3.階段 —中編—
望月は急いでいた。
この時期だから仕方ないが、どちらかというとのほほんとしたい派だ。
しかし、違和感回収課という謎の課で一人で仕事をするとなると、何をすべきかわからない。
仕事内容が見えてこない以上、他の課の手伝い要因として尽力するしかない。
その結果、以前所属していた市民課の手伝いをしている。人の移動が多い以上、大活躍をせざるを得ない。
そのせいで、気が付いたらおおよそ30分間隔でコッ。という音が聞こえてくるにも関わらず、音の正体を確かめられずにいた。悠長に階段を使っている場合では無くなってしまった。
——コッ。
気になる。
気になりすぎてうるさい。
鬱陶しくなる。忘れた頃に鳴る。
思わず「うるさい。」と言いたくなるが、それをやってしまうと自分が厄介な存在になってしまう。
「あの……望月さん、少し宜しいでしょうか。」
気持ちがギスギスしてきた頃に、遠慮がちに声をかけてきたのは明田さんだった。困っていても明るい雰囲気を纏った彼女に、申し訳ない気持ちになった。
「ん?どうしたの?」
「市民課の場所を教えていただきたいのですが……。」
吉野は席を外していた。どうやら課長に指示を仰いでいるようだ。——階段の事がふと頭をよぎる。
「全然構わないよ。一緒に行こう。」
現段階で仕上がった書類をバッと抱え、明田と共に早速向かう事にした。
勿論、階段の方へ足が向かう。
「職員の方は階段をよく使うのですか?」
「うーん、正直人それぞれだと思う。」
今時期は忙しいからエレベーターを使っても良いよ、と言えるタイミングではなかった。
来年の今頃、明田さんがエレベーターをちゃんと使っていてくれますようにとひっそり願った。
——コッ。
今、鳴った。踊り場のすぐ近くから聞こえた気がした。もう三歩ほどで踊り場に差し掛かるが……誰もいない。
「今、階段から何か音がしなかった?」
「……え?何も?どうかしましたか?」
明田は、不思議そうに首を傾げた。
望月は、やはり、と確信を得た。
少し面倒だけれども——この音は自分にしか聞こえていない。




