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ミリアとコータ  作者: hachikun
宇宙のエージェント研修?
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027-【閑話】とある業者のつぶやき

「はぁ、どうしてこうなる?」

『そうぼやくな、こういうのは時間をかけるしかないんだ』

「わかってますけどねえ」

 

 その仕事は、俺たちには小さな仕事のはずだった。 

 小さな青い星を滅ぼす。

 

 上の方の思惑は知らない。

 ただ俺たちが聞かされていたのは、その星が史上最悪のテロリストとその一味の故郷だということ。

 その地を連邦がおさえるため、その前仕事を頼まれたんだな。

 ただブッ飛ばせば終わりじゃないのは厄介だけど、まぁ汚れ仕事だよな。

 こんなん場末の俺らに任せるなとは思ったけど、確かにできない仕事じゃない。事情もわかる。

 そういう事ならと、引き受けたんだ。

 

 

 現地はせいぜい、オン・ゲストロの駐在員がわずかにいるだけって話だった。

 大気圏内には、自称『チキュウジン』なる現住生物が70億もはびこっているというが、原始的な文字を持っているだけでロクな文明もなく、そもそも母星から出ることもできず、大気圏内だけをブンブンとうるさく飛び回るコトすら、一部の者だけ。ほとんどは惑星の地べたを這いずるだけだという。

 そして現地に向かうと、本当にその通りの状態で驚いた。

 マジか、未開ってこういうコトなのか。

 だいたい、この民主政府ってなんだ?

 民主ってことは、一般人ひとりひとりにも政治の知識がなくちゃダメなんだぞ、それは義務だ。

 こんな未開レベルでやったら衆愚政治になるのがオチだろ、何考えてんだ。

 この程度の社会ならむしろ専門家に任せるべきなのに、なぜ?

 ああいやその場合、民度が低いと独裁になるのか……それにしてもなあ。

 いや、所詮は星から出られない程度の連中であり、これが人未満という事なのかと。

 頭を抱えた。

 

 オン・ゲストロの蜥蜴ども、よくこんな星に平気で駐在してるもんだ、有害無益だろうに。

 どこの領土にもなってないのも確認したので、さっさと焼き払ってしまおうという事になった。

 典型的なアルカ系の星だし、頃合いを見計らって再訪し、環境調整してサブロス系の生物群でも投入しておけば、じきに良い星になり発展するだろう。

 

 そんなわけで地上を焼き払った。

 第四惑星の向こうから、手頃な小天体をひとつもってきて投下した。

 あたりまえだが妨害のひとつもない。

 近年まれに見る、本当に実に簡単なお仕事だった。

 よしよし、摂氏500度もあればアルカなんて全滅だろう。

 うん、いい仕事をしたあとは気持ちがいいねと微笑みあった。

 

 あ、もちろん事前告知も出したぞ。

 オン・ゲストロの連中がいるようで、退去してもらわんと困るしな。

 そのへんは抜かりなく法を守った。

 当然だろ?

 うちはこれでも優良業者なんだぜ?

 

 何やらオン・ゲストロの船が騒いでいるようだが、領有宣言も出しておいた。

 じきに本国経由で退去命令が届くだろう。

 あいつらも、長年駐在してたろうに、なんで占拠もせずにほっといたんだ?

 こんな何もない星、さっさと領有されていれば、こっちも手出しなんかできなかったんだがな。

 それとも、現住生物に何か遠慮でもしてたのか……まさかね。

 同じ顔をしているからって、現住生物を同族と思うなってのは銀河の住人なら誰でも知ってることだろ。

 野生動物を人間として社会に混ぜたら、お互いに悲劇にしかならないのだから。

 そんなの当たり前じゃないか。

 

 

 

 ■ ■ ■ ■

 

 

 

 だが……我々の方が甘いと思い知らされたのは、このあとだった。

 仕事を終え、次の担当を待って交代するだけだった我々は、文字通り蒼白となった。

 

 まず、ただちにこの星域から退去せよと連邦政府から直接の指示が来た。

 俺たちみたいな末端の業者に直接?

 さすがに驚いたがどうやら、それほどの緊急事態なのだと知れた。

 そして話を聞き、仰天することになった。

 

 

 この星系はたしかに、誰にも占拠されていなかった。

 でもそれは、大昔にあのオン・ゲストロが本拠地としていた星域で、今も保護区として監視下に置いていると周辺星域に知られているから、というのが大きいのだという。ただの未開地ではないのだと。

 連邦担当の言葉は続く。

 知らなかったのだから罪には問わないそうだが、現状の連邦とオン・ゲストロの関係を考えると心情的に非常にまずい。なので即座に離脱せよとのこと。

 

 あたりまえだが皆、唖然とした。

 そして言われた通り、即座に星域を離脱した。

 

 ずっと昔、オン・ゲストロが拠点にしていた星域?

 しかも当時、彼らは『レムリア・アルダス』と名乗っていたと?

 とどめに……賢者アーロンの故郷だとぉっ!!

 

 馬鹿野郎、なぜ早くそれを言わない?

 あの野蛮な生物だらけだった星が、俺たち銀河連邦の英雄にして大恩人、連邦公用語の作者、言語学者アーロンの生まれ故郷だって!?


 ……アーロンの杖を掲げるって言葉、知ってるだろ?

 そうだ、素晴らしい業績をあげるとか、いよいよ立ち上がるとか、そういう意味で使う言葉だよ。

 銀河系中に知られてるよな?

 

 そうだよ、あのアーロンだよ。

 あれの元ネタの人だよ。

 俺たち、大恩人のふるさとを焼き払ったってのかよ。

 

 ああ……そんなバカな。

 勘弁してくれ。

 そんなの最初から教えてくれよ。

 

 

 きけば問題のテロリスト関係者は、俺たちが地上を焼き払う前に立ち去って無事だったという。

 いやまて、星間トラファガー機関の職員!?ターゲットが!?

 そうか。

 潜伏しているときいていたが、そんなとこで仕事してたのか……道理で情報が早いはずだって、そんなの早くいえよ!!

 

 星間トラファガー機関ってのは、政情不安定な国にいる家族に手紙を届け、返事をもらってきたりするサービスだ。

 地味に思えるかもだけど、政情不安定な国では手紙なんて勝手に開封されたり盗まれることも珍しくなく、特に星間だと絶望的だ。だからこういうサービスがある。連邦でも利用者がいるから、そこそこ知られているんだ。評判だって悪くない。

 そんなのの相手を俺たちにさせるつもりだったのか?

 バカか、あいつらは連邦の正規軍がガッチリ押さえた現場と普通にやりとりしたり、人を連れ出すその筋のプロだぞ。特殊部隊でもない俺たちの動きなんて読まれて当たり前だろ。

 クソ、なんてこった。

  

 ちなみにターゲットがかの星から連れ出したのは、ボルダ人の小さな女の子らしい。

 自分自身は無害なアマリリンに身をやつし、対応した港湾ロボットも、ペットを抱いた小さな女の子としか認識しなかったとか。女の子が持っていた渡航チケットも、アマルー聖女王発行の本物でトラファガー機関の利用実績があり、問題なく通されたという。ペット用ケージも手配されたけど、おとなしい奴だったらしい。

『ああ、猫を抱いた子ね、いたねえ、猫もかわいくてね、大人しくしてたよ』

『そういえば時々、まるでふたりでお話するみたいにしてたね。あのサイズじゃちょっと会話は無理だよね、ふふふ、かわいいねって皆、ほっこりしてたんだよね』

 いやホント、なんだよそれ。

 そんな見るからに人畜無害の塊、俺だって通しちまうよ。

 なんだよそれ。

 なんてこった。

 

 

 そんなわけで、俺たちの仕事は見事に失敗だった。

 問題の関係者は別の連中が追いかけるんだろう、俺らは専門外すぎて無理だしな。

 お約束の、この件について口外したら死ぬぞって念書書かされて終わりさ。

 でも、どうかな。

 そこいらのテロリスト狩りや軍隊をつれてきたところで、どうにかできたりするのかな?

 どうもあいつら、得体が知れないところがあるように思うんだが。

 ま、いいか。もう関係ないしな。

 

 え?詳しく説明しろ?

 うーん、そうだな。

 この星域は近くにゲートがないから、一番近いゲートまではハイパードライブを繰り返す必要があるんで、一応暇ではあるんだが。

 え、追加料金払う?

 わかった、じゃあ少しだけ俺の短い話でお茶を濁させてくれ。

 

 

 

 ■ ■ ■ ■

 

 

 

 銀河連邦の話をしてもいいが、やっぱりここはレムリア・アルダスの話をすべきだよな。

 今はオン・ゲストロっていわれている、あいつらの昔の姿。

 そこんとこを話してみようじゃないか。

 

 連邦じゃ暗黒街なんていうやつも居るけど、それは昔のプロパガンダだ。

 彼らは俺たち連邦と同様の組織なんだよ。そりゃ細部も歴史的経緯も全然違うけどね。

 

 もともとの彼らは銀河系の外からやってきたという。

 といっても本来の系外人は少しだけで、銀河に定着する頃には銀河の筆頭種族であるアルダー、つまり蜥蜴タイプの人類に置き換わり、組織的にもこの銀河系だけの組織になったそうだけどね。

 連邦もそうだけど、彼らの目的も別に中央に富を集めているわけじゃないんだよ。

 俺たち連邦がそうであるように、彼らも連合という一種の経済の生態系を作るのが目的なんだ。

 ともに商売をして、よりよくする。それだけ。

 でも仲間内なら当然、他より色々と条件がよくなり、やりやすいわけだ。

 うん、本当に俺たち連邦と同じだ。わかりやすくていいね。

 

 そんな彼らだけど、銀河にきた当時は拠点がなくて困ったらしい。外来者だから当然だな。

 で、ど田舎でどこの勢力も手をつけていない、あの星域に拠点をこしらえたんだそうだ。

 現地にはアルカと思われる生命体がいたけど、文明どころか言語も怪しいレベルだった。

 それでもアルカはアルカなんで、干渉はしない方針とした。

 で、彼らのやってこない土地に拠点を作ったそうだ。

 

 そんで時代は進む。

 言語学者アーロンが出た時代にはそろそろ、移転の話が出ていたそうだ。

 現地のアルカたちに異変がある。どうやら本格的に知的生命体に向かって進み始めたとのことでさ。

 以前から道具の扱いをはじめていたそうだけど、ついに火を使い、生活道具をこしらえはじめたと。

 穏やかな社会性があるのも確認されたと。

 今はまだ原始的だけど、いずれ宇宙に出る可能性が出てきた。

 これは念のため、この星系を離れて様子を見たほうがいいと。

 

 ……実はこのあたりの話、脚色ありだと思ってたんだよな、俺ら。

 ただの生命体だと思っていた現住生物に文明の萌芽が見えた、これはわかる。俺ら連邦でもこのパターンは撤退だよ。間借りしてる身なんだから、家主の事情が変われば出ていくのが筋だし、発展途上の連中に変な干渉するのはもったいない。未来、本当に彼らが星まで届けば、友達になれるかもしれないんだからな。

 でもそのあと、マジで人を置いて観察し続けるか普通?

 まぁ確かに、星間文明クラスの跡地となると変なやつらがやってきて、結局全滅しちまった、なんて話もあるのは知ってるけどさ。

 さすがに面倒見よすぎだろ。

 

 

 おや、そろそろハイパードライブか。

 え、仕事がある?わかったわかった。

 まぁそんなわけだ、じゃあな。


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