64・レオルは情に厚い
もしかして最近レオルが悩んでいたように見えたのは自分のことではなくて、フロイデンの置かれている状況を知って、彼のことを頼める人に相談していたのかもしれない。
レオルって結構情に厚いところ、あるもの。
「それで、うちの宰相閣下が、『ハーキス領でマティムの果樹園が出来るのなら、国籍問わず歓迎するから誰か探せ』って、明らかにあんたを俺に誘わせようとしてくるんだよ。どうする?」
「だけど、俺たちはどうなるんだ……?」
トムたちが不安そうに顔を見合わせていることに気づいて、レオルはにやりとする。
「あんたらも、坊ちゃんに言ってやれよ。一緒に果樹園やろうって」
そう声をかけられたのが嬉しかったらしく、男たちはぱっと笑顔になった。
「兄さん、俺たちを誘ってくれるなんて、最高に恩に着るぜ! 俺は兄さんについて行く覚悟を決めた!」
「俺もだ!」
「俺もあんたを兄さんだと認めた!」
「……に、兄さん?」
完全に戸惑っているレオルに気づかず、三人の男たちはさらに声を張り上げた。
「坊ちゃん! 俺たちでレマノルト王国一の果樹園を作って、最高に甘いマティムを食べようぜ!」
「そうだ! 俺が凍霜害なんかに負けねぇ強いやつを生み出してやる!」
「俺ぁハーキス領内に、おっきい恐竜博物館があるって聞いて、子どもの頃から憧れていた! 見に行きたい!」
威勢よく言い募る男たちに、フロイデンは瞳に涙を溜めたまま頷く。
「ありがとう、みんな」
「決まったな」
話がまとまると、レオルはそれぞれの顔を見ながら説明をする。
「明日の昼過ぎ、移住や果樹園についての話をする。話はもう宰相にもハーキス領主のオルドーにも通してあるから明日、オルドーの館へ来てくれ」
オルドー様の名前が出ると、男たちの表情が曇った。
「オルドーって、ここの領主だよな。宰相は、もっと偉いんだろ?」
「そんな偉い奴らがいるところに、俺たちも行っていいのか?」
「だけど俺たちが坊ちゃんを守らないと……」
緊張した様子で顔を見合わせる男たちに、レオルが軽い口ぶりで言う。
「とりあえず、あんたたちがオルドーと会う前にすることは、その泥遊びでもしたような体を洗って服を着替えることだ。出来ないのか?」
レオルが聞くと、男たちは「出来るぞ!」「するさ!!」「やってやるぜ!!!」と騒いでいるうちに笑い出し、いつの間にか明るい夜空に声が響き渡った。
「だけどあんたは、一番ひどいな」
レオルは羽織っていた長めの外套を脱ぐと、それをケーキのクリームと土だらけになっているフロイデンに渡す。
「そんな恰好で歩いているのが見つかったら、不審者として通報されても文句も言えないだろ。上着は買い替えようと思っていたし、返さなくていいから」




