replica to story 002 空に続く木
村はずれに住む兄妹は「空に続く木の上には救いがある」と言われて、育った。
兄は信じ、登ろうとする、妹は信じない代わりに記憶を残す方法を、考えた。
しかし、木の上にあったものは・・・宝でも、魔物でもなく、「帰れなくなった、子供たちの理由」だった。
置き去りにされたのは、誰だったのか?
村外れに一本の木があった。
その木は誰も見たことがないほど、高く、枝は雲を突き抜け幹は太陽に届くのではないか?と噂されていた。
村の大人たちは、子供たちに、語った。
「あの木の上には、救いがある」
十五歳の兄、ソラは、それを信じていた。十二歳の妹ツキは、信じなかった。
二人の両親は、ツキが生まれてからすぐに、村を出たが、理由は誰も教えてくれず、祖母が二人を育てたが、三年前に亡くなった。それからは村人たちの施しで何とか生きてきた。
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「ソラ、本気なの?」
ある朝ツキは、兄に問いかけた。ソラは木を見上げ頷いた。
「もちろん本気、俺は登る、あの上に俺たちを救うものがあるはずだ」
「救いって何?お金、家、神様、勇気・・・なんなのよ」
「わからない、でも、ここにいても何も変わらない、だから俺は登のさ」
ツキは黙った。兄の目はもう何も映していなかった。
「じゃ、私は記録を残す」
「お兄ちゃんが登って、もし帰ってこなくても、誰かがお兄ちゃんのことを覚えていられるように・・・私は信じない、でも忘れたくない」
ソラはツキ妹の頭を撫でた。
「ありがとう、ツキ」
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翌朝、ソラは木を登り始めた。
村人たちは遠くから見守ったが、誰も、止めようとはしなかった。
みんな、そう、期待のまなざしを向けていたからである。
「あの子が登るのか、救いを見つけたら教えてくれるだろうか、いや、返ってこないかもしれないぞ・・・」など、言いたい放題言っている。
ツキは兄の姿が見えなくなるまで見送った。
そして記録を付ける。
〈兄ソラは、本日木を登り始めた、理由は救いを探すため、私には何が救いなのかが、わからない でも、兄はそれを信じている〉
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一日が過ぎ、二日・三日がすぎた。ツキは毎日木の下で待ち続けた。村人たちはやがて、興味を失くし、日常に戻っていった。
七日目の夜の記録に、
〈もしかしたら、兄は帰ってこないかもしれない、それでも私は待つ。兄の"帰れない理由を知るまで"〉
その時、木の根元に落ちてきた。それは一枚の紙だった。
ツキは、その紙を見た。子供の文字で、次のように書かれていた。
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・ぼくはもう、降りられない、上には何もなかった。ただもっと上があるだけだ。
・降りたらみんなに笑われる、だからぼくはここにいる
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ツキの手が震えた。それは兄の筆跡ではなかったけど、幼い誰かが書いたもの。ツキは木を見上げ、叫んだ。
「お兄ちゃん、降りてきてぇーーーっ」
しばらくして、別の紙が落ちてきた。今度は兄の文字だった。
『ツキごめん、俺も降りられない』
ツキはその夜兄を迎えに行くことを決意する。
翌朝、ツキは木を登り始めた。村人たちは、見送ることはしなかった。枝の上に一人の少年を見つけた。少年はぼんやりと上を見つめていた。
「誰?」
「ツキ、ソラの妹」少年はゆっくり振り返った。
「あぁ・・・、君のお兄さんなら、もっと上にいるよ」
「そんなことより、なんで、降りないのよ」
「降りたら、何もなかった事を認めなきゃいけないから」
少年の目は哀しみに包まれていた。
「僕たちは救いを探して登ったけど、何もなかった、もっと上があるだけだった、何もなかったのかと、笑われるだから、僕たちはここにいる」
ツキは少年の手を掴んだ。
「一緒に降りよう」
「無理だよ」
「無理じゃない、私が一緒に降りるから」
少年は涙をながしながら、
「降りたら僕は何もない人間だってバレる」
「そんなこと気にしなくていい、生きてる方がいいじゃん」
ツキは少年と共に降り始めた。途中何人もの子供たちにも出会った。
みんな同じ目をして、「救いはなかった」と認められず、降りる勇気を持てず、ただ木の上で時を過ごしていた。
ツキは一人一人に声をかけ、"一緒に降りよう"
誰も応えなかった。その中で一人の少女が、小さく頷いた。
「私、降りる」すると、次から次へ、僕も、私も・・・。
やがてツキの後ろには数人の子供たちが付いてきた。
ツキが地面に降りたとき村人たちは驚いた。
「何もなかったのか?」
「救いはどうなった?」
「救いはありませんでした、帰ることはこうしてできました」
失望の表情を浮かべる村人。
ツキの後ろから降りてくる子供たちを見て息を呑んだ。
「この子たちは・・・」
「帰れなくなった子供たちです、木の上の救いを探し見つからず、降りられなくなっていたのです」
村人は黙った。
木の上から声がした。
「ツキーっ」
ソラの声だった。
「俺も降りるっ・・・」ツキは涙を流した。
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数日後、ソラは地面に降りた。
「ツキ、何も無かった、オレ、恥ずかしくて・・・」
「うん、無い、ってことは知ってる」
「いいよ、帰ってこれたから」
ツキは記録に付け足した。
〈ソラ兄は七日間、木の上で過ごした、救いはない、そして、帰ってきた。一番大事な事だ。〉
「ありがとうツキ」
二人は村を出ることにした。
木の上の救いを探すのではなく、自分たちで、生きる場所を探すために。
この物語は『期待』という名の呪いについて考えました。
救いがあるといわれ育ち信じて登った先に、何もなかった時、信じたことが崩れ、降りられなくなりました。木の上の子供たちは、自分で降りる選択が出来なくなっていたのです。
"何もなかった"と認める勇気がどれほど難しいのか?
ツキが兄を迎えに言ったように、誰かが手を差し伸べること、『降りてもいい』と伝えること、それこそが本当の救いなのかもしれません。
最後まで、拝読ありがとうございました。
♧♧♧♧ じゅラン椿 ♧♧♧♧




