目立つは力、目立つは罪?
ど、奴隷商って柄じゃないでしょうに!!
そう叫びたい私ですけど、下手に動くと足手まとい度が上昇しそうですよ。
いまだって、最高値を上回りそうなのに......因みに私の中の『足手まといの思い出トップ1』は、生まれたばかり頃の出来事で、ミャオさんに担がれつつ、魔性の森を襲う黒い炎から逃げていく.....というものですね。いや、懐かしい.....
「ほう、最近の奴隷商は盗賊紛いのこともするのか、知らなかったぞ」
シユウさんが、正面にいる盗賊.....奴隷商のお頭に穂先を突きつけています。
奴隷商のお頭は腰に吊るした、きらびやかな剣を抜いて構えました。
周りの配下も、思い思いに抜刀・抜剣しています。
「そういうなよ、龍人の.....だが俺から言わせてもらえば、お前らの方が泥棒だがな」
「「「「まったくでさぁ!!」」」」
力強く答える奴隷商の配下達。
彼らが持つどの武器も不釣り合いなほど高性能に見えます。
下手をすれば、私がエルシュさんに造って貰った武器よりも、少しだけランクが落ちるくらいでしょうか。
結論として、結構な壊れ性能の気がしますけど.....いったい誰が作ったものなんでしょうか。
私と同じ考えと言うわけではないでしょうけど、アサギリさんが不思議そうに問いかけていました。
「ん、あら? あなた達の武器......それぞれがAランク相当に見えますわね」
この世界は武器にもランク分けがされているのです。
Aランク相当というのは、強力な力を持つものーAクラス以上の魔獣や魔精、魔王に魔皇さらに勇者などーに傷を与えられる武器のことです。使い手に関係なく強力な物を指します。
Bランクになると、それより一つ下の性能のです。こちらは使い手の実力でAランク並みの性能も引き出せるのです。これより下は階段のようにだんだんと性能が落ちている武具を指します。
また、元Aランクで今はCランクなど、使っていく内に性能が落ちるものが多いそうですね。
「まぁ、この『私の』レイピアが負けるとは思いませんけど! おほほほ!!」
アサギリさんはレイピアをスッと構え、片手で口許を押さえ笑う、という器用なことをしていました。
アサギリさんの近くにいる奴隷商の配下は、若干後ずさりしていました。
未だに膠着状態のようです。
正直、時間が稼げて私は嬉しいですけど、ルシャはいつ戻ってくるんですか!?
「お前らが庇う理由がわかんねーな、そいつはわかるが.....お前ら冒険者には関係無い話のはずだが? 」
お頭は指をアサギリさんに指した後、シユウさんの方に言い放ちます。
シユウさんは構えを解いて、リラックスした状態で「む、そうだな......ふむ」と言った後、ニヤリとしました。
「なに、闇奴隷商人に天誅を下すというクエストを受けておって......ちょうどよいと思ったんだぞ」
「......ちっ、これだから正義面下奴は嫌いなんだ、お前ら料理してやんな」
物凄く顔を歪めた頭が言いはなったのです。
配下達の咆哮が、野球観戦の観客席並みに騒がしく木霊しています。
「ひっ、やだぁぁぁ、くるなぁぁぁ!」
近くでうずくまる少年が私の方にー中心ーに後ずさりをしてきました。
てか、
「どんな、トラウマだかは分かりませんけど、ここは大丈夫ですよ」
私は、倒れた情けない格好ですかが、出来る限り微笑みます、母がしてくれたように......
少年は私を向き、嗚咽をこらえながら、それでも気丈に振る舞ってくれました。
「変な.....顔じゃん」
.......動けたらぶっとばす、泣き虫ヤロウゥ
――――――――――――――
しかし、戦力差は明らかです。
魔法や矢は既に射程圏なのか、飛び交っていますけど、剣の打ち合う音が聞こえません。
もしや、見た目盗賊の癖に消耗させてから止めに攻めてくる気では?
「あら、来ないのならこちらから......」
「待ってくださいアサギリ、罠ですよ? 」
飛んでくる攻撃を細剣をふるい、粒子にまで分解していたアサギリさんは、焦れたのか攻めていこうとしますが、アクセルさんが止めました。
多勢に無勢、個として強くても、時間をかければ流石のアサギリさんでも辛いのではないでしょうか。
それに、あの武具の中に、封印系や弱点特効があれば不利がさらに窮地になってしまう、とアクセルさんは伝えていました。
「じゃ、どうするのかしら、このままでは目立てず脇役に成り下がってしまうわ」
「言ってる意味は相変わらずですけど、私も魔女ですよ、こうするんです」
自らの体を抱き締めたり、時折くる魔法を霧散させたりと、正直見ていると一番目立つ行動をしているんですけど......そんなアサギリさんを余所に、杖を高々上げ魔法の詠唱を完成させたアクセルさん。
詠唱にかかった時間は......なんと2秒という驚異的な魔女は、迸る魔力の奔流を杖から放ち、地面に大きな魔方陣を描きました。
魔方陣に魔力が行き、渡り強く発光したときに、発現語を口にしました。
―――――古代制御ウットベル式【シャッフルアース・グラビティロール】
奴隷商人達も全員不思議な現象に巻き込まれました。
聞いたこともない魔法。
とてつもない現象。
魔方陣の中にいるすべての物が重力を無視して浮遊状態になっていました。
足場を作ることが出来ず、宇宙を漂っているような感覚に陥ります。
アクセルさんはすかさず、浮遊して飛んでいってしまう私たちを、反転術式で元の位置に戻してくれました。これにより、私たちを覆う小さな魔方陣の外側では、空中で身動きが取れなくなっている50人ばかりが、夜空を掻きもがいていました。
まさに完全に無力化です、すごいですねアクセルさん。
そして、浮き上がらなかった数人の連中に、駒落ちの速度ーテレポートしてるかのごとくーでサクサクと意識を刈り取っていく手腕。
「上級武具を持ってようが所詮は所持者で、使いこなしている適格者では無いと見ました、それ故にこういう事態に対処出来る力がありながらそれを完全に引き出すことが出来ない、または引き出そうとすると、時間が掛かる......と、私がこうしてっと、簡単に意識を刈り取れるんですよ」
「さすがですよ、アクセルさん、カッコいいです」
「そうでしょう、照れますね......へへへっ」
「......へぇぇーーーー」
ドヤ顔をするアクセルさんに近づく負の固まりがありましたけど、気にしないでおきましょう。
戦いを止めたのは、アクセルさんの力のお陰ですし、激目立ってましたよ!!
「ちょっとアサギリなんでレイピアで、突いて、くるん、ですか!?」
「......死?」
「怖っ!!リーダー助けて!」
瞳に生気がないアサギリさんに突かれているアクセルさんが、シユウさんに助けを求めていました。




