48・先客
「……」
「当たり」
「何も言ってないわ」
「それなら、答え合わせするか」
「そんなこと言われたら、もう見れないのだけど!」
「見てよ」
「えっ、あ……」
レオルの憎らしいほど楽しげな微笑が近づいて来る。
な、何事!?
私はレオルの片腕にしがみついて、顔を隠すために額を押し付けた。
わわわわわわわっ!!!
わ?
……あら、自分から抱きしめるのは案外簡単だったわ。
*
馬車を置き、山の麓にあるコシマさんの質素な家のそばまで来ると、すぐ異変に気付いた。
複数の男性の荒っぽい声と、コシマさんの緊張した声が聞こえてきて、私たちは自然と早足になる。
「コシマさん、来たよ」
レオルは返事も聞かず扉を開くと、室内では数人の男たちがコシマさんを取り囲んでいて、ボリーが貴族風の青年に跳びついている。
その表情からはいつもの愛嬌が消えていて、血走った瞳をぎらつかせて牙を剥き出した姿は、襲い掛かろうとしている猛犬そのものだった。
「何しやがる、この犬っ!」
青年を助けようとした大柄の男が、がっしりとした腕を振り上げる。
私から目に見えない魔力の熱がほとばしると、ボリーとその男のわずかな隙間に、閃光のような眩さを感じる魔力暴発が弾けた。
ボリーと青年、そして大柄の男は後ろ向きに吹き飛ばされる。
ほぼ同時に、辺りの室内に置かれた物も風圧のような衝撃を受けて壁に当たった。
卓上に置かれていた紙が舞い落ちる中、反射的に受け身を取ったレオルだけがその場にいたけれど、それ以外の人は床に座り込んでうずくまっていた。
そのうちの一人、コシマさんは呆然と辺りを見回して、私とレオルに目を留めた。
「今のは……? レオルさんに、リシアさんも……」
ボリーは私たちに反応せず、伏せたまま低く呻って男たちを睨んでいるので、コシマさんが慌てて抱いて押さえる。
先ほどの暴発で吹き飛ばされた屈強そうな三人の男たちが、よろよろと起き上がった。
「坊ちゃん、大丈夫か?」
ボリーに跳びつかれていた、そこそこ値の張りそうな服を身にまとった青年が、信じられないものを見たかのように呆然と呟く。
「まさか今のは……魔力暴発、なのか?」
私はぎくりとしたけれど、他の三人の男たちが「なんだそれ?」と顔を見合わせているのに気づいて、青年は興奮気味にまくしたてた。
「初等科で習うだろ! 伝説の錬金術師、エドラン・ジェスティンのもう一つの力だよ!」
「ああ、しょとうかって甘いやつだったよな? それなら甘党の俺は気に入ったぜ!」
「れんきんじゅつし……何だそれ、流行りの詐欺師とか?」
「エドランだけわかった! 新種の恐竜の名前だ!」
「違う! 言っておくが、君たちが興味を持っていることから答えを探そうとするのは無謀だからな!!」




