再会?
ーー→
水月とトーマが塔にたどり着く少し前、別の場所に飛ばされていた一悟と白沢は途方に暮れていた。
「おい、どうなってんだこれ」
「あたしも分かんない」
先程から二人は歩いているが、同じ場所を歩いている。
「他のやつらも見つかんねえし」
「成瀬が何とかするんじゃない?」
「それはないな。」
水月と付き合いの長い一悟はきっぱりと言い切った。
「は?」
「あいつは俺達が何とかすると思ってる筈だ。」
「なんで?」
「何となくわかんだよ。それに俺もあいつの手は借りたくねえし。」
「あんた達本当気が合うわね。似てないくせに。」
友の顔を思い浮かべて笑う一悟に白沢は不思議そうに言った。
「わかってねえな。似てないから、なんだよ」
「ふーん」
「それに白沢だって水月と仲良いだろうが」
「え?」
突如慌てだした白沢に一悟は畳み掛ける。
「弁当まで作らせてただろ?」
「え!?あ、いや、あれは!」
「あれは?」
「なんでもないから」
この話は終わりだという様な台詞に、一悟も追及を止めた。こんなことしてる暇じゃねえ!と我にかえり、状況を打開する為の手段を考え出した。
「…取り敢えず状況を整理しよう。
一、俺たちはどっかに飛ばされた。
二、他の奴らもどっかに飛ばされた。
三、さっきから同じところを歩いてる。」
「つまりどういうこと?」
「うーん、今は三だけ考えりゃいいんだろ?」
「他を考えてもどうにもなんないしね。」
「そうだ!あれだ、空間が歪められてる的なのはどうだ!?」
「いい線いってるかも」
流石というべきか、一悟は持ち前の勘で正解に辿り着いた。この場に水月がいれば拍手でもしていたに違いない。
「で、どうする?水月みたいに空間は斬れねえぞ。」
「光魔法でどうにかなんないの?」
「……そもそも空間を斬るってのが分からん」
「成瀬は何か言ってなかったの?」
「あいつはあんま言わねえんだよな~。いや、一回だけ聞いたな」
「何て言ってた?」
「有るもので、無いものを意識するんだとさ」
「は?」
「俺もちんぷんかんぷんだ」
「あ!念力でやってみる」
「え?ああ任せた」
「ちょっと剣構えてて」
「了解!」
白沢は目を閉じて集中した。魔力を練り、準備を整える。そして目を開いた。
「念力」
白沢の目の前の空間が歪んでいく。だがまだ空間は裂けそうにない。
「佐藤!」
「おう!」
白沢が合図すると、一悟は剣を空間の歪みに降り下ろした。
パリンッ
二人の前には塔が姿を見せていた。
ー
二人が塔に着くと、既にエヴァンと森山が待っていた。
「あら、丁度ね」
「二人とも大丈夫だったかい?」
「ああ、何とかな。ところでエヴァンは空間を斬れたりするのか?」
「うん、大分体力を使うけどね。」
「まじか…」
「僕なんてまだまだだよ。ミヅキなんて息をするように出来てたからね。」
「あれはな。上級冒険者の肩書きは詐欺だよな」
「剣聖が一応極級らしいからね。それくらいは有るんだろうね」
「剣聖も冒険者だったのか」
「正確には違うかな。国や民のためになる事をするのが剣聖だから、冒険者でもあるし国直属でもあるね」
通常の冒険者は、国の直属ではない。
「そうか」
「じゃあ進みましょうか。塔にはあっさり入れるみたいだし」
四人は塔の中に入った。
円柱状の塔の内側に沿って設置された階段に、一同はうんざりした声を出した。
「これを登るのか…」
「ま、まあしかたないね。」
流石のエヴァンも嫌そうな顔をしている。
「じゃあ、行きましょうか。成瀬も先に行ってるだろうし」
ー
「あーやっと着いたか。」
「そうね」
階段を上がった先には一つの扉があった。
「いいか?開けるぞ」
一悟が扉を開く。
「おや?珍しいね。短い間に来客が二回あるなんて。」
そこには一人の老女がいた。その、額の皺の割には背筋の伸びた老女は興味深そうに一悟達を眺めた。
「ふーん、まだまだひよっ子だねえ。なんでここまで来れたんだい?結界があったはずだが…」
なにやら自分の世界に入り込んで行く老女に、エヴァンは意を決して話しかけた。
「あ、あの!」
「ん?なんだい?」
「僕はエヴァンで、王都で冒険者をしています。他の彼らは勇者です。あなたは賢者様でよろしいでしょうか」
「ああ、そうだよ。そう呼ばれているね。」
「お願いがあります!パナケアを分けてください!お金は払います!」
「ふーん、あの万能薬をかい?…」
そう言って賢者はエヴァンの顔をジロジロ眺めた。エヴァンは身を固くする。
「ま、いいだろう。」
「はい!」
「すぐに取ってくるから待ってるんだね。」
そう言って賢者は魔法陣を展開すると姿を消した。
「良かった……」
「良かったな、エヴァン。」
「うん、ありがとう!みんなのお陰だ。」
「みんなと言えば、成瀬はどこ?」
「先には来てないみたい」
「ま、大丈夫だろ」
一悟は信頼とも無責任とも言える発言をした。
「それよりよ、さっき賢者が使った魔法陣、見覚えがねえか?」
「森で飛ばされた魔法陣と似てたね。」
「じゃあ、やっぱりそういうことか」
「そういうことってどういうことさ?」
丁度帰ってきた賢者の耳は老人とは思えないほど鋭い。
「いやいや」
「まあいいや。はい、薬だよ。早く帰ってやんな。」
賢者は液体の入ったビンを手渡した。
「はい!ありがとうございます!悪いけど、僕は先に帰るよ。賢者様、失礼します。」
「まあ待ちなよ。家は王都かい?」
賢者は立ち去ろうとするエヴァンを引き留めると、家を確認した。
「え?はい」
「そうかい。じゃ、王都の入り口に飛ばすよ!」
エヴァンの返事を聞くことなく、賢者は魔法を発動した。
「え?うわわわわ」
魔法陣の光が治まったときには、エヴァンの姿は消えていた。
あまりの事態に一悟達は唖然とする。
「それじゃあ、そういうことって奴について話そうかね。」
「はあ…」
一悟達はまだ状況が飲み込めない。
「ま、座んな」
三人は勧められるがままに椅子に座る。
「さっき話してたのはこの森の魔法陣のことかい?」
「そうです」
「あれはあたしが仕掛けたんだよ。これでも賢者だからねえ。色々悪い奴が近づいてくんのさ。」
「空間をループさせたのも?」
「そうさね、どっちも自動で発動するから、あんた達も引っ掛かったろう?」
「はい」
「それはいいんだけどさ、分厚い結界がこの塔の周りに在ったろう?あんたらが束になっても破れないはずなんだけど…」
「結界?そんなんあったか?」
「さあ?無かったわよね。成瀬が破ったんじゃないの?」
そこまで聞いたところで賢者は聞き返す。
「もう一人いんのかい?」
「え?二人です。まだ来てませんか?水月っていうのとトーマっていうの」
「来てないねえ」
「変だな。あいつが遅れるなんて」
「ちょっちょっと待ちなよ!あんたら勇者って言ってたけど、水月!?」
「ええ」
一悟達は賢者の慌てようを不審に思う。
「もしかしてだけど、紅雪っていう刀持ってるかい?」
「え?なんで知ってるんです?」
「あたしは魔族に紅雪が奪われたって聞いたけど、まさかあいつが?」
「忘却とかで誤魔化してました」
「やっぱりか、なんであいつが今いるんだい!?千年も前の勇者が!」
賢者はなにがなんだか分からなくなっていた。それを聞いた一悟は腰を抜かす。
「まさか、水月と一緒に邪竜を討伐した仲間ですか?」
「そうだよ」
解らないものは解らない。開き直って落ち着きを取り戻した賢者は頷いた。
「あたしと、あと二人、もう死んじゃったけどね」
「ファーナシスの初代国王と、初代剣聖ですね?」
「水月から聞いたのかい?」
「はい、あの、何で賢者様はまだ生きてるんですか?」
「あたしは人間と竜の中間の種族なのさ。もうあたし意以外は滅んだけど」
「成る程~」
千歳か~想像もつかねえな。一悟は心の中でそう思った。
「で、あたしが聞きたいのは水月がここに来てから何をやらかしたかなんだ」
「あー、じゃあ俺が話します。」
一悟はこれまでの顛末を話して聞かせた。
ー
一通り話を聞いた後、賢者はこう言った。
「腕を切られたぁ?あり得ないね」
「魔王でも?」
「あたしもチラッと魔王の一人を見たけど、水月の足元にも及ばないね。むしろ魔王は水月の方が相応しいんじゃないかい?」
「まあ、それは…」
一悟達は否定できないところが辛かった。
「あいつ、全盛期より弱いかもしれないね」
「でも本人は大体戻ったって…」
「忘れてるんじゃないかい?忘却で。」
ああ~。そう三人が納得した時だった。部屋の扉が開いたのは。
まだ直してないんですが
·クラスメイトのステータスが無い
·白沢が固有魔法をほぼ使ってない
この二つを直します。ステータスについては書き足した物をまとめておきます。
·闘技大会の後、撤退する水谷と色欲に成瀬が「忘却」を使って成瀬のことを忘れさせるのを御飾りが忘れていた。
本当に申し訳ない。私のミスです。




