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魔法想花の小さな庭園  作者: 流水一
新章ー大陸を歩くー『精霊の住み処』
99/105

『忘れてましたね?』

おひさしぶりです、ごめんなさい。

やっと時間がとれたのでー精神的余裕とか色々ー投稿します。

他も随時頑張ります。


「いい加減にやめるのだぞ、意識がない盗賊を街まで運ばなければならないんだぞ?」

「ちっ......げぇ、よ奴隷しょう、だ......」


シユウさんが、文字通りに自在に飛び回るアクセルさんとアサギリさんに呆れた声を挙げました。

近くで縛られていた奴隷商のお頭が、シユウさんの台詞に訂正しようとしましたが、息も絶え絶えですね。


「あ、さぎっ、のわぁぁぁ!? あっぶないですね!!」

「ちっ......よく避けますわ、その行動も目立って勘に触りますわねぇ!」

「意味不明ですよ!リーダーが呼んでるのでやめましょう? と言いますか、途中から本気じゃないですか!なんですか?その光るレイピアは!!」

「途中から?おほほほ、『最初から』ですわ!」

「レイピアから光属性の光線が出るわけない!ありえないです!?」


アクセルさんは、空中を物凄い早さで飛び回り、それを追いかけるアサギリさんの攻撃をぎりぎりかわしていました。

途中、スゴく細い無数の光線が他方向からアクセルさんを狙いますが、アクセルさんは障壁を貼ったり、障壁を足場に跳躍したりと、まるで戦闘系アニメでも見ているのかと思う光景です。

音も凄まじく、『ドバッ』とか『キュインっ』とか『びぃゅいーん』とか『バーン!!』とか様々です。

最後に、お腹を響かせる振動と閃光がありましたが二人の姿は見つかりませんでした。


それからしばらくして、疲れたのか、それとも魔力が切れたのか.......二人はふわりと降りてきました。


あれだけ動きまわったのに、不思議とさっぱりとして清涼感溢れる感じのアサギリさんと、正しくボロ雑巾の有り様のアクセルさんがいました。


「あれだけかわしてたのに、なんか可笑しいような?」


私が視線を向け呟くと、倒れている私の隣に立っていたシユウさんがため息をもらしました。


「いや、間違いなく自爆だぞ」


「自爆?」


自爆系魔法ですか?

『なんとかンテ』とかそっち系でしょうか?

しかし、アクセルさんがするイメージが沸かないんですけど.......


「魔力暴発だぞ、魔女殿は『加速』の名を持つ魔女、その名に恥じぬ様々な速度に纏わる魔法を扱うことができるのだぞ」


あぁ!それで、さっきみたいに超次元の高速戦闘も平気でこなせちゃうんですね!

けれども、


「でも、最後にアサギリさんの一撃を貰ったと言うことですね」


というか、アサギリさんが規格外すぎますよ。

Aランクの武具を持つ奴隷商とその部下50人を圧倒するアクセルさんを簡単に倒してしまうなんて!!

さすが、植物精霊界の一桁台の実力者ですね。


「うぅむ、アサギリ殿は確かに強いが、さっきのはどちらかと言うと、魔女殿がへまっただけだぞ、魔力吸収の速度をあげすぎて爆発したようだ......」


微妙な顔をして、機嫌が良さそうなアサギリさんと、口からけほけほと黒い煙を吐くアクセルさんを見つめました。


「じゃあ、なんであんなにアサギリさんは嬉しそうなんでしょうか?」


私は、比喩じゃなくリアルに魔力光素を身体から振り撒くアサギリさんに唖然となります。

アサギリさんは、扇で口元を隠しますが意味がないほど高笑いをしています。

ぐったりと倒れ混むアクセルさんに『ざまぁぁぁぁ』と言っているのが聞こえたような.....

私の隣で奴隷商を全員縛り上げたシユウさんがぼそりと言いました。


「ふむ、他人の失敗ほど感情が高ぶるものはない、という言葉をどこかで聞いた気がするぞ」


そんな馬鹿な.....と思った私ですが、すぐに考えを改めました。

そうですね、あると、思います。


―――――――――――――――――――――――――――


「は、はぁ.....」


私たちの目の前で門番のおじさんは目を見開いて動かなくなっていました。

確かに、私も50人規模の闇奴隷商人の一団を連れてこられれば、そうなるのも理解してます。

さらには魔王の子供と、その子供になつかれている滅多に会えない植物精霊様。

そして止めは、強力すぎる数多の武器と、隣の大陸である時ヶ織大陸で唯一の魔王の陥落の知らせ。

という、スペシャルコンボでした。


門番のおじさんは、私たちが門に到着した数分前に比べて、10歳くらい老け込んだ気がしますけど、きっと気のせいでしょう。


「せっかく、職についたのに、こんなやっかい事聞いてないぞぉ......」


おじさんはヘルムをがくりと折りました。


「あら? じゃあ、私が関係各所に伝えてきましょうか?」


アサギリさんの眼が光ってたのを私は見逃しませんでしたよ。

確かに、精霊種のアサギリさんなら、自分の花を座標に動き廻れるでしょうか?人伝えより正確ですね。しかし、おじさんは断りました。


「ダメだ、いや、ダメですよ.....精霊様」


弱音を見せた自分の顔を叩き、気合いを入れ直したおじさんはアサギリさんに向き合いました。


「どうしてかしら?まさか貴方も私の出番を......」


変なスイッチが入る寸前におじさんは言いました。


「出番はどうか知らないですが、時期が悪すぎます。今の南大陸の状態分かってるんですか?」


南大陸の状態?

ポカンとする私とアサギリさんに生意気なクソガキ。

そして、納得の顔をするシユウさんとアクセルさん。

おじさんは続けました。


「いいですか、今現在この大陸で、植物精霊の信用はガタガタです。詳しく言うと、コンクレント湖上都市の出来事が、この大陸全土に広がっているんですよ。この街の連中も半分以上は信じていませんが、どう言われているか知ってますか?」


熱く語りだしたおじさんは門番の槍を強く握っていた。


「『フルエンクの住人を大量虐殺した精霊達』って言われているんですよ?」


え?まさか!?

私が行けなかったフルエンクでそんなことが.......

でも、皆さんそんなこと言っていませんでしたし。

うそですよね?


アサギリさんはそれがどうしたと言うように、鼻で笑っていた。

アサギリさんにしては品がない珍しいです。


「(なるほど、確かに肉体を殺し廻ったのは私達ね.....うまい隠れ蓑にされたかしら?)」


ボソボソと言っていて聞こえませんでしたが、嘘っていってくださいよ!アサギリさん。

シユウさんやアクセルさんを見ると顔を反らされました。

.......ホントの事ですか?

シュレイさんも関わっていたんでしょうか。


負の感情に飲み込まれていると、門番との話はすぐについた。

時間の感覚が曖昧になっていたのかもしれませんね。


「で、つまり、この町の植物精霊を信じている連中は、みんな俺みたいな下の人間で、お偉いさん方はいつこの街を潰されるかって、怯えて神経質になってるんだ、そこに乗り込んだらどうなるのか俺にはわかんねーよ」


「ふむ、フルエンクそしてコンクレントと大都市が落ちた所に精霊が関わっていたら怯えるのも無理は無いぞ」


「しかし、そうなれば、この少年のことは言わない方がいいのでは?」


門番のおじさんにシユウさんが続き、アクセルさんが質問する。


「あ、えっと、魔王と植精のハーフだっけか?」


おじさんが、アサギリさんにしがみつく少年を見ました。

少年は怯えて隠れてしまいます。人族がトラウマになったようです。

変わりにアサギリさんが答えました。


「ええ、そうですわ!」


「あぁ、そうだな、下手に言うと、精霊に対する人質とか人体実験とかされそうだなぁ」


人体実、験.....


言葉を失う私と少年の視線が重なりました。

多分思っているとことは同じでしょう。

お互いハーフとして.....


「お、お願い!チビもハーフだから連れてくならあっちにして!!」


私を指差す少年。



しかし、私は、どうして気づかなかったのでしょうか.......

こうして会話していることが、あっちで筒抜けになっていることに.....

そうとは知らず、のり突っ込みをしてしまいました。

私も少年が本気で言っているとは思っていな.......本気だとしても受け流せるレベルまでになりましたけど、でも、それは『私』だけのようです



そうですか、そうでしょうね。

同族を売ってしまうほど、心に傷を.....

って、

「ってこら、冗談もたいが、い.......」


私が喋ろうとしたとき、目の前に突如に起こる空間の揺らぎ。

それも一瞬で、次には空間から出てくる紫電の直剣。

バリッという音を響かせ、狙うは少年。

私は、間違いなく少年が貫かれて死ぬのを幻視してしまいました。

しかし、実際は―――


「あらぁ?【ミスティング・グレイズ】......おほほほっ、飛んだご挨拶ねぇ......」


突然の出来事にありえない速度で対処するアサギリさん。

紫電の直剣は、よくわからない何かに弾かれてアサギリさんの横にめり込んでいた。

何が起こったか理解できずに唖然となる私達全員は、何が起こったか理解しているだろうアサギリさんに視線を向けました。


アサギリさんはひとまず私達を置いといて、がっしりしがみつく少年に目線を合わせるようにしゃがみました。


「いいかしら? あまり、そのアンを虐めると怖いお姉さんが出てくるからダメよ?」


がくがくと壊れたおもちゃのように頷く少年。

ちょっと可哀想でした.....


私が、アサギリさんに怪我がないか聞いている後ろでは、門番のおじさんと話を進めるシユウさんとアクセルさんの姿がありました。


「てことで、あいつについては俺は見てないし、聞いてない、50人の闇奴隷商の連中は管理区に届けとくわ」

「すまぬな、報酬は要らん、夜遅くにすまぬな、これで流してくれ」

「これは、銘酒『龍殺しTANAK』!!まじかよ......ああ、これなら今日あったこと覚えてなさそうだ」


お互い握手するおじさんとシユウさん。

それを理解できない顔で見ていたアクセルさんは、ため息を吐く。


「リーダーは酒を何本持ってるんですか......」


―――――――――――――――――


そわそわしていた門番のおじさんと別れた私達は、一時解散となった。

まず、アサギリさんとちっとも離れない少年は、そのままアサギリさんとこの街の少し離れたところにある精霊庭園に行くようだ。夜だし、大丈夫かと心配になりましたが、むしろ自由に行動できそうで、問題無さそうなんでなにも言いませんでした。

そして、アクセルさんとシユウさんは、今までの宿を引き払い、私と同じ宿に変えてくれました。

シュレイさんと知り合いだと言う店主にアクセルさんとシユウさんがパーティーメンバーと言ったら、泊まる料金を半額にしてくれました。

それを聞いていたシユウさんは『ほう、得したな』と喜び。

アクセルさんは『なんでこんな高級宿で半額になるとか......なんなんですか?あの人は!!』嘆いていましたが、店主が『アンちゃんは無料だから、いつでもおいでぇ~』と言っていたのを聞いて逆に無言で部屋に入っていってしまいました。


私も部屋に戻ろうとしたら狐の獣人の店主に呼び止められました。


「ねぇ、ねぇ、血の匂いを着けてきたけど、危険なことは直ぐに言うのよぉ~」


着崩した着物。流れるような黄金色の髪のポニーテール。

そして可愛らしい同色の狐耳をピンと立てた店主は、出来るだけキリッとした顔をつくっていました。

でも、私は知っています、このもふもふの尻尾を8尾もつボンキュボンのこの方が今日一日飲んだくれていたことを、だって、朝出るときと同じ場所(受け付け)で、朝より酒瓶が15も増えていれば......


「だいじょうぶですよ、しかし、解せません、なぜ酒臭くないのか.....むしろ甘い香りが.....」

「それは、上手い飲み方してるからでしょう~?」

「ちょっとのし掛からないで下さい!!うわ、あまっ」


受付の横を通りすぎようとしたらガバッとのし掛かられてしまいました。

逃げようとしますが、甘い香りがじゃまして.....ほんとにくらくらしてきました.....


「じゃ、もどりますね!!」


なんとか押し返し、逃げるように部屋に入りました。

ほっとする扉の向こうでは、店主がある酒瓶を興味深そうに見つめてたのでした。


「へぇぇ~『食中花』ねぇ」


―――――――――――――――――――


部屋の中央にある土に潜り込んだ私は今日のことを振り返えりながらウトウトしていきました。

私の部屋は種族用の特別なもので、種族に合わせた調度品などがあるのです。

ベッドの変わりに庵のように土を囲っているそこが植物専用のベッドなのです。

もうそろそろ日付も変わるでしょう。

振り返り、振り返り、そして気づきました。


「あれ、ルシャは?」

途中から動けるようになった身体。

されど見えないルシャの姿。


しかし、眠気には勝てず、意識を落としたのでした。

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