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19.朗報

 「おっはよーう!」

 今日も市役所の一日が始まった。

 最近遅刻ギリギリに出所していた吉野が、始業三十分前に来て、辺りに響き渡る声で挨拶をしてきた。

 「お、おはよう……!!」

 望月は自分の席で、マイボトルに入れたブラックコーヒーを飲んでいた。

 安らぎのひとときを、久方振りに吉野の声で吹き飛ばされた。

 望月は、吉野の様子を見て一安心した。


 「望月、昼な!!」

 吉野は昼まで引っ張ろうとしているが、何も言わなくてもわかる。全身から幸せな空気がダダ漏れだ。


 その日の昼、二人は珍しく外に出た。吉野が奢りだ、とか言って、広場の近くにある人気のラーメン屋に望月は連れて行かれた。


 「望月、ほんっっっとうにありがとう!彼女が戻って来たんだよ!前、ばあちゃん譲りだとか言って、俺をバシバシ叩いただろ?あの日の夜から少しずつ様子が変わったんだ!」

 注文したラーメンを待ちながら、吉野が堰を切ったように話した。


 望月は朝から、そんな事だろうと予想していたが、面と向かって言われるととても嬉しい。

 「それなら良かった。俺も嬉しいよ。」

 「それでな、実は結婚の話まで進んだんだ!」

 「えっ!?急にそんな話までいったのか!?」

 結婚まで話が進んだのは予想外だ。喧嘩をして、同棲している彼女が実家に戻り、そこから仲直りをして結婚の話まで……

 人生とは、わからないものだ。


 「俺も驚いたけれど、するする気持ちを伝える事ができたんだ。そしたら、あれよあれよと結婚話が浮上したってわけ。」

 「吉野は素直だもんなー。」

 「自分でも、そう思う。」

 ニッと吉野が笑ったところで、注文したラーメンがテーブルに置かれた。

 「うっしゃぁぁ!うまそー!!」

 吉野は味噌ラーメン。コーンましまし。望月は塩ラーメン。味玉を一つ追加して、合計二つ入っている。


 「はぁー、旨かった!」

 「吉野、ご馳走様!」

 「あいよー!と言うか、お礼だから!」

 「あの塩ラーメン、スープが透き通ってて旨かった。また奢ってくれ。」

 「え!?さらっと言ったなー!」

 二人とも大声で笑いながら、市役所へ向かっていた。


 「そういえば、お堀掃除してた時に指輪拾ったろ?」

 「ん?指輪がどうかしたのか?」

 「あれ、どうやら持ち主に戻ったらしいぜ。」

 「そうなのか!?それは良かった。あれを泥の中から見つけた時は、ヒヤッとしたけどな。」

 「あれは驚くだろ。なんか、市役所の女の人の物だったらしいよ。又聞きだから、どの課の誰とは知らないけど。」

 「市役所の人間だったのか……何かあったんだろうな。まぁ、戻ったなら、その人も何らか解決したのかもな。」


 葉が青々としている広場を、さぁっ——と風が吹き抜けていった。

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