34.ポスター再び
七月も半ば、夏休みという文字がチラホラと頭に浮かんでくる時期だ。
曇り空でむしむしとした一日が始まり、昼を過ぎて夕方に差し掛かろうという時間帯には、辺りが少し暗くなり、強い風が雨雲を連れて来る。
望月はこの日、ポスターの貼り替えの手伝いをしていた。左斜め前に座る、吉野の手伝いと言っても過言ではない。
「眠たくなる時間帯は、歩いて気を紛らわせたくなるよなー」
吉野は人気の無い方向を見て、ふぁ〜と欠伸をした。望月の方からは見えていないが、声が欠伸をしたと言っている。
「歩き回ったからには、あと一時間半、フル稼働できるな」
「まぁ、そうだな」
こちらを振り向いた吉野は、ちぇ、と口を尖らせていた。余りにも素直な吉野を、時々羨ましく思う。
「あとは、地下の売店前だけだな」
「そうだな」
望月と吉野は手元にあるポスターを確認した。それぞれ二枚ずつある。
望月が持っているポスターの一枚に、夏休みのプラネタリウムの案内があった。
座席に座っている男女が、プラネタリウムに映し出される星座を指差している様子を、右斜め下から捉えたような絵が描かれている。
そこには、銀髪男子と明るい笑顔の女の子が描かれていた。
「あっ!」
この二人……!!
「えっ?」
吉野が望月の急な大声に驚き、反射的に振り向く。
「あっ、いや、ごめん……というか、吉野もこの二人知ってるよな?」
「えー?何だ何だ?」
望月はプラネタリウムのポスターをパッと開いて吉野に見せた。
「この二人、こっちの男の子はトリックアートに描かれていて、こっちの女の子は交通安全ポスターに描かれていた子なんだよ!」
そして、トリックアートの銀髪男子は紙の壁を越えて、この女の子と一緒になった。
「あー、なんかうろ覚えだけど、そんなポスターもあったかもなぁ」
吉野の釈然としない返事に少しがっかりしつつも、この二人が仲良くしている事が何よりも嬉しかった。
「いや、待てよ。何でこの二人が一緒に描かれているんだ?」
「描いてる人が一緒なんじゃねーの?」
「うーん……」
このポスターからでは、描いた人まで分からなかった。
「お、望月!こっちにはこんなのがあるぜー」
それは、トリックアートのポスターだった。夏休みに謎解きイベントとコラボをするらしい。
そこには、前回のメンバーに加えて二人増えた、五人体制の絵が描かれていた。
「どーする?隣にしてみる?」
吉野はパッとポスターを開いて見せる。望月も開き、横に並べてみた。
「大丈夫だと思う」
「ん?何が大丈夫なんだ?」
「仲良くしてくれそうだ」
「え?まぁそれなら良いけれど」
二人はその二枚のポスターを、隣同士で貼る事にした。
夜な夜な二枚のポスターの人数が変わっている事は、誰も知る由もない。




