剣の高み
だらだらと闘技大会を続けていましたが、次回で終わりです。
闘技大会のだらだら具合は順次修正していきます。
『ついに決勝だぁーッ!!剣聖・ケヴィンとスイゲツ!どちらが勝つのか!?』
数分の休憩で、先程の試合の疲れは全く気にならない程度になっている。僕は狐面をつけ直すと、開始の合図を待った。
『始めッ!』
僕たちはぶつかり合った。
銀色の剣と黒の刀がかち合い火花を散らす。僕はすぐに刀をずらすと、再度振るった。それも紙一重で防がれる。
「おいおい、手練れだとは思ったがそこまでかよ!」
ケヴィンが驚いているが、それは僕も同じだ。僕が本気ではないとはいえ、これを防ぐとは。先祖であり、初代剣聖のディランには劣るものの、これまであった者達とは一線を画している。
「随分舐めてたみたいだね」
ギアをもう1段階あげると、僕は再び刀を振るった。
ーー→
「まじか、まったく見えねぇよ」
観客席では、一吾が目の前の試合に圧倒されていた。
隣ではフェイスとエヴァンも観戦していて、同じく唖然としている。
「速すぎる!僕じゃ見えない」
「私もギリギリ見えるくらいだ」
試合場でぶつかり合う二人は、手練れの者達でさえ視認出来ないスピードで動いていた。
一吾にもほとんど見えないが、かろうじて飛び散る火花や轟音から、相当激しい戦いが行われていることがわかった。
「何者なんだ、スイゲツは……」
「スイゲツと知り合いなんじゃないのか?」
エヴァンの呟きに、答えは知っているが、一吾は質問する。
「うん、僕は闘技大会の予選で初めて会ったんだ」
「私もだ。どれだけ強いのかと思っていたが、予想以上だ」
「へぇ」
一吾は試合前の水月の言葉を思い出す。
「ま、剣の高みって奴を見せてあげよう」
不遜にニヤリ笑った友はそう言っていた。
「見えねぇじゃねえか」
いつかは追いつこうとは思っているが、現時点での水月との実力差はとてつもなく大きい。
「何!?さらにスピードが上がったぞ!もう私でも見えない」
「なんなんだ」
姿は見えなくても、長い付き合いから、一吾には水月の考えがわかった。
「やってるうちに楽しくなりやがったな?」
「え?なんか言った?」
「いや、なんでもない」
どうせ仮面の下にはニヤついたか顔があるんだろうと想像し、一吾は呆れていた。
←ーー
「はっ!おもしれえ!」
言葉と裏腹にケヴィンはそこで表情を引き締めた。
僕は攻撃の手を緩めず、追い詰める。
ケヴィンは攻撃の僅かな隙を見つけると、一旦距離を取ろうと、僕を弾き飛ばした。
不意に、ケヴィンがこちらに手のひらを向けてきた。
僕は咄嗟に後ろに下がる。
「えっ?」
唐突に視界が明るくなり、一瞬訳が分からなくなる。
下に目をやると、仮面が真っ二つになり、落ちているのが見えた。
「やばっ。まさか斬気まで使えるとは」
顔を晒してしまった以上、騒ぎになるのは間違いないな。
「な!?お前、勇者の一人じゃねぇか!」
早速ケヴィンが驚いている。観客達も、がやがやとし始めた。
「ま、いいや。お前、斬気知ってんのかよ。何者だよ?」
しかし、ケヴィンは余り気にしないことにしたようで、そう問うてくる。観客達は騒いでいるが。ま、いいや。後で忘却使っておけば問題ない。そんなことより、今はこの戦いだ。この男には本当の名を名乗りたくなってきた。
「成瀬水月。」
「剣聖・ケヴィン。」
僕が名乗ると、ケヴィンも名乗った。
「伝説の勇者と名前が同じなのは偶然か?」
剣聖の家系には僕の名前が伝わっていたようで、ケヴィンは半信半疑といった様子で質問してきた。
国王は知らないようだが、剣聖は知ってたか。
「さあね」
「そうかよ。この大会は招待されたから取り敢えず出たんだが、まさかお前みたいな化け物がいるとはな」
「失礼な。化け物は君もだろうに」
「まあいいや、本気でいくぜ!」
ケヴィンは剣を投げ捨てた。僕は何が起こるかわかったので、ついニヤリとしてしまった。
「来い!エルキュール!」
ケヴィンの横の空間が歪み、ケヴィンはそこに手を突っ込んだ。そして手を引き抜くと、その手には一振りの剣が握られていた。
「初代剣聖の頃から伝わる宝剣だ。いくぜ!」
ディランもあの剣を使っていた。「聖剣召喚」の固有魔法によって呼び出せるエルキュールは「巨大化」を持っている。
先程よりも数段速くなったケヴィンは僕の目の前に現れ、剣を振り下ろしてきた。僕は受けずに横にずれて避けた。剣は振り下らされた瞬間、巨大化して地面に大きな溝を残した。
「よくわかったな!」
「まあ、知ってたからね」
そう言って僕も反撃に出た。
なんども剣を交わし、斬気を放ちあっているが、決定打はない。僕は鴉を鞘に収める。
「何する気だ?」
「鞘の内、つまり居合いさ。」
少し腰を捻り、片膝を立て、柄に手をかける。
「お?知ってるぜ。その構え」
そう言ってケヴィンは大上段に剣を構えた。
「奇遇だな。僕も知ってるよ、その構え」
見慣れた剣聖の技だ。
一瞬の静寂の後、僕達は動いた。
ガキィィィンッ!
刀と巨大化した剣がぶつかり合い、凄まじい衝撃波を生んだ。観客席と試合場の間に張ってある結界がバチバチと悲鳴を上げる。
「うおおおおおお!」
「はあぁぁッ!」
この競り合いが勝敗を分ける。
そう直感でわかった。僕は全力で力を込める。
刀が軽くなった。
僕はそのまま鴉を張りきった。
ケヴィンが吹っ飛んでいくのが見える。
勝った……!
いつの間にか試合に魅入っていた観客達は、思い出したかのように歓声を上げた。僕は真っ二つになった狐面を拾い、なんとか合わせると、顔に当てた。
「忘却」を発動する。なにを忘れたのかも忘れた観客達は、変わらず歓声を上げていた。これで仮面が取れたのはなかったことになったはずだ。
『勝者!スイゲツゥゥゥゥッ!なんと!剣聖を下し、優勝したのは正体不明の男だぁーッ!』
「「うおおおおおおおッ!!」」
やりきった。文句なしの優勝だ。
僕は片手を上げると、歓声に応えた。




