25.協賛店
とある日の午後、会議室の一室に望月はいた。
「これがリストアップした喫茶店やカフェのお店です!」
観光課の間宮が持って来た書類は、二十五枚のA4用紙で一冊に綴じられていた。
「え、凄いね。こんな風に用意してくるなんて、全然想像してなかった。」
「楽しかったし、気合いが入りましたから!」
間宮は満面の笑みで言った。何しろ、新卒で入ってもう、今年の新規イベントを仕切る事になっているのだから。
その冊子は良く出来ていた。
表紙には、"珈琲を片手に青空の下で〜素敵な一杯を見つけよう〜
と、書かれている。
「これ、イベント名ってもう決まってるの?」
「いえ、表紙に何も書いてないのはどうかと思って、雰囲気で入れてみただけです。」
「へぇ……」
イベント名は、まだ考える余地有りだが、雰囲気は伝わる。
次のページを開いた。
そこには二十店舗がピックアップされている。
「市役所を中心に、徒歩十五分圏内で良いと思ったお店を上げてみました。」
「十五分圏内なら、駅の東口まで入るね。」
「そうなんです!二十分に広げてもみたのですが、お店が無かったので十五分に収まりました。」
「へぇ、その五分の間にお店は無いんだ……」
その次のページには、二十店舗の位置を、一目で見られるように地図が載っている。
やはり、駅の周辺が多い。
その次二ページは、ロゴのデザインがあった。
「ロゴはあくまで字体とか、色味とかの案です。まだイベント名がちゃんと決まっていないので……」
「いや、イメージがあるだけでも今は充分だと思うよ。」
「あ、はい!ありがとうございます!」
「これを見ていると、楽しくなってくる。」
「良かったですっ……!」
デザイン案の次から、各店舗について一ページに纏められていた。
ぱらぱらと見る。今にも珈琲の香りがしてきそうだ。
「お!」
望月は一つの店が目に留まった。
「ビルの間に、こんなに雰囲気のある店があったのか……!」
それは、市役所の西側、駅から一番離れた所にある。
「そこですか!写真の雰囲気良いですよね〜」
写真は夜に撮られたものらしい。暖かい色の灯りがキラキラとしている。
カウンター五席
と書かれていた。
「カウンター五席……ちょっと勇気がいるなぁ。」
店名は、"etroit"
「エトワ、私も気になります!」
——へぇ、"エトワ"って読むのか……。
「イベントは冬頃って言っていたけど、具体的には決まってるの?」
「はい。上司から、11月の21,22日で、と……三連休になりますが、その二日間だそうです。そうすると、スケジュール的にちょっと忙しくて……すみません。あと、お祭りで手がいっぱいのメンバーで、お祭り後に三人ほど協力してくれます。」
「うーん、今日って上司いる?」
間宮は手帳を取り出し、パラパラと捲った。
「いえ……明日は朝からいます。」
「なるほど……明後日って、また会議できる?」
「はい、できます!」
望月は考えを巡らせた。
「その時にはもう、イベント名を固めよう。デザインも決めた方が良いね。このロゴって、どうに作ったの?」
「AIです。なので、文字を入れれば同じ文体ですぐ、できあがるかと。」
「よし、ちょっと時間もらうよ。」
「は、はい!お願いします!」
そうして二人は解散した。
望月は、etroitに協賛店になってもらう事しか頭に無かった。




