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5.『卒業するまでには興味を持たせるよん!』

彼女はどことなく動きがぎこちなく、ほやほやしている。とりあえず目の前の彼女の格好を観察してみる。背中には黒色の蝙蝠のような羽根があり、ぱたぱたと動いている。浮世離れした異国の少女、もしくは変わった女の子。彼女を見てそう思って。


彼女を見ていると、彼女も私に気づきまじまじと見つめ言う。その口から紡がれた、私には全く意味がわからなかった。


『新米悪魔の私に召喚サンクス! キミが私を召喚したんだよね?』


途端、彼女の顔が私の頬へと吐息がかかるくらいに近づき、反射的に私は一歩後ろに下がった。


『そんな黙りこけてないでさあ。 なにか言ってよー! 契約しようよー それとも新米だから止めようとしてんのー?』


彼女は言いながら、背中の蝙蝠羽を動かし浮き私の肩を抱く。先輩か黒野がいないと翻訳ができないようだ。


そして、私の脳はフリーズした。

フリーズとはfreezeであり、凍ること。凍らせることである。そして、コンピューターが停止してしまうことだ。よくある例はパソコンで調べごとやゲームをしてたら画面が固まること。とにかく、今の私の思考はそんな風に止まっていた。それでも脳は少しずつ固まりをほぐしていくしかない。

えーっと。彼女はなにを言っているのかな? あれ。私はどうしてここにいるんだっけ? 目の前の彼女は自分で悪魔とかいってるんだけど?



考察その一

たんなるコスプレ。

考察その二

ドッキリ

考察その三

本当に悪魔

考察その四

私は本を読んでいるうちに寝ていて、今は夢の中



私としては、考察その一のたんなるコスプレと考察その五の夢の中がいいと思う、だけど


こう(新人に)みえても私はけっこう優秀だよ? 私のパパは天使のママを落すほどだし。 お姉ちゃんとお兄ちゃんは召喚ひっきりなしだし、弟だって悪魔学校を最年少の主席で卒業したからね!』

「……っ」


何いってんの、このこ。


『ねーえってば』


彼女のひんやりと冷たい指が頬をつんつんとつつく。その感触はまぎれもなく考察その五を打ち消し、そもそもワイヤーも天井に仕掛けがないのに浮いている時点で考察その一と考察その二と考察その四は除外されていたのだ。

残念ながら回答は考察その三の本当に悪魔、のようだ。ありえないけど。そもそも、彼女が私は悪魔です! はい、そうですか。と、そう簡単に納得する私はフリーズした影響でおかしくなっているのかもしれない。いや、オカルト研究部に入部した時点で私の感覚が麻痺しているのか……。どうしてこういうときに先輩か黒野がいないんだ。


彼女は興味津々に楽しそうに私の頬をつついたままで、蝙蝠に似た羽根をパタパタ動かして浮いていた。


変な人? 先輩の変人つながりの知り合い? 彼女がにこり、私に笑顔を投げかける。その笑顔でフリーズがとけ瞬時に私の頭は動いた。


「人待たせてるんで! じゃあ!!」


変な人には経験上かかわらない方がいい、とオカルト研究部に入部し覚えた私は立ち上がりぐるっと彼女から離れて、全速力で部屋からでて逃げ出した。先輩や黒野たちのような変人にかかわると大変な目にあう。


『あっ、まってよお!』


背後で彼女の泣きそうな声がしたが、私は一度も振り返らず、ただただ夢中で先輩と黒野の元へ急いだ。


思えば、これが全ての始まりなのかもしれない……


とりあえず、私と“彼女”は、こうして出逢った。




自称悪魔の痛い彼女からは全速力で逃げた私は出入り口で待っている先輩と黒野の二人と合流した。


「すみません、お待たせしました」

「おっかえりーん。紫ちゃんなにか面白いのあったかなん!」

「惹かれるものはなかったです」


先輩と黒野はオカルト研究部員同士でなにか話してたようで、私を確認すると先輩は笑って私のほうに歩く。


「そっかー残念だよん」

「そうですか」

「おっせーよ。本返したか?」


黒野が黒野が小馬鹿にするように笑って、博物館を見た。目つきの悪さもあって、よけいに悪くなっている。本のことに関してはどうにも言えない。


「まあ、私はオカルトに興味がないというのを再確認しました」


私は黒野は無視して、先輩と話す。


「ぬぬぬぬぬ! いつか! 紫ちゃんが卒業するまでには興味を持たせるよん!」

「いいです。遠慮します。止めてください」

「即答だな」

「その前に、先輩その頃だと卒業していないじゃないですか。それにあと一年しかないですよ」

「まずは! 一緒に晩御飯を食べながらお話だねん!」

「聞いてないし」


こうしてそのまま、三人で飲食店のチェーン店で晩御飯を過ごすことになった。先輩のよくわからないお話とともに。



「疲れた」


そうして寮へ戻ってきた時は、もう日が暮れていた。


「ただいま~」


おかえりなさい、の返事はないのがわかっているのだけど癖で言ってしまう。部屋の電気をつけそのままベッドに突っ伏す。


あの時の、あの女の子。変なことを言ってて、羽があって浮いていた彼女。あんなおかしいことがあるわけがない。あれは幻覚で、幻聴で掃除で疲れていた私が生み出した幻だ。オカルト研究部の影響であんなのができたんだろう。


ぐいっと腕を伸ばし全身に力を込め一気に抜く。立ち上がり部屋のカーテンを閉める。今日はぐっすり寝て、とにかく土曜、日曜と二日巻寝て休めばいい。明々後日には疲れもとれているはずだ。制服を寝ながら脱いで、畳んで置いてある寝巻きに着替えるとすぐに私は眠りに落ちていった。



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