「何だこれ」
その内容は、料金の請求では無かった。
"◯◯町、マンホールの蓋が外れる"
「どーしたん?」
吉野が固まっている望月の元へとやって来た。メールの文面を見て「うお」と言葉を漏らす。
「他のも開けてみるか……」
望月は間宮のメールの下にあるメールを開いた。
"◯◯町、水道管が破裂する"
「これはテロ予告か?」
吉野の言葉に少し吹き出すものの、不安の拭えない内容である。
昼過ぎのメールはその二種類が何通も来ていた。朝確認したメールを確かめたが、こちらは本当に迷惑メールのようであった。
「これ、どうする?」
「俺が電話をしたところで……どうにかなるのか?」
その日、二人は答えを出す事ができなかった。




