徒より詣でける
遅くなりまして…
「僕はあなた方を助けに来ました。」
そう言ったが、女性たちから何の反応もない。妖気がいけないのか?僕は紅雪を鞘に納め更に腰も低くしてもう一度言う。
「あ、あのー助けに来たんですけど」
「………」
僕は困った。状況が理解出来ないのかなんなのか、このままでは会話できそうにない。
もう一度口を開こうとしたとき、前に進み出た一人が反応してくれた。
「本当に盗賊ではないのですか?」
「僕が盗賊に見えますか?」
これは僕の純粋な疑問だ。
「盗賊か、じゃなかったらもっとタチの悪いものかと。例えば殺人鬼とか…」
「そ、そんなわけないじゃあないですか」
鋭い。称号に殺人鬼とあるので若干慌ててしまう。
「…いや、その見張りを切り刻んでニコッとしたときには殺されるかと思いました。」
「うっ…すみません。まあともかく、外に出ましょう。全員歩けますか?」
「ええ、大丈夫です。」
「じゃあこの洞窟の外で待ってて下さい。」
「え?あなたは?」
「勿論、洞窟の清掃をしに。あ、洞窟の外に刀があるので護身用に使ってください。」
「わ、わたしも連れていって下さい!」
「へ?」
「腕には多少の覚えがあります。ここにいるみんなの仇を討ちたいんです!」
「…分かりましたよ、ナイフでいいですか?」
あまりに真剣な目をしていたので、連れていくことにした。とりえあえず暗器として持っていたナイフを渡す。
「じゃあ、いきますか」
女性達が洞窟を出ていくのを見送ると、僕たちは奥へと進んだ。歩きながら、付いてきた女性は話始めた。
「わたしはサラといいます。ここでなにをされたかは想像がついているでしょうが、ここに来る以前は冒険者でした。」
「……」
「わたしは商人の護衛で、パーティーの仲間とこの洞窟の近くを通りかかりました。そして盗賊に襲撃され、仲間と商人は全員殺され、私だけが生かされて、ここにつれてこられました。ここにいる女たちは、盗賊の慰みものにされたり、奴隷商人に売られたりするのです。」
「………」
「わたしは殺された仲間の仇を討つため、わたしの誇りを取り戻すために戦いたいんです!って聞いてます?」
「ええ、勿論。」
どう返事をしていいものか迷っていただけで聞いてないわけではない。
「兎に角、盗賊を殺したいってことですよね?」
「はしょりすぎです。」
「…腕に覚えがあるとか言ってましたけど、盗賊に一回やられてるんですよね?」
さっきから気になっていたことを聞く。
「くっ…それでも!一対一なら!」
「舐めてるんですか?死んでも知りませんよ?」
あまりにも殺し合いを甘く見た発言をするので、僕はすこし殺気を放つ。
「うっ…くっ!」
「はあ~、仕方ない。面倒だけど手伝いますよ。流石に助けた直後に死なれるのは気分が悪い。」
「……はい。」
結局は僕もお人好しのようだ。そんなことを思っていると、目的の場所についた。
「ーッ気配がします。準備は良いですか?」
洞窟のなかに突然扉が現れた。この奥から気配がする。
「ショウタイムだ。」
「え?」
…言ってみたかったんだ。
僕は扉を蹴破った。もくもくと砂煙が立ち上る。
「誰だ!」
「ただの学生さ。」
心にもないことを、僕は言う。
「お前ら!やれ!」
奥にいた男が指示を出した。成る程、あいつが頭か。
「死ねぇ!」
左右から切りかかってくる盗賊を切り捨てる。僕は動揺する暇もあたえずに周りの奴らも斬った。
「これだから盗賊は嫌なんだ。まるで手応えがない。」
もっと真面目にやれよ、と言いたくなる。
「あ、あの…」
「ああ、死なない程度に頑張って下さい。」
僕はそう言いながら、盗賊のなかでも弱そうなのを見繕い、わざと見逃してサラさんと戦わせるようにした。
「死にたくなきゃ掛かってきなよ。もしかしたら、生き残れるかもしれないぜ?」
僕はニヤリとしながら挑発した。
ー
「てめえ!殺してやる!」
僕が挑発すると、盗賊は直ぐに乗ってきた。
「残念♪」
僕は躊躇なく首を飛ばす。
「こいつ、強ええ!」
「化物か!?」
「生憎人間だ。一寸強いだけのね。」
地面を蹴り、盗賊の頭との距離を一瞬で詰める。首もとに紅雪を突きつけた。
「チッやっぱ化物だぜ、お前」
「お前の負けだ。」
「そうだな。だが俺が死んでもコイツらは抵抗するぜ?」
「へえ」
「手柄を立てれば次の頭になれるからな。」
「安心しな。全員殺す。」
「そうかよ」
「いまだ!頭もろとも殺っちまえ!」
一度は動きを止めた盗賊どもが背後から再び飛びかかってきた。
「絶」
僕は円を描くように紅雪を振る。全員が首を失い、切断面から紅い雪を降らせた。
僕はただ一人殺さなかった頭を振り向く。
「なんで殺さなかった!」
「騎士に引き渡す。きっと今死んどけば良かったって思うだろうね。」
「チッ」
楽には死ねないだろう。
観念して動かない頭をそのままにし、僕はへたりこんでいるサラさんに歩み寄る。
「はあッ、はあッ」
「大丈夫ですか?」
「はい…あなたが最後倒していもらいましたが」
サラさんと戦わせるようにした盗賊は先程の「絶」で死んだ。
「ま、無事で良かったです。行きましょうか」
僕は頭を立たせると、洞窟の外へ向かった。
ー
外に出ると、逃がした女性達が待っていた。
改めて数えてみると、13人いた。僕は一悟達の気配を探る。
「こっちか。じゃあ着いてきてください。」
僕は馬車の方向に歩き出した。途中で鴉を返されたのでそれで邪魔な木を切り払った。紅雪は既に仕舞ってある。馬車の目の前につくと、一悟達が出てきた。
「お、無事だったか。って誰だ?その人達は!?」
「捕まってたから助けた。ああ、あとこれも」
そう言って引きずってきた盗賊の頭を見せる。
「お土産感覚で盗賊の首見せんなよ!まあいいや。で、どうすんだ?俺らはこれから賢者に会いに行くんだぞ?」
首を見てからの切り替えが早いところをみると、一悟も大分この世界に慣れたらしい。
「うん、馬車を譲ろうかと」
「だよなあ、ったくしゃあねえ」
必然的に僕達は歩きになるわけだが。
「仕方ないわね」
「そうだね」
僕は御者さんにお金を渡した。
「これで王都までおねがいします。」
「あいよ、毎度あり!」
「じゃあ皆さん乗って下さい。」
「本当にありがとうございます!」
全員が乗り込み、最後にサラさんが礼を言ってくれた。
「いえいえ、あ、王都に着いたらギルドに行ってギルドマスターにこれを渡してください。」
僕は紙とペンを取り出して手紙を書いて渡した。
「何から何まで…なんとお礼を言えばいいか…」
「馬車を出すぞー!」
「はい!では、また」
「ええ、お気をつけて」
僕達は遠ざかる馬車に手を振って見送った。




