33.レインボーキャット
今日も市役所には多くの市民が訪れている。市民課の星田は真面目に仕事をしているが、時々望月に戻ってきてほしいと思っていた。
「はぁー、望月さんがいればなぁー」
「そうねぇ、一番テキパキしてたからねぇ」
星田の隣に座るのは、ベテランの山内だ。柔らかな雰囲気はあるが、課の特性というのだろうか、やはりテキパキと仕事をこなす。
用事を終えた望月は、市役所の一階から戻るところだった。
そこに、一人の青年がキョロキョロと辺りを見回している。
「あの、市民課ってどこですか?」
「こちらですよ、ご案内しますね」
望月はその青年の後ろをチラチラと見ながら、市民課へと案内した。
「では、こちらの番号札を取っていただいて——」
「あ、望月さんだ」
星田は望月に気が付き、さり気なく近寄った。
「お疲れ様です」
「あぁ、星田君、お疲れ様。今あの人に番号札は取ってもらったから」
「あ、ありがとうございます」
「それと……」
望月は何やら少し笑みを浮かべて、その青年を見ていた。
「きっと、あのアパートの人だと思う」
「あの、アパート……」
「予想だけど、レインボーキャットだ」
「レインボー……あぁっ!」
駅から車で十五分程の所にあるアパート、レインボーキャットは、築五年の内に数人の敏腕社長を排出している。
「な、何で分かるんですか……」
二人が話し込んでいる様子を見て、山内が青年の対応をし始めた。
「実は、視えるんだよ」
「へっ!?」
「レインボーキャットが」
「レインボーキャット……」
望月は椅子に座っている青年の膝をじっと見ていた。
「まん丸の白猫なんだけれど、尻尾が虹色なんだ。たぶん招き猫なんじゃないかな」
「え、えぇー……」
そんなものが視えているんですか……?白くてまん丸で虹色の尻尾の猫……可愛い。可愛すぎる。
星田もちらりと青年を見る。彼は手続きを終えたのか、ちょうど席を立った。
その時、ふわりと白い物が動いたように見えた。
「あれ?今の……」
幻覚だろうか、それともそんな話を聞いたから見えたような気がしたのか。
「たまに、一緒にいると少し感じ取る人はいるんだよね」
望月はまるで他人事のように飄々と話す。
「本当ですか?白くて丸いものが見えたような」
「やっぱり星田君は少し視えるんだね。そう、その結構丸くて白い猫なんだ」
じゃ、と片手を上げて望月は去って行った。
「あ、望月さん……」
星田は望月に次会ったら、戻って来てほしいと話してみようと心に決めた。




