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感覚派め


「眠い」

「ほれ、早く歩けっ」


僕は今日も無理矢理起こされ、ギルドへ向かっている。


「僕はだんだん森山の魔法の威力が上がっているので、いつか殺されるんじゃないかと思っている」

「お前毎回森山に起こされてるよな」

「大分バイオレンスなやり方でね」


寝ている人に魔法をぶっ放すのはモーニングコールと呼べるだろうか。


「一人暮らしの時どうしてたんだよ」

「弁当作らないと白沢がすごい目で見てくるから気合いで起きてた」

「ああ」


白沢の冷たい目は本当に辛い。自分がゴミなのかと錯覚してしまう程だ。


「そうだ、聞き忘れてたけど、今日教えてくれる人はどんな人?」

「話してなかったか、カルロスさんっつってな、ベテランの冒険者だ。ランクは特級だよ」

「へぇ、凄いな。特級ってそう何人もいないんだろ?」

「だよな!そんな凄い人に教えてもらえるなんて運がいいぜ!」


一吾の顔の広さには驚きだ。それにしても、どれくらい強いのだろうか。現役時代に極級だったギルドマスターのロバートさんが言うには、特級と極級には結構差があるらしいが。


「良い人だといいね」

「それは大丈夫だ。豪快ないい男だからな」


なんかゴードンさんやロバートさんを思い出すな。

ロバートさんは歳をとって少し老獪さも備えているけど。


「よし、やるぞ!」


そう言って一吾は、ギルドの扉に手をかける。

む?なんか中に妙な気配が……


「よく来たなー!あっはっはっは!」

「ぎゃー!」


扉を開けた途端、飛び出して来たゴリマッチョな男が一吾にヘッドロックをきめていた。


「えーと、こんにちは、成瀬です。カルロスさんですか?」

「そうだ!俺がカルロスだ!よろしくな!ミヅキ!ハッハッハッハ!」


訂正しよう。豪快ではなく、暑苦しい、だ。

そしてなんで僕の下の名前を知っている。


「ちょっ、助けて…」


教えたの多分君だよな、一吾君。教えたのはいいんだけど、なんかムカつくから助けないぞ。


「ハッハッハッハ!イチゴ!ミヅキ!今日からバシバシ鍛えてやるからな!ハッハッハッハ!」


帰りたくなって来た。



僕達はなんの依頼も受けず、荒地に来ていた。荒地の奥には森があるが、今は余程の実力者以外、立ち入り禁止になっている。カルロスさんによると、森を半壊させる程の魔物が住み着いた可能性があるので調査中になっているそうだ。

ギルドに森が半壊していると通報があり、まさか僕個人があれをやったと公表するわけにはいかないので、何も出ないとわかっていても調査中ということにしているらしい。恨めしそうな顔でロバートさんが言っていたのを思い出す。仕事を増やしてしまい、非常に申し訳なく思っている。


「ん?ミヅキ、どうしたんだ?森が封鎖中で冒険者の基本を学べないのが悲しいのか?ハッハッハ!心配無用!今度また教えてやろう!」


僕が森の方を眺めていると、カルロスさんが声をかけてくる。


「そうだぜミヅキ!今は身体強化魔法を習得しようぜ!」


なんでお前までカタコトで水月を発音してんの?


「よし!やるぞ!いいか!身体強化魔法はな、こんな感じでバッとやってカッて感じだ!ハッハッハッハ!簡単だろう!?」


カルロスさんの足元に赤い魔法陣が展開される。

確かに膂力が増大しているようだ。

しかし、説明がわかりにくい。感覚派か、この人…


「わかりました!やってみます!」


すぐに一吾は足元を魔法陣に展開する。お前も感覚派か。


「ん?ミヅキはわからないのか?もう一回やってやろう!」


そう言ってカルロスさんは再び身体強化魔法を発動させる。僕は魔法陣を注視してなんとか構成を理解した。この魔法は僕でもそこそこ使用出来そうだ。


「こうですか?」


早速発動させてみる。


「完璧だ!ハッハッハ!優秀だな、お前ら!他の奴らは教えてもできないぞ!」


それはカルロスさんの教え方が下手だからじゃ……


「よし、じゃあ次は使う魔力を増やしてみろ!そうすれば強化倍率が上がるぞ!これを効率よく、極限までやると、」


カルロスさんが地面を殴ると、大きなクレーターができた。

剛腕と渡り合えそうだなこの人。少なくともパワーなら同格かそれ以上だ。


成る程、特級で魔将と同じくらいか。魔将の下には魔兵がいるらしいが、それは上級くらいだろう。そう考えると魔族は強いな。一般兵で上級と同じくらいとは…


僕がそんなことを考えていると、一吾がカルロスさんの真似をしていた。


「こうか?」


ドッ


地面には何も起きなかった。


「いってぇー!」

「ハッハッハ!そりゃそうだ!使う魔力がたりてないぞ!そうだ!ミヅキもやってみろ!」

「え?僕ですか?」

「そーだ!そーだ!俺が痛い思いをしたのにお前がしないなんてずるいぞ!」


一吾のは自業自得だと思う。でも仕方ない、やってみるか。


「ほっ」


ドゴォォン!


「………」


カルロスさんよりも一回り小さいクレーターができた。あんまり魔力は使用してないんだけど…あ、素の僕の力が強いのか。これでも抑えたんだけどなあ…


「ハッハッハッハ!凄いぞミヅキ!」

「そんな気はしてたけどな」


うん、カルロスさんがあまり怪しんでいないのでよしとしよう。


「よし!お前ら!俺はこれからしばらく用事があるから、二人で練習しててくれ!森が解禁されたら冒険者の基本を教えてやる!」

「はい!」

「はい」


カルロスさんは颯爽と帰っていった。

なんか今日は疲れたな。帰ろ。



その日の夜、僕は自分の部屋で魔法を試していた。


「ここをいじって、こうすれば…」


僕の足元に青い魔法陣が展開される。


「ウィークネス」


身体が重くなったように感じ、膂力が落ちているのがわかる。

よし!成功だ。

実は帰った後、身体強化魔法の構成が気になったのでいじってみると、反対の効果をもたらす魔法ができそうだったので、色々試行錯誤していたのだ。

魔法の苦手な僕にそんなことができるのか?できる。

金色防御魔法陣を作ったのも僕なのだ。


そしてようやくできた。

相手を弱体化させるというのは結構使い道がありそうだ。これは成瀬水月として戦う時にも使えるだろう。


僕は満足して眠りについた。

後日、図書館の本でウィークネスを見つけた。くそったれ。

ブックマークやアクセス数が増え、地に足がつかない感じもあります。

しかし非常にありがたいことです。

これからもよろしくお願いします。

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