21.好きこそ物の上手なれ
「望月君、今少し良いかい?」
「あ、はい!」
文化課兼違和感回収課の課長、上野が望月の席にやって来た。
「実は頼みたい事があるんだが。」
「何でしょうか?」
「観光課の手伝いをしてほしいんだ。」
「もしかして、祭りの手伝いでしょうか?」
望月は、珍しく逸る気持ちを隠せなかった。
「ん?祭り……?まぁ、その手伝いも良いかも知れない。後で話してみよう。でも今回の話は別件だ。」
「そうですか……祭りの手伝いの件、参加したいので是非お話しください。それで別件とは……?」
「人伝てで聞いたが、君は珈琲が好きらしいじゃないか。」
どこからどう広まったのかはわからないが、大当たりである。
「はい、好きです。マイボトルにいつも入れています。」
「良かった。そういう人間が欲しくてな。午後、観光課の担当の人と顔合わせをしてくれないか?」
「はい、分かりました。」
そのやりとりを、明田はチラッと見ていた。
午後。望月は誰が来るのかわからない会議室に、一番乗りで来てしまった。
「あれ……ここだよな?」
不安になりながら、会議室の外で待機する。
一、二分経っただろうか、一人の女性が姿を見てを現した。
「望月さん、お待たせしてしまいすみません!」
「あれ?間宮……さん?」
「そうです!覚えてくれてたんですね!」
間宮は、明田の同僚である。
「実は"あけ"からお昼休みに聞きました!望月さんが協力してくれるって!」
「え?あ、そうなんだ……」
二人は会議室に入った。望月は何に協力するのか、まだ知らされていない。
「あの、俺は何をすれば……?」
「実は、今年の冬ごろからの新しい企画で、駅周辺のカフェと協力して、珈琲のイベントを立ち上がるんです!」
「珈琲のイベント?」
「はい!この辺りは結構こだわりのお店が多いのと、駅周辺の人の流入を増やす目的で考えています!」
「へぇ……良いね。」
「そこで、私に白羽の矢が立ちまして……私は珈琲が好きなので苦ではないのですが、他の方々はそこまでではなくて……」
「それでこちらに話が来たわけ、か……」
新しいイベントを立ち上げる。望月は自分だけではなかなかできない機会という事もあって、とても興味が湧いた。
好きな事に携われるのは、俄然やる気が出る。
「私も行った事が無いお店がまだありますので、是非下見に行きたいと思っておりまして……」
「そうだね。協力店の事を知らないのは失礼に当たるからね。」
「リストアップと日程の候補日は私がするので、望月さんは少し気長に待っていて下さい。」
「えっ、いいの?ありがとう。」
「リクエストも受け付けます!」
二人はLINEを交換し、イベントの話を良いところで切り上げた。
「あっ!そうだ!もしできるなら、チラッと話してみてほしいんだけど……」
望月は、思わずはっとした。
その様子を意外そうに間宮が見る。
「えっ!?何でしょうか?」
「観光課の課長に、俺が祭りの手伝いに参加したいらしいですよ〜って、吹き込んでもらえると嬉しい。」
「望月さん、手伝ってくれるんですか!?私は大歓迎です!」
間宮は弾ける笑顔で答えた。
「じゃあ、珈琲のイベントも、祭りを手伝えるのも、楽しみにしてるから!」
「両方任せてください!」
二人はそれぞれワクワクした気持ちのまま、会議室を後にした。




