62・何をすれば
「もしかして怖い姐さんが来たから、あの化け猫もチビって逃げ出したんじゃねぇか!?」
「確かにそうだな! 俺たちには姐さんがいる! もうあんな怨念猫怖くねぇよ!!」
どうやら納得してくれたらしい。
ただ一人、暗い顔をしたフロイデンは、私に向かって勢いよく地面に這いつくばる。
「姐さん、さっきはすまなかった! 僕は事実が許せなくて……だけどあの化け猫のように、ずっと許せないと言い続けるのは震え上がるほど恐ろしいことだとわかったよ!! 僕は悲しみに負けて、別の人が幸せになることを許せないと思っていたけれど、今は違う! あんな風に姐さんに危害を加えようとするなんて、本当に恥ずかしい奴だった!!」
経緯がよくわからないけれど、恐怖は人を内省させるのかしら。
そしていつの間にか、フロイデンも姐さん呼びになっているわ。
「あなたには、大切な人がいたのね」
フロイデンは顔を伏せたまま、わずかに頷いた。
「僕は、サリアのことがずっと忘れられなかったんだ。彼女が生き延びてくれていて、再会した時に彼女が困っていたら、僕が迎え入れる準備をしたいと願っていたけれど……。僕は事実を知ってしまうと、サリアと再会する夢が絶望に変わってしまって……姐さん、本当にすまなかった」
「さっきのことなら、美味しい罰を顔面に食らったでしょう? あの事は、それで終わりにしましょう。あなたは今自分を見失うほどつらいのだろうけど、これからは元気を取り戻す必要があるのだし。そこにいる三人のためにもね」
フロイデンの後ろにいた三人の男たちが飛び上がった。
「姐さん! 俺たちの気持ちまで汲んでくれて……ありがとう姐さん!」
「俺ぁ懐が深くて肝っ玉の強い姐さんにずっとついて行くぜ!」
「よくわからねぇけど、俺もあんたを姐さんだと認めた!」
私もよくわからないけれど、みんな顔つきが明るくなっているし良かったわ。
ただ一人、フロイデンを除いてだけど。
「姐さん、未熟な僕を励ましてくれて、本当にありがとう。だけど僕は……」
フロイデンの瞳に涙が浮かんだ。
「僕はサリアとの再会を夢見て今日まで必死にもがいてきたけれど、それが叶わないとはっきりわかってしまった。これからどうすれば、何をすればいいのか……」
レオルは星空を見上げて、ぽつりと言った。
「また果樹園やれば?」
「えっ」
「あんたの経営していた果樹園、マティムの実に力を入れていたんだろ?」
フロイデンは目をしばたかせる。
「アドレ、やっぱり覚えているのか? 君とサリアが遊びに来た時、一緒に果物を食べたり庭で遊んだこと……特にサリアはマティムの実が好きだったこと」
「何度も言っているけど、人違いだ。だから他人として忠告しておく。その名を軽々しく口にするのはやめたほうがいい。あんたのためにもな」
「僕のため?」




