やばっ
小竜のブレスに僕は異変を感じた。
小竜のブレスは火なのだが、この小竜は何か違う。
「白沢、障壁」
「わかってる!」
白沢が障壁を張ったこと、小竜がブレスを吐いたのは同時だった。
なにが起こる?僕は一応紅雪を呼び出して待機する。
「ゴオオオオッ」
「やばっ」
白沢の障壁が砕けた。僕は咄嗟に白沢の前に出て、金陣を張ってみる。
パリンッ
またしても砕けた。
「さらにやばっ」
ブレスは僕に迫っている。まずいな、白沢は僕の後ろにいる。このままでは共倒れだ。
白沢が絶望した目で僕の背中を見ているのがわかる。
僕は白沢を抱え上げると、そのまま上に跳んだ。
間一髪、下をブレスが通り抜けた。やはり何かがおかしい。
「白沢、あとは僕がやる」
白沢が少し離れた。
「できれば原型はとどめて置きたいな」
「グオオオオオッ!」
小竜が突進してくる。こういう得体の知れないヤツはとっとと倒すに限る。僕はすれ違いに首を落とした。
「あのブレスはなんなんだ?」
「剛腕の持ってた魔法無効の薬に似てたけど」
「そうなんだよ、あの感じは魔法無効だと思う。けどなんで小竜のブレスが?」
「ギルドに報告しといた方がいいんじゃない?」
「そうだね」
ひとまず僕達はギルドに帰ることにした。
ー
「お帰りなさい、依頼達成ですね?これでナルセさんは上級冒険者です!」
「ありがとうございます。ところでギルドマスターと話せますか?」
「はい、ナルセさんが話したいと言ったらすぐ通すように言われてます」
僕達は別室へ案内された。
「おう、帰ったか」
「ええ、報告があります」
「ほう?」
僕は小竜の異変について話した。
「それで、魔法無効のブレスを吐く小竜なんていなかったと思うんですが、そんなのいますか?」
「今の時代にもそんなのはいねぇよ」
「え?成瀬、バレてんの?」
「今の時代」という言葉に耳ざとく反応した白沢が聞いてくる。そういえばロバートさんが知ってるということをみんなに話してなかったな。
「あ?バレてんのか、ナルセ」
あ、そういえば千年前の勇者だってバラした時、みんなを退室させてくれてたんだったな。
「あいつらを先に帰らせた意味ねぇじゃねぇか」
なんか申し訳ない。
「とにかく、魔物に魔族の薬が投与されてるかも知れません」
話を無理やり戻してみた。
「そうだな、最近不自然に魔物が増えてやがるんだ。魔族がなんかしてんのかもな」
「そうなると、原因を止めるのは難しそうですね」
「ああ、奴ら尻尾を出しやがらねぇからな。」
後手後手に回ってしまうのは癪だが、そうするしか無い。
「ギルドに情報が来たらすぐに連絡をください。」
そういってギルドを出た。
ーー→
「あら、やられちゃったわぁ」
暗闇の中、女の声が響く。
「まあいいだろう。実験は成功だ。」
男の声もする。二人の視線の先には成瀬と白沢が小竜と戦っている映像が浮かんでいた。他にも勇者達の映像が浮かんでいる。
「前に送ったオーガも倒されちゃったしぃ、計画の時まで待つしかないかしらぁ?」
「アレの準備は出来たのか?」
「ええ、そろそろできるわぁ、暴走しがちだけどぉ」
「計画の時までに制御できるようにしておけ」
「わかったわぁ」
二人は頷きあう。
「それにしても、活きが良さそうなのがいるわねぇ、可愛がってあげようかしらぁ?」
女は、一人の男の映像を撫でる。
「遊びすぎて壊すなよ?」
「わかってるわぁ、加減は心得てるものぉ」
「ならいい」
「うふふ、楽しみだわぁ」
「ふっ手応えがあるといいな」
暗闇に二人の嗤い声が、響いた。
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