Scene18: しっぺ返し
「童貞のふりした拝み倒しかなんかで、何人か女喰ってたんでしょ」
「ひとを妖怪みたいに言わないでよぉ……」
座椅子に腕組みをしてふんぞり返った私は、監視をしつつの尋問に入ったところだ。
ナオヤの両手両足首は、結束バンドで頑丈に縛られている。荒れ散らかされた室内から発掘し、愚弟が気を失っているあいだに拘束を完了させていた。ベッドとテーブルに挟まれて正座をするスウェット着の無抵抗な囚人と化している。
「姉の私まで童貞装って喰おうとか、どういうつもり? 信じらんないんだけど」
おかしな点はあったのだ。
非童貞というなら、避妊具がマットレスの下に常備されてあるのも納得する。我慢しきれずにいきなり挿れようとしてくることもなく、濡らす濡らすうるさかったし。口でして欲しいと言ったときの沈黙は、あれはやっぱりクンニリングスをためらっていたのだろう。私に彼氏が居ないということを知っているから、手入れが行き届いていないことは目に見えていたから……。
ナオヤがしずしずと供述を開始する。
「勘違いするなよな。最後までするつもりなんて端っからなかったんだ」
「はァ?」
「手でイかせるだけで終わらす予定だったんだよっ!」
「……ひょっとして、まさか」と、思い当たる節がある。
「小5のときにされた手淫による強制射精の仕返し」
予感的中。
手ですることに固執していた理由はそれか。
「……あんた、そんなに根に持ってたの?」
「そうだよ。トラウマっていうのはホントだかんな。――それで、姉ちゃんが、誘うような口ぶりをしたから、これは同じことやってオアイコにするチャンスだと思ったんだ。男相手に冗談でも思わせぶりな態度したらダメだっていう教訓にもなったろう?」
「最ッ低、最ッ悪。……そしてそれも嘘ついてるんじゃないの?」
「ちげーし! だいたい僕は勃ってなかったからな!?」
「……まあ、たしかに」ふれていた感触はずっとフニャチンのままだった。今もテーブルの下から覗き見える感じ、通常形体を保っているように思われる。
「なに見てんだよ!」と、天板がドンドン叩かれる。
「一応の確認だよバーカ」
「あぁーあ、髪の毛燃やしやがって」と、ナオヤが手枷状態の腕を持ち上げ、縮れ毛になっている前髪をなでつけた。「仙台帰るまえに整えてから行けよ」
「誰が切ってやりますかってーのっ!」
「でも考えて見れば救われたのかなぁ」と、私を見てイヤ~な感じで笑ってくる。「あのままだったら姉ちゃんのくっせ~マンコ舐めさせられるとこだったから。ジッパー下げて開いたときに籠もってたのがムワッときたぜ」
「あぁん!?」
「それに姉ちゃんさ、今、濡れてるんじゃない?」
「ハァン!?」
「ひさびさ過ぎて、鼻息だけで感じてただろ?」
私は背後を振り返り、テレビボートから両手にDVDを抱え出す。
「さあナオヤ、ここに抱えたディスクを全部割るのに、何分かかると思う?」




