表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
29/96

番外 部活の道具は喧嘩につかわない。

ほんの一瞬寝てました…

番外編だけですみません


これは成瀬が中二の時の話だ。つまり異世界に行く前のこと。



成瀬はこの日、部活がなかったので隣町のゲームセンターへ来ていた。あまり行きそうに見えないが、実はこの男、最近コインゲームにはまっている。ジャラジャラと音を立てて貯まっていくコインを見てニヤついていた。


「ふふふ」


成瀬はコインの輪廻におちいっていた。


「さて、今日で1万枚いくかな?」


ここのコイン最大保持者になるべく、成瀬は暇を見つけてはここに通っていた。最近のライバルはトメさんだ。老後をゲームセンターに捧げているトメさんは、成瀬の良きライバルとなっている。といっても成瀬はそこまでゲームセンターに通えていないので、トメさんがいつもリードしているが。


「っと、トイレ行ってくるか」


成瀬は一旦ゲームをやめ、用を足しに席を立った。

しかしそこで成瀬は、割と後を引く面倒ごとに関わることになった。



成瀬がトイレに行くと、その近くには不良五人と、それにカツアゲされているらしき学生がいた。制服を見るに、不良はここ周辺の学校の生徒、カツアゲされている方は不良の学校とは違うがこれまた周辺の学校の生徒らしい。成瀬はトイレに行きたかったのでこの時はスルーした。



「おいおい!金ねぇのかよ!」

「えっ、いや、ごめん」

「ごめんなさいだろォがくそがぁ!」


トイレから出て、聞こえた耳障りな声に成瀬は顔をしかめる。


「何やってるの?」


思わず話しかけてしまった。正義感からではない。トメさんとの差が縮まらない鬱憤からだ。


「ああ?なんのようだ?」

「いや、何をしているのか聞こうと思って」

「文句あんのかよ?ああ?」


ひ弱そうに見える成瀬を、不良達は舐めきっていた。金づるがもう一人来た、くらいの認識だろう。


「文句っていうか、質問?」


まあ、文句があるにはあるけど、そう成瀬は心の中で呟く。


「てめぇ!舐めてんのかよ?あ!もしかしてこいつの知り合いか?」

「全然」

「「えぇ……?」」


きっぱり言い切った成瀬に、不良達だけでなくカツアゲされていた学生まで唖然とした。


「いや、だから、そこの学生とはなんの関わりもないんだって」

「えっ、助けて?」

「カツアゲは良くないな」


本当はゲームセンターで好き勝手されて気に食わないだけである。


「あ?やんのかてmぐわっ」


成瀬はいきなり不良の一人を殴る。不良は倒れ込んだ。


「おい!大丈夫か!」

「隙あり♪」

「ぶあっ」


心配して倒れた仲間の元にしゃがんだ不良へ蹴りを食らわす。その手口はだいぶ手馴れていた。


「お、おい。こいつやべーぞ!」

「うるさいな」

「うがっ」

「ぎゃっ」


不良達は全員床に倒れ込んだ。成瀬がおどけて声をかける。


「床に落ちてるコインでも探してるの?行儀わるいねぇ」

「くそっ、覚えてろよ!」


不良達は逃げ帰って行った。


「あ、ありがとう」

「いやいや、気にしないで。お、ジャックポットの気配がする」

「あ、うん」


成瀬は足早に立ち去った。



次の日の部活の帰り、成瀬は一吾と並んで歩いていた。空は既に暗くなり、街灯が道を照らしている。


「そう言えば、そろそろ定期テストじゃねぇか!」

「言われてみれば」

「生まれ変わったら帰国子女になりてぇー」

「英語は楽勝になりそうだよね」

「そうなんだよなぁー」


どうしようもないことを話しながら、二人が更に暗く細い道に差し掛かったその時ーー


「おいおい、どこいくんだよ?」

「昨日のことを忘れたとは言わせねぇぞ!」


成瀬は聞き覚えのある声に、顔をしかめる。


「わざわざ隣町まで何の用?」

「昨日のお返しをたっぷりしてやろうと思ってな。お前の為にこんなに集まってくれたんだぜ?」


ぞろぞろと柄の悪い学生達が現れた。


「遠慮しとくよ。僕は帰る」

「おいおい、つれねぇこと言うなよ」


そう言って不良の一人が水月の腕を抑える。二人はいつの間にか囲まれていた。


「お、おい水月、ヤベェんじゃねぇの?何やったんだよ」

「何って、ゲームセンターで騒いでいたからシメただけだよ」

「お前の物騒な一面を垣間見た気がしたぜ」

「そんなこと言いながら一吾だってやる気満々じゃないか」


一吾は目をぎらつかせて不良達を見ていた。はやくも腕まくりをしている。


「お?やんのか?武器使ってもいいんだぜ?」


二人は部活帰りなので背中には竹刀を入れた鞄がある。


「喧嘩に部活の道具は使わないよ」

「カッコつけやがって!やっちまえ!」


不良達は二人へ襲いかかる。


「ところで水月、お前喧嘩できんの?」

「まあそこそこは」


一吾の質問に、成瀬は不良に蹴りを入れることで答えた。


「手慣れてんな……」


蹴りの鋭さに呆れながら一吾も不良を殴り飛ばす。


「お互い様だろ?」


確かにそうだ、二人は軽口を叩き合いながら不良を沈めていく。


「こいつら強ぇぞ!あれ使っちまえ!」

「おう!」

「何する気なんだろう。」

「刃物とかか?」

「当ったりー!おらァ!」

「チッ!」


ナイフやカッターを取り出して襲いかかる不良達に、一吾は攻めあぐねている。


「なら僕もこれを使おう。」


そう言って成瀬は竹刀の鞄に手をかける。


「あ?部活の道具は使わないんじゃねぇのかよ?」

「そうだけど」


そう言いながら成瀬が取り出したのは、


「それ金属バットじゃねぇーか、水月!」


銀色に輝く金属バットだった。


「野球部に借りてきた」


ドゴン!バキッ!と成瀬は躊躇なく不良達を殴り始めた。相手が刃物を持っていることなんて歯牙にもかけていない。実際、不良達は近づく前にやられていた。


「ぐわっ」

「ぎゃっ」

「えげつねぇ!いつの間にそんなの持ってたんだよ」


どちらが不良かわかったものでは無い


「いや、今日あたりにお礼参りがあるかと思って、準備してたんだ。友達が赤いバットが欲しいって言ってたから、ペイントしてあげるって言ったら貸してくれたよ」


淡々と不良を片付けていく成瀬に、一吾はふと気づいたことを言う。


「それって、俺が巻き込まれるとわかってただろ!」

「え?いや、まあ、一吾なら楽勝かなって」

「きついわ!先に帰ってて、とか言えよ!」

「えーと、先に帰ってて?」

「無理だろォォォ!遅いんだよ!もっと早い段階で言えよ!」

「僕が血路を開く!そこから一吾は逃げるんだ!」

「何事もなかったかのようにいい奴ぶってんじゃねーよ!」

「くっ、僕が時間を稼ぐ!今のうちに一吾は逃げるんだ!」

「テイクツー!?意味わかんねぇから!後、くっ、てなんだよ、お前全くやられてねぇだろうが!」


二人がギャグのようなやりとりを続けながら不良を片付けていると、とうとう残りは一人になった。


「お返しはこれで終わり?」


成瀬が赤いペイント済みのバットを突きつけた。


「チッ、勝てねぇ!先輩、お願いします!」


残った不良は後ろに声を掛けた。


「全く、中坊の喧嘩に高校生を巻き込むんじゃねーよ。しかもあいつらパンピーじゃねぇのか?」


ガタイのいい男が現れた。制服を見るに地元の高校生だ。


「先輩も見てたじゃないっすか!やばいんすよあいつら!」

「まあ、確かにあっちの弱そうなのはやばいな。躊躇がねぇ。手加減を完璧にできてるっつう自信の表れかもな。相当慣れてやがる」

「中坊の喧嘩に首突っ込まないでくださいよ、先輩」


成瀬がここで会話に入る。


「そうはいかねぇな、俺も舎弟がやられて黙ってる訳にはいかねぇんだ。」

「仕方ない。一吾、やろうか」

「え?ここはタイマンの流れじゃないのか?」


成瀬のセリフに、一吾だけではなく相手の二人も唖然している。


「だってあっちの方が明らかに強そうじゃないか。ほら、構えがボクシングだ。」

「あ、確かにな、俺たちまだ中坊だもんな!」


二人は同時に走り出した。まず一吾が殴りかかる。


「らあぁ!」

「おらっ!甘いぜぇ!」

「ぐはっ」


流石に敵わず、殴られる。

成瀬もそれに続き、バットを振った。


「っあぶねぇ」


それも軽く避けられる。


「当たんないね。一吾、このパンチ耐えれる?」


成瀬の問いの意味を察した一吾は抗議する。


「無理無理!俺にはできねぇぞ!」

「やってみないとわからない」

「は?おいおい水月クン?」

「ま、頼むよ。ご飯おごるからさ」

「軽いわ!」

「英語教えてあげる」

「……くっそがァァ!」


一吾は高校生に突っ込んで行く。


「何回来ても同じだぁ!」

「くそったれぇ!」

「なんだと!?」


殴られ、一瞬怯むも、一吾は抱きつき、高校生の動きを封じた。


「ご苦労さんっと!」


そこへ成瀬が金属バットを振り下ろした。高校生は気絶して倒れた。


「なんとかなったね」

「くっそ痛え!」

「あとは」


そう言って成瀬は残った不良の方を向く。


「赤いペンキ持ってる?」

「ひっ」


残った不良は成瀬の恐ろしげな様子に逃げ出した。


「おい!待て!……ぐぅ、くそっ」


一吾が追おうとするが、先程殴られたところが痛み、足を止めた。


「じゃあな!覚えてやがr……」


鈍い音がして、逃げ出した不良は地面にのびた。

一吾が横を向くと、バットを投げた体勢の成瀬がいた。


「ほんと、えげつねぇよな、お前」


しみじみと一吾は呟いた。



後日、不良達はゲームセンターにいる水月のところまで謝りに来た。カツアゲされていた中学生も改めてお礼を言いに来ていた。

ちょうどかちあったので、不良達はカツアゲされていた中学生にも謝り、これからはこんなことしないと誓った。


「一件落着だなぁ」

「どこが?」


傷だらけの不良たちを見て、トメさんは呟いた。


この、不良達に謝られる光景を目撃した者から不良の親玉と間違えられたのはまた別の話だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ