63・自業自得
「もし仮に、あんたの言うカシュラ王国の元王太子が俺で、そいつが生きているなんて噂が広まれば、あんたの国の現国王に不満を持っている奴らが必ず騒いで蹴落とす材料にしたがる。そうなる前に、現国王側は噂の俺を処分したくなるだろうな」
そういう事情には気づいていなかったらしく、フロイデンの顔にさっと緊張が走ったけれど、レオルは淡々と続ける。
「だけど俺はこのレマノルト王国では多少認知されている騎士で、面倒な知り合いもそこそこいる。もしカシュラ王国が俺を疎ましく思って暗殺を働いた証拠でも露見すれば、国同士の関係悪化は避けられないし、国際的な批判にあうのは間違いないから、手を出しにくい……かといって、元王太子という手札を隣のレマノルト王国に握られているのもやりにくい。だからカシュラ王国では、王太子の存在を消すより、迷惑な噂を流すあんたを消す方がずっと楽だ、ということだけど」
「そんな……」
「つまり命知らずのあんたは、自国に告げ口されては身を亡ぼすような話を、さっきまでしまくっていたんだよ。このまま、のこのこカシュラに帰る勇気があるのかは知らないけど」
どうやら戻っても、私が資金を渡せばまた果樹園を再開できるという話ではないのかしら。
自業自得かもしれないけれど、不憫ね……。
フロイデンと仲間の男たちが唖然としていると、レオルは何かを企むような笑顔を浮かべた。
「ところで、レマノルト王国の宰相は長年マティムの栽培技術を欲しがっていて、それを叶えてくれる奴を探している。ここはカシュラ王国と違って、果物は野生のものを少し採る程度だから。だからマティムの輸入もカシュラ王国に依存していて、貴重な薬をつくるのに便利なあの果実が不作の時は悩みの種だったみたいなんだ。あんた、この国でマティム作れば?」
「レマノルトの宰相……? もしかしてアドレ、ヘイグリッドに僕のことを助けてくれるように頼んでくれたのか?」
「だから俺はレオルで、人違いだって言ってるだろ。あの人は知りたがりの早耳なんだ。だからあんたがカシュラの元王太子がいると騒いでいることをすでに把握していて、そんなあんたを迎え入れるって言ってるんだよ。宰相はマティムも欲しいし、後は監視とカシュラ王国との外交手札の一枚として手元に置いておく気なんだろうけど」
そう言われて私は、レオルが珍しく先ほどまで王都の方へ行ってきた理由が、この話をするためなのだと思い当たる。
確かにフロイデンがこっちの国にいれば、カシュラ王国にいるより安全そうだし、あんなにやりたがっていた果樹園がまた出来るものね。




