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真相暴露と母の愛

 祝100話到達!

「あ、姐さんっ!何するんですかい!?」

「まったく。暑苦しい真似してんじゃないよ!」

 村長の抗議を一睨みで黙らせてしまったこの人は一体…?


「………マ」

 ……マ?

 声のした方向に目をやれば、鳩が豆鉄砲を食らったような表情のマツリ。

「……ママッ!!」


「「「ママ~~~!?」」」

 マツリの口から飛び出した衝撃発言バクダンに俺たちは目を白黒させる。

「……ママ?」

 マツリを指差し、頷いたのを見てその指を謎の女性に向ける。

「……?」

 指差され、一瞬キョトンと首を傾げたがニッと笑みを見せる。

 それを肯定と受け取る。


「……で、姐さん?」

 指差した時に無意識に睨んでしまったが、相手も睨んでいるのでご愛敬だな。

 同じように頷いたのを確認し指を動かしていく。

「イッエェェイ!」

 今度はダブルピースで応えてきた。


「どうなってんだ!!」

 俺の叫びは虚しく洞内に響くのだった。




「――で、どういうことなんですか?」

「そうよ!きっちりがっつり説明してもらうわよ!」

「…………」

 激昂する俺たちの前には先程奇襲を仕掛けた男たちを含めた5人が正座させられている。


「も~う、怖い顔ねマツリ!」

 いや、一人早々と正座を解除していた。

 彼女は背後からマツリとムサシの肩に腕を回し、頬をぷにぷにしていた。

「ママッ!!」

「…ちょ、母さんやめっ――」

「なによ~、久しぶりの親娘のスキンシップじゃないの」

「それはそれ!今は、説明の時間でしょっ!」

「えぇ~、つれない~」


「……やっぱり、姐さんが母親っていうのは無理があったんじゃ?」

「そもそもあの人よく今まで地が出なかったな」

「そんな余裕もなかったんだろ?」

「………いや、やっぱりあの人がしっかりしてただけだろ」

 ぶーぶー文句垂れてる彼女に男共はひそひそ集まって何やら話している。

 「あの人」って誰のことだろう?

 どうでもいいけどいい加減に話進めないかな?




「――で、今度こそ話を進めてくれるのよね?」

 仕切り直しまして。

「はいはい。ここにきてもう隠し事なんてしないってば」

 その割には話を始めるまでが長かったような…。

「……その前に、いいか?」

「……なんだよ?」

 ったくこれからって時に。

「まあ、そう邪険にするな。こっちももう敵対するつもりなんてねえよ。単純にここで話さなくてもいいんじゃねえかってことだ」

 言われて思い出せば、ここは洞窟だったな。

 たしかに、敵もいないのにわざわざこんなジメジメした場所で話す必要なんてないか。


 そう思ったんだがな……。

「なっ、なんじゃこりゃああああ!!」

 ああうん。頭を抱えたくなる気持ちもわかる。

 洞窟から出ると、そこは見知らぬ場所でした……というほどではないが、大きく変貌していたのは事実。村の外周には木々が生い茂り、村人たちは悲鳴を上げながらも伐採しようとして逆に吹き飛ばされる始末。

 ……ヤノンたちに説明するの忘れてたわ。てへっ!


「「「ごめんなさい(なのですよ)」」」

 現実逃避しているわけにもいかず、ひとまず村の外に行ってなぜか暴走しているヤノンたちを殴って止め。村人たちの前で謝らせている。

「…………反省」

 一人踏ん反り返ってる奴がいるけど。


「――さて、仕切り直すか!」

「なかったことになんてできると思うなよ?」

 いやぁ~、怖いな。なんのことかさっぱりわからんが!!


 場所を移して村長宅。向かい合うように座る親娘とそれを囲むように座る俺たち。

「…さて、まずはどこから話したものかしら?」

 面倒臭がっているというよりも話が長くなりそうだから、順序立ててるって感じか。

「聞きたいことに答えていってもいいけど?」

 ……やっぱり面倒臭がってるだけ?


「じゃあ、村長たちとの関係から教えてもらおうかしら」

「いいわよ。こいつらは元仲間よ」

「……元、仲間?」

「そう。あんたらも私がかつて冒険者としてブイブイいわせてたのは知ってるでしょ?その時にこいつらとは一緒に行動していた時期があったの」

 ブイブイって…。

「その元仲間にこんな手の込んだ工作をさせた理由はなんなのよ?」

「…う~ん、話せば長くなるけど。大まかな理由は2つかな。一つはあなた達の成長を促すため」

 そしてもう一つは…

「――私がもうすぐ死ぬからよ」


「「………はっ?」」

 あっけらかんと母親から告げられた言葉に娘たちは理解できないという表情を浮かべるだけだった。


「マツリ、パパが死んだ理由は知ってるわね?」

「……う、うん。病気で死んだって」

「そう。実はパパと私がかつて冒険者として旅していた時にもらった病気でね」

 どうやらその病気の発症に気付いたのは夫が死んでから。

 直接元凶に触れた者以外は感染しないことが証明されているのでマツリ自身には影響はないとのこと。

「発症までに時間がかかるし、どれくらいで重篤になるかわからない。だから、私はかつての仲間たちがいるこの村に来ることにしたの」

 どうやら、最初からこの村を目的地ゴールに旅を続けていたらしい。

「…途中でムサシに出会ったのは予想外だったけど。あんたがこの子を気に入って家族になりたいと言った時は本当に嬉しかったわ」

 まさに慈母の顔で優しくムサシの頭を撫で上げ、マツリに笑顔を向ける。

 そこには自分が何も残せないことへの後悔など微塵も感じさせず、娘たちの成長を喜ぶ母親の姿があった。

「……だけど、時間がなくなったの」

 村に辿り着いてしばらくして彼女の病状は悪化した。

「だから、ゴリアにあなた達のことを任せたわ。マツリは神職系に就けるように取り計らってもらったりしてね…」

 ゴリア――村長はしかめっ面で気まずそうにするだけだった。

「な、なんで神職だったの?私、それで利用されてるんだと…」

 その問いに対する彼女の答えは単純だった。

「――だって、パパも神職だったから」

 マツリの父親で彼女の夫である人は教会に仕えてこそいないが神職であり、彼女同様に【予知】のスキルを持っていた。

 極稀にだが、スキルが遺伝することがあるらしい。

 そして、マツリが神職であること…それに特殊スキルに目覚めたことを教会に報告しなかったのは報告すれば教会からの干渉があるかららしい。教会は【予知】スキルの独占に躍起になっているので強引な手段を取られることもありえたそうだ。


 それから母親を人質に取ったという芝居の日々が始まった。二人だけでも生きていけるように、また母親の病状を気付かせないように嘘に嘘を重ねた日々が。


「「…………」」

 室内に重い沈黙が流れる。

 それはそうだろう。信じていたモノが何もかも違ったことに気付かされたのだから。


 そして、その沈黙を破るのもやはり彼女たちでなければならなかった。

「――で、それで、ママの病状は…?」

 祈るように尋ねた娘に対し、母は毅然と真正面から。

「……もう余命はほとんど残されていないわ」

 そう告げたのだった。

 本人から語られる余命宣告。

 彼女はどこか安心したようでいて儚げだった。

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